10月17日(日)曇りのち晴れ 明莉との日常その21
文化祭以上に濃い時間を過ごした後の日曜日。昨日は岸本さんがテストに対して悲鳴を上げていたけど、僕はそれを笑って見られる立場ではない。本来なら先々週辺りからテストを意識し始めるのに、文化祭の準備で完全に頭から抜けていた。
「だから、あかりも勉強してないんだよね~」
「いや、明莉は文化祭に来ただけだから関係ないだろう」
そんな雑談をする余裕はないはずなのに産賀兄妹は手を止めて話していた。明莉のテストもちょうど同じ週にあるので、いつも通り居間でお互いを見張りながらテスト勉強をしているけど、今回は僕も集中できていない。
「というか、りょうちゃん。そんなテスト前なのに昨日の午前中はおしゃれキメ込んでどこ行ってたの?」
「えっ? 昨日の僕、そんなにおしゃれしてた?」
「うん。なんか、ちょっと会う人を意識した外行きの時はいつもその恰好だよねーって感じだった」
「それって、おしゃれできてないやつじゃないか……? 僕ってそんなに着てる服のパターン少ない……?」
「まー、少なくともあかりから見たら無難というか、冒険しないというか」
水着を買って来た時も似たようなことを言われた気がするけど、明莉のお眼鏡にかなう僕の服装とはどういうものなんだろうか。無難で冒険しなくてもいいと思うのに、明莉に駄目と思われてしまうなら女子陣からもそう思われて……っていかんいかん。これだと僕が女子ウケを意識してみるたいじゃないか。
「よし。切り替えていこう。勉強するぞー」
「りょうちゃん、さらりと流そうとしてるけど、どこに行ってたか答えてないよね?」
「そんな母さんじゃないんだからいちいち行き先気にしないでよ……」
「りょうちゃんをそんな子に育てた覚えはありません!」
「あーもう! 同級生とカフェに行ってたの……勉強会で」
「うわぁー、意識高い。あかりはカフェに行ったら甘いもの頼んでお喋りしちゃうね」
明莉はそう言うけど、残念ながら昨日の僕らは「勉強は明日……いや、今日の午後から!」と思って残りの時間はしっかりカフェを楽しんでしまった。だからこそ、今日は勉強しておきたいのだ。
「あーダメだ! りょうちゃんがカフェの話するから甘いもの食べたくなってきた!」
「いや、カフェなら甘いものよりコーヒーとかカフェオレになるんじゃないの? ちょうどいいから淹れてくるか……」
「あかりの分も作ってきて~」
「はいはい。ミルクちょい多めと砂糖3杯だっけ……」
その後、久しぶりに自分のコーヒーも明莉と同じ分量で作ったけど……全く別の飲み物だった。ブラックがいいとまでは言わないけど、眠気覚ましにはちょっとくらい苦い方がいいと思う。
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