12月4日(土)晴れのち曇り 明莉との日常その27

 誕生日一日前。こんな書き始めをするのは僕が自己主張に目覚めたわけではなく、それにまつわる出来事があったからだ。昼過ぎに部活から帰って来た明莉は着替えを済ませると、珍しくコタツに入らずに僕へ話しかける。


「りょうちゃん、今から誕生日プレゼントと買ってくるんだけど、何買ってきたらいい?」


「えっ。そこは明莉が考えてくれるんじゃないの……?」


「だって、これでギフトカード買ってきたらなんか違うって言うでしょ?」


「ギフトカードにするつもりだったのかい。いや、実際便利だけど」


「じゃあ、ギフトカードで……嘘ウソ。そんな悲しい顔しないでよー」


 明莉にそう言われるくらいには嫌そうにしていたらしい。僕は可愛い妹から貰えるなら何でもいいと思っていたけど、さすがにギフトカードだと少し投げやりに感じてしまう。これはわがままや贅沢じゃなく、気持ちの問題だ。


「具体的なものじゃなくて、たとえば食べ物とかお菓子とかジャンクフードみたいな指定があると買いやすいかも」


「今のは全部食べ物だけどね。うーん、そうだなぁ。今買いに行って明日貰うことを考えると、生ものは駄目だから……」


「別に帰ってすぐ渡してもいいよ。ちなみに明莉は今無性にいちご大福が食べたい」


「じゃあ、それでもいいけど……」


「いやいや、あかりが言っておいて何だけど、りょうちゃんが希望する物の方がいいと思うよ」


「確かにそうか。それでもあんまり高い物を買って貰うわけいかないから……」


「そこもあんまり気にしないで。明莉の誕生日には倍にして返して貰うから」


「余計に選択肢が狭まるんだけど」


「誕生日が後攻になる最大のメリットだね!」


 だいたいのゲームは先攻の方が有利だけど、誕生日ではそういう理屈になるらしい。いや、適当なことを言った。冷静に考えると、誕生日の送り合いでメリットデメリットを考えるものではない。


「なんかギフトカードでいい気がしてきた……」


「えー!? それなら今から買いに行かなくても良くなるじゃん。何か絞り出してよー」


「そうは言っても……じゃあ、普段着に合わせらせそうな物で」


「へー りょうちゃんってピアス穴開けたりしたの?」


「あっ、そっち系になるのか。全然開けてないし、今後も開けないと思う」


「ふーん、そうなんだ。でも、普段着と合わせるって言ったらアクセサリー系じゃないの?」


「僕は手袋とかマフラーとかを想定してた。アクセサリーは……僕のキャラじゃないと思う」


「そういうキャラじゃさそうな人が付けると案外良かったりするんだよ? でも、りょうちゃんがそう言うならアクセサリー以外で身に付けられそうなやつ探してくるね!」


「ありがとう。気を付けていってらっしゃい」


「ピンと来なかったらギフトカードにするから~」


 明莉はそう言いながら出かけて行った。これで帰ってきたらネックレスを買って来たと言われてしまったら……僕は身に付けるんだろうか。明莉から貰ったものであればなるべく使いたいところだけど、さすがにアクセサリー系は勇気がいる。


 ちなみに去年は小銭入れを貰って学校で購買へ行く時はこれを持って行くことにしている。今年のプレゼントが何かは明日のお楽しみだ。

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