1月8日(土)晴れ 大人の感じる早さ
三連休1日目。今年は三連休が多いらしく、今回のやつは実質的に冬休みの延長戦みたいな感じだけど、火曜日に実力テストが控えているから気楽に休めるわけではない感じだ。
ただ、今日は母さんの誕生日なので、少しばかり時間をお祝いの方に割くことになる。
誕生日お決まりの外食は昼食に充てられた。父さんの時は寿司、僕の時は焼き肉だったから今回はどこにするか直前まで悩んでいたけど、僕が去年の文芸部で行った鍋料理の店のことを母さんが思い出してそこへ行くことになった。
「お母さん、お誕生日おめでとうございまーす! いつも色々ありがとね!」
明莉の言葉に続けて僕と父さんもお祝いの言葉を送る。それに対して母さんは小さくお辞儀した。
「ありがとう。みんなの協力あってこそです。今回は店選びに迷っちゃったからご苦労かけました」
「もう、それくらい全然大丈夫だって。ね、りょうちゃん?」
明莉にそう言われて僕は頷く。店の情報を詳しく知っていたのは僕だけだったから今回の予約等のセッティングは僕が行った。質問に答えてくれた先輩方には感謝である。
「母さん、何食べるか決まってる?」
「うーん……良助が行った時は何食べたんだっけ?」
「鶏と豆乳ベースの鍋だった。たぶんあっさりめな方だけど、程よくとろみがあって美味しかったよ」
「豆乳いいね! なにせ今ブームだし」
なぜか母さんではなく明莉が反応する。そう言われてみると豆乳が流行っているのはよく聞くけど、何なら毎年聞いているような感じがするのは気のせいだろうか。
それから主役である母さんが選んだのは豆乳と味噌が入った鍋だった。それほど待たずに出てきた鍋は前回とは違って香りからして濃い感じで、実際に食べ始めるとしっかりとした味付けで美味しかった。
「それにしても良助が高校入学してもう1年なんて早いわね。今年は明莉も受験生だし」
「うっ……そんな時期になってしまった……」
「あら、ごめんね。プレッシャーをかけたかったわけじゃないの。ただ、二人が生まれて学校へ行きだして、それからもう中・高校生になるのかって思っちゃって」
「それは父さんも思ったよ。誕生日が巡ってくるのが早く感じるのもあるが、それ以上に明莉や良助が大きくなるのはもっと早く感じる」
「別にどっちも同じ早さだと思うけど、大人になるとそういうものなの?」
「大人というか、親になってからって言うのが正しいかな。たぶん、良助や明莉が冬休みがあっという間に終わっちゃったって思うのと同じくらい私達も二人の成長は早く感じるのよ」
「えー!? それだとあかりとりょうちゃんの成長期間が2週間くらいになっちゃうんだけど!?」
明莉は驚きながらそう言うと、母さんは「今のはちょっと盛りすぎたかな」と言って笑う。でも、母さんや父さんにとってはそれくらいに感じていてもおかしくないのかもしれないと僕は個人的に思った。今でさえ僕はこの1年間が早く過ぎていくように思うけど、大人になると更に違ってくるのかもしれない。
そんな話をしながら母さんの誕生日一次会は終了した。二次会は帰ってから晩ご飯後のケーキになるけど……正月の食べ過ぎから脱することはまだできないようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます