4月16日(土)曇りのち晴れ 松永浩太の嘆きその2

 待望の土曜休み。今週から通常授業が始まったことからさっそく課題が出ている教科もあった。それを休日にこなしていると、高校生活が再開したことをより実感する。


「寂しいなぁ……」


 それに加えて友人が家に遊びに来ることも高校生活を……いや、それは違った。2週連続で遊びにくるのは結構珍しいし、松永は先週と同じことを言っていた。


「また急に来てどうしたんだよ。土曜日は部活あるんじゃないのか?」


「今日は休みだから大丈夫」


「じゃあ、まさかまだクラス違ったことを気にして……」


「いやいや、さすがに引きずり過ぎでしょ!? 茉奈ちゃんのこと!」


 松永が元気のいい反応を見せたので、先週ほど凹んでいるわけではなさそうだった。しかし、伊月さんに関わる何かしらは先週から引き続き松永の悩みの種になっているようだ。


「伊月さんがまた忙しいってこと? 先週も言ったけどこの時期だし仕方ないよ」


「それもあるんだけど……この前、茉奈ちゃんにテニス部の見学誘ったんだ」


「へー 伊月さんもテニスできるんだ」


「いや、テニスは別に誰でもできるでしょ」


「僕はラリーを続けられたことないぞ」


「まぁ、りょーちゃんだし……って、その話がしたいわけじゃないの! 茉奈ちゃん、テニス部は入る気ない感じでさ」


「好みの問題だからしょうがない」


「それは……わかるん……だけど」


「要するに、何とか一緒にいられるような時間を作ろうとしてるけど、上手くいってないってことか?」


 僕がそう指摘すると松永は頷いた。正直なところ、部活内でカップルが成立するのは何となくわかる気がするけど、カップルで部活に入るのは何か違う気がする。それでも一緒の部活に入りたい理由があるのだろうか。


「一応聞くけど、伊月さんと喧嘩したとかじゃないんだよね?」


「全然してない。怒られるとしたら俺の方」


「それはそれでどうかと思うけど、喧嘩じゃないんだとしら……倦怠期?」


「…………」


「あっ!? こ、これは彼女できたことない奴が適当に言ってる予想だから!」


「いいんだ、りょーちゃん。俺が妙に焦ってるのもそういうことに危機感を覚えているからだと思うし」


「……適当ついでに言うと、春休み中べったりし過ぎた可能性もあるんじゃないか。これも何で読んだか聞いたか覚えてないけど、たまには距離を置きたいって時もあるらしいから、今がそういう時期とか」


「恋愛マスター!?」


「その元気があるならまだ大丈夫そうだ。色々言ったけど、一番あるとのはやっぱり忙しいからだと思うよ。新しく友達を作るために他の部活に入ろうと考えたりしたんじゃないかな」


 そんな励ましの言葉を何回かけていくと、松永も少しずつネガティブなことは言わなくなっていった。


 本当に恋人としての倦怠期に陥ってしまったのかは定かじゃないけど、松永がそういうところは気にしてしまうのは何だか意外だった。僕から見た松永はいつも自信たっぷりだから。

 そんな時の相談先として頼られるのは悪い気はしないけど、当の僕はそのような経験がないので、ふんわりとした答えと憶測ばかりになってしまう。


 新入生も落ち着ける時期になったら、状況が改善することを願っておこう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る