4月28日(水)雨のち曇り 大山亜里沙との会話その2

 連休としてのGWまで後3日。ここ数日の授業ではきっちりと宿題を出されているので、GW中も遊び呆けるわけにはいかなそうだ。


「うぶクン、ありがと!」


 そんな今日も大山さんは僕のノートを借りて写していた。今のところ金曜にもある現社も含めて大山さんは全ての授業で寝ているようだ。


「ねぇ、うぶクンは目玉焼きに何かける?」


 そして、ノートを貸したということは大山さんとの会話が始まる。これも金曜の休み時間と合わせて欠かされたことがない。


「塩」


「えっー!? しょうゆとかソースとかじゃなくて!?」


「そんなに意外かな。ゆで卵も塩で食べるし……」


「いやー 今までそんな人聞いたことなかったわー チョーびっくり!」


「りょーちゃん、何でも塩かけるよねー」


 ぬるっと、会話に割り込んできたのはいつの間にか席の近くに来ていた松永だった。松永とご飯を食べる機会はそこそこあるけど、そんなに塩をかけているところを見られただろうか。いや、訂正しておくと何でもかけるわけではない。


 そんなことを考えていると、大山さんは意外な反応をする。


「おっ、松永じゃん。そうなんだー」


「えっ!? 大山さんと松永って知り合い……?」


 驚いて松永に聞くと、松永はさも当然のように言う。


「野外炊事の時に会ってから時々絡んでるよー」


 そんな時間がどこにあったのか思ったけど、そういえば僕が鍋を見ている間は、みんな自由に動き回っていた。僕のところに来る前に大山さんと松永は出会っていたのか。


「俺はしょうゆかなー 大山ちゃんは?」


「アタシもしょうゆだけど、時々七味もつける感じ」


「へー、辛くするのか。あっ、ブラックペッパーとかも……」


 それから会話の主導は松永に移っていき、僕は二人の言葉に相槌を打つだけになっていた。大山さんのタイプ的には松永の方が話が合いそうと思っていたけど、知らぬ間に知り合いになっているのだからやはり松永のアクティブさには適わない。


「って、なんか俺がいっぱい喋っちゃったな」


「ホントだよ。うぶクンと話してたのにー」


 だけど、僕はそんな松永が嫌と思うわけじゃなく、むしろありがたいと思った。僕が大倉くんや本田くんと話す時も盛り上げてくれるのは松永だ。それは小学校……もしかしたら幼稚園から変わってないかもしれない。


「僕は別に……」


「まっ、こんな感じでりょーちゃん聞き上手だから、どんどん話しかけるといいよ」


「えっ?」


 松永の急なフリに僕はまた驚いてしまった。そんな話になるとは全く思っていない。


「ふふっ、そうする! うぶクン、覚悟しといて☆」


「う、うん……」


 それを聞いた松永が笑いながら自分の席へ戻っていくと、休み時間は終わっていた。


 結局、今日の出来事は松永の気まぐれだったのか、それとも遠目で見て不甲斐なかった僕をアシスト(?)しにきてくれたのかはよくわからない。

 ただ、ノートの貸し借り以外でも大山さんとの会話が増えそうで良かった……のか?

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