4月9日(金)晴れ ???との出会い
今日は6時間にホームルームがあって、月曜日の宿泊研修について最後の確認が行われた。基本は班で行動することになり、4組の2班に所属するのは僕と大倉くんの男子2人、女子3人の計5人になるようだ。大倉くんはどうかわからないけど、僕は中心に立つタイプじゃないので、人数的にも多い女子に引っ張られることになりそうな気がする。
しかし、今日のメインイベントはそこではなく、昨日話題に挙がった部活の方だ。前に貰った部活の詳細で見ると、文芸部は火曜と金曜にミーティングがあって、見学は今日から受け付けているらしい。それ以外の曜日は部室に行くのは自由で、その情報だけ見ると結構緩い部活に見える。
もちろん、中学で幽霊部員だったからその緩さに期待しているわけじゃなく、文芸部としての純粋に興味はあった。
放課後、僕はミーティングを行う部室である2階の空き教室へ向かい始める。たった一つ階が違うだけなのに、別学年がいる階に行くのは緊張するものだ。他のことなら松永や本田くんに付いて来て貰っても良かったけど、部活は僕の興味で行くのだから誘うわけにもいなかない。
緊張気味のまま目的の部室に着くと、一度深呼吸してから扉をノックする。「はーい?」という声を聞いた後に「失礼します」と挨拶をして入ると、部室内には5人の(恐らく)先輩方がいた。部室内は僕ら1年の教室とあまり変りないように見えるけど、机の数はやや少なく、黒板の前には教卓の代わりに長机が置かれている。
「おー もしかしてキミも見学? ミーティングあんまり面白くないかもだけど、後ろの椅子に座ってテキトーに見ててー」
その先輩の中の一人で、長机の真ん中の席でゆったりと座っている女子の先輩がそう言ってくれた。
「は、はい! ありがとうございます!」
少し大きめの声を出してしまいながらも優しそうな雰囲気だったので、安心した僕が後ろに行くと、入った時には見えなかったもう一人が見えた。
「…………」
先客として来ていたのは僕のクラスでは見た覚えがない女子だった。慣れない空気の中にいるせいか顔は俯き気味で、肩まである髪に隠れて表情はよく見えない。
「……隣、失礼します」
一応は後ろで見た方がいいと思って、僕は一声かけてその子の隣の椅子に座った。ようやくひと段落したところで改めて先輩方を見ると、女子4人に対して男子1人という比率だ。まさかここでも人数的には女子が多くなるとは思わなかったし、そもそも全体の数が5人ではかなり少ない方だ。
僕が入ってから3分ほど経つと、先ほど案内をしてくれた女子の先輩こちらにやって来た。
「これ去年配った冊子ねー 暇だったら読んどいてー あと、一応新入部員向け?の紙もあるからー」
「ありがとうございます」
「いえいえー じゃあ、ミーティング始めまーす」
それから始まったミーティングでは、文化祭に向けて今年も冊子を制作することと、ざっくりとした年間の予定が話し合われていた。とはいっても、予定はそれほど詰まっていないようで、時間としては10分も経たないうちにミーティングは終わり、雑談が始まってしまった。それでもミーティング中の雰囲気はかなりゆったりな感じで、僕としてはかなり好感触だ。
「どうだったー? って本当に大した話はしてないけどー」
そして、先ほどから案内してくれていた女子の先輩は、ミーティングの内容から部長であることがわかった。
「まぁ、後はべらべら喋るか、なんか書いてるかだから、もう帰っても大丈夫だよー 興味があったまたよろしくー」
「えっ? あっ、はい」
流れるように退出を促された僕と一人の女子は、部長の指示に従って部室を出た。内容的には部長の言う通り大したことがない気もするけど、雰囲気は何となく察せられたのは大きな収穫だ。
「…………」
だけど、それはあくまで僕から見た話で、隣にいた彼女にはどう見えていたんだろうか。それを聞こうにも彼女はいつの間にかいなくなっていた。できれば新入部員が一人だけなのは避けたいところだけど、どうなるかはまだわからない。
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