4月24日(日)雨 明莉との日常その45

 しめりけのある日曜日。土曜授業後の貴重な休みなので僕はゆったりと過ごしていたけど、今日は明莉に何か言われることはなかった。


 そんな中で僕は明莉に最近の話題を振る。


「そういえばバドミントン部は新入生入ってきたの?」


「うん。6人来たよ。今週から練習もがっつり参加してる」


「6人も……」


「そういうりょうちゃんの文芸部は?」


「4人入ってくれたよ。男子は1人だけど」


「おお、良かったね! これでりょうちゃんにも部活の後輩ができたわけだ」


 明莉にそう言われて僕は気付く。新入生が来る度に先輩にはなっているけれど、中学時代幽霊部員だった僕にとって、部活の後輩ができるのは初めてのことだった。


「そうか……明莉さん。部活の後輩に接する上で何か心がけるべきことはあるでしょうか?」


「……先輩の圧をかけること?」


「ブラック部活じゃないか」


「冗談だって。明莉的にはあんまり後輩って意識しない方がいいと思ってる。他の部活だと上下関係厳しいこともあるだろうけど、うちは楽しくやってるから同級生とあんまり変わらない感じ」


「ふむふむ。文芸部もそういう感じだから参考になるよ」


「というか、りょうちゃんも全く後輩と絡んでこなかったわけじゃないでしょ? 運動会とか文化祭とか学年全体で集まる時もあったろうし」


「確かにゼロじゃないけど、中学のそういうイベントごとで積極的に絡んだことはないなぁ。高校になってからようやく伊月さんと話したぐらい」


「伊月さん……ってまっちゃんの彼女か」


「うん。実は文芸部に入ってくれたんだ」


「ええっ!? なんでそんな重要な情報言ってないの!?」


 明莉は前のめりになりながらそう言う。


「そんなに重要かな?」


「だって、これから伊月さんと話す機会が増えるってことだから、まっちゃんとの関係について色々面白情報が入ってくるってことじゃん!」


「いや、話してくれるとは限らないし、部活動中にその話はしないと思うけど」


「そこはりょうちゃんが聞けばいいでしょ」


「なんでそうなるの」


「いや~ これからが楽しみですなぁ」


 僕の言葉をスルーして明莉は何かに思いを馳せる。全く関係ない仲ではないけれど、他人の恋路を聞いてくる彼氏の友達というのはどう考えても写りが悪い。明莉に伝えるとしても伊月さんが話してくれたことに限られるだろう。


 それはそれとしてここ最近は少し考え込んでいた明莉が元気に喋ってくれたのは良かったと思った。

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