3月7日(月)曇り 松永浩太との昔話その8

 テスト後半戦が始まる月曜日。週初めの気だるさがあると、普段の授業でも頭が回らないこともあるから要注意だけど、何とか乗り切れた。


 そして、テストが終わると、いつも通り松永と一緒に帰宅し始める。


「……って、話を昨日したわけなんだけど、松永も今週の卒業式に向けて何かやってるの?」


 その中で僕は日曜日に明莉と話した部活で先輩を送り出す話を松永にも振ってみる。


「寄せ書きとかはないけど、お見送り会みたいなやつは春休みに入る前くらいにやる予定だよ」


「春休み前? 休み中じゃなくて?」


「ほら、遠方に出る先輩もいるからなるべく早くやらないといけないし」


「あー、そういうことか。文芸部だとどういう進路に行くかも把握してないや」


「それはまぁ、部活ごとの空気とかあるから仕方ない。今年の文芸部は3年生があんまり来てなかったんでしょ? テニス部は夏頃までがっつり来てたし、何なら先月とかは暇な先輩は顔を見せて練習に混じったりしてたよ」


「へー 文芸部だと混ざりようがないからなぁ」


 そう言いながらも先月はうちの文芸部は雑談する時間も結構あるので、暇ならやって来ても良さそうだとは思った。それでも先輩方が来なかったのは単に忙しかったのか、それとも部活は少し早く卒業だったのか。


「でも、俺からしても3年生で思い出語れるような先輩は限られてるわ。中学の時は2個上でも結構一緒の時間が長かった気がするし、やっぱり高3だと色々時間取られるのかな」


「それに関しては何も言えない。僕は中学の時も特に思い出ないし……」


「ははは。何なら俺ら同級生的にりょーちゃんが幽霊部員になったことが思い出の一部になってるし」


「そ、そこまでじゃないでしょ。他にも途中で部活行かなくなった奴いたし……」


「それでも、りょーちゃんが最速だったからね。それに基本真面目なりょーちゃんがバックレるのは結構意外だったから印象ある」


「その件については大変申し訳なく思っています……」


「いやいや。別に先生にも怒られなかったからいいじゃん」


 松永は笑って言うけど、今考えると退部届も出さずに行かなくなってしまったのは僕の中でも相当悪い行動だった。今もまだ子どもだけど、あの頃はより子どもっぽい思考だった。


「……なんか今更自分のやらかしが恥ずかしくなってきた」


「大丈夫だって。りょーちゃんはそれくらいじゃ炎上しないよ」


「その慰め方はなんか違うけど、ありがとう」


 松永と昔話をしていると、時々思い出さないでいい話も出てくるけど、今日の件については完全に忘れちゃいけないことだ。

 後輩を迎え入れるためにも僕は責任を持って部活を続けていきたいと思った。

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