1月11日(火)雨 大山亜里沙の再誕
連休明けゾロ目の日。この日は丸1日かけて実力テストが行われたので、部活へ行く頃にはすっかり疲れ切っていた。感触的には割といい感じにできた気がするのでテストについて大きな問題はないと思う。
そんな実力テストよりも難しかったのは……先日よく考えようと思った髪の話だ。
「うぶクン、おはよー」
「おはよう。大山さ――」
実力テストが始まる10分前。いつも通りテストを受ける時は出席番号に並びなおすことになって、いつも通り隣の大山さんと顔を会わせることになる。
しかし、その大山さんの雰囲気……というか髪型が以前よりも大きく変わっていた。大山さんは最初に会った時から後ろで髪を結んでいて、冬休みに会った時点でもそうやって結べるくらいには髪が長かった。それが今日になって全体的に髪が短くなっていたのだ。
ただ、丸みをおびたショートヘアは大人っぽいというか、オシャレというか……僕のセンスではそれくらいしか言えないけど、単に短くなったわけじゃないように見える。
「どしたの? うぶクン? アタシの顔に何か付いてる?」
「あっ、いや……」
この前岸本さんの髪型を指摘した時は本当に変わっているか自信がないまま言い出してしまって、結果的には良い方向に収まった。だからこそ、今度そういう場面になった時はよく考えようと思った。
でも、明らかに髪型が変わっているとわかる場合は……どうすればよいのだろうか。それだけ大胆にイメチェンしたということは指摘しても良い気がする。
一方で僕が知ったかぶりをしてオシャレと言って、実は失敗した結果だと言われたら完全にバッドコミュニケーションだ。
この会話が失敗したところで大山からとやかく言われることはないだろう。むしろ、どう指摘しても笑って返してくれるはずだ。
それなのに僕がどう言おうか悩んでしまったのは……こんな連続で女子髪型について何か言うべき場面に出くわすと思ってなかったからである。新年だから心機一転みたいな感じなのだろうか。
こんなことになるなら岸本さんの件があった後に、松永から話を聞いておくんだった。
そんなことを僕が考えていると……
「亜里沙、たぶん髪型のことじゃない?」
「あれ? うぶクンと木金で会ってなかったっけ? すっきりしたでしょ?」
「めっちゃ切っててびっくりしたわー でも、別れたから切るっていうのはベタじゃない?」
「別にそれは関係ないって言ってるじゃーん? それでどう? ショートも似合ってる?」
割り込んできた栗原さんは話を進めて、僕が踏んではいけなさそうだと思っていたところをあっさり指摘する。
それに対して大山さんは笑い話のように言っているから……今回も僕の考え過ぎだった。
「に、似合ってる。オシャレな感じがした」
「どの辺が?」
「……雰囲気」
「なるほど。うぶクン的にはそう思うんだ」
「せ、正解は……?」
「ううん。特にないけど」
そう言われてポカンとする僕を見て、大山さんと栗原さんは笑う。
変に気取ろうとせず、最初から思ったことを言えば良かった。良い風に言うためにはそれなりの知識が必要なのだ。今年はそういう学校の科目以外も勉強した方がいいかもしれない。
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