12月6日(月)曇り 誕生日の延長戦

 期末テスト1日目。この前の中間テストと違って朝の教室が寒い中から始まるのは思考的にもペンを動かす手の動き的にも厳しいものだ。


 ただ、この日の感想はテストの内容よりもわたくしごとの方が中心になる。


「りょーちゃん、昨日は誕生日おめでとう! これ、のど飴」


「なんでのど飴?」


「今持ってるものがこれしかなかった」


「そういうことか。でも、ありがとう」


「う、産賀くん、おめでとう。ボクは何も持ってきてないけど……」


「その言葉だけで十分だよ」


「あれ? 飴あげたはずの俺より対応が良くない?」


 テストが始まる前に松永と大倉くんはそう声をかけてくれた。昨日もLINEでメッセージを送ってくれていたから僕としては本当に十分だったけど、直接言われるのはまた嬉しいものだ。


「良ちゃん、オレも今度何か持ってくるよ。のど飴以外で」


「おー うぶクン誕生日だったんだ。おめでとー」


 そのお祝いの声を周りが聞いたことで、僕は思った以上にクラスの人からお祝いの言葉を貰うことになる。こういう風に他の人が誕生日を祝う流れの時に僕は声を出せないタイプだから少し申し訳ないけど、これはこれでまた嬉しかった。


「産賀くん。一日遅れだけれど、改めてお誕生日おめでとう」


「おめでとうございます。リョウスケの新たな1年が良い日々でありますように」


 テスト終わりには少しだけ一緒に勉強することになった岸本さんと花園さんにも祝って貰えた。この二人とは後日誕生日会的なものをやる予定だから少なくともあと一回は祝われることになる。


――良助、今日は購買が開いてないからシュークリームは後日だ

――ちなみに私は誕生日過ぎてからだと、言ってくれなければたぶん忘れる


 清水先輩に先日話したことについてのメッセージ貰ったことも含めると、今日は今までで一番多くの人から誕生日を祝われたかもしれない。

 中学の時も松永や周りの友達が誕生日を祝ってくれることはあったけど、部活は途中から幽霊部員になった僕はそのクラスでの繋がり以外は何もなかった。

 それが高校になって少しだけ繋がりが広くなったことがたくさん祝われたと感じる理由である気がする。


 テストもそれなりにできて、祝われた嬉しさで満足感溢れる日だった。

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