2月26日(土)晴れ 明莉との日常その39
昨日とは打って変わって暖かい土曜日。一応は今日からそういう気候に代わっていくらしいけど、その中で遊びに行くのは少し先の話になる。
そう、僕も明莉も来週にテストが迫ることから恒例の居間での勉強タイムが今日から始まるのだ。
「りょうちゃん、ちょっとここの問題のこと聞いていい?」
「うん? どこどこ?」
そして、この日の明莉は珍しくテスト勉強に積極的だった。いや、いつも雑談に満足した後は真面目に勉強しているのだけど、今日はその前振りもなくいきなり勉強していた。
ただ、それを指摘すると横道に逸れてしまうので、僕は感心しながら教える。
「……って感じで解けばいいよ」
「なるほどー 勉強になります」
「…………」
「りょうちゃん? どうかした?」
「ううん。なんでもない」
だけど、急に態度が変わったのはやっぱり気になってしまう。単に2年生最後の試験だから最初から本気を出す感じなのか、もう3年生になるから勉強する方向へ意識を変えたのか。
自分の時を思い返してみると……まだ危機感を覚えていなかった気がする。
それから数時間勉強してひと段落した頃。僕は我慢できずにその理由を聞くことにした。
「明莉、今日はどうしてそんなにやる気があったの?」
「えっ? あかりは毎回こんな感じだけど?」
「あんまり否定したくないけど、いつもはもっとスロースタートだったよ」
「もう、せっかくがんばってるんだから別にいいじゃない」
「ご、ごめん。いいことだと思ってるんだけど……」
僕は申し訳なさそうに言うと、明莉はため息をついた。これは自然と出たやつじゃなくてわざと僕に見せるためのやつだ。
「……この前、ちゆりんが言ってたから」
「原田さんが?」
「りょうちゃんも聞いてたでしょ。あかりは料理以外は超絶何でもできる人だって」
「そういう表現だったかは忘れたけど、近いことは言ってた」
「それで、明日はそのちゆりんの家で一緒に勉強する予定だから、いざ頼られた時のための予習って意味でがんばってる感じ」
「なるほど。そういうことだったんだ」
原田さんの明莉への評価はこれ以前の勉強スタイルから来ているけど、明莉的には万全の状態にしておきたかったようだ。
「あっ、そういうわけだから明日はりょうちゃん一人になるけど、サボらないようにね」
「もちろん。でも、そういうことなら今日中にわからないところ無くして行かなくちゃな」
「おお。りょうちゃんもマウント取るために協力してくれるの?」
「いや、マウント取るためにがんばらないで。あくまで勉強をスムーズにするためだから」
そんな会話を交わしつつまた勉強を始めると、明莉は真面目に取り組んでいた。
今回の原田さんとの勉強会がどちらから提案した話かわからないけど、明莉も教える立場になるとは思わなかった。
それで事前にそわそわして予習をするのだから、こういう状況での僕と明莉は似たようなところがあるのかもしれない。
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