第23話、45年振りの『 凧 』作り

 今年も、無事に正月を迎えたが、コロナ過と言う事もあり、どこへも出掛けられない。 ヒマを持て余しているので、何か投稿をしたいところなのだが、何もネタが無い……


 個人的な日記を読み返したところ、4年前だが、ちょうど正月の記述があったので、リライトしてみた。 以下は、その『 改訂版 』である。



『 ♪お正月には、凧揚げてえぇ~、駒をォ~ 回して遊びましょおおぅ~! 』。

 現在、あまり歌われなくなった童謡・唱歌だが、当時、幼稚園年長だった娘は、園で覚えて来た童謡を、例によって大声で歌って( 叫んで )いた。


 …しかし、娘は、実際に凧揚げを見た事が無い。


 たまに揚げられているのは、いわゆる『 ゲイラカイト 』だ。

 アレは、誰でも簡単に揚げられ、風向きを読んだり、糸を引いたり緩めたりと言った『 技術 』を必要としないので、苦労して揚げた時の達成感が無い。 …まあ、別段、「 達成感など、どうでも良いわ 」と言う方には、まさに『 どうでも良い事 』だが…(笑)

 幼少の頃、駄菓子屋で15円の凧を買えず、1本1円の竹籤( たけひご:竹を細く切った竹材料 )を買って来て、習字紙を貼って作った者としては、やはり、凧は和凧。

 ここはひとつ、娘にホンモノの凧を見せてやろうと思い、材料の買い出しから始めてみた。


 習字紙は、妻が趣味で習っていた時のものがあったので、拝借。 竹籤はホームセンターで、4本180円。 タコ糸は、以前、何かの制作に使った時の余りがあったので、これを流用である。 あとは、竹籤を固定する絹糸。 材料は、以上だ。


 骨組みは、頑丈にするに越した事はないが、あまり頑丈にすると、重くなって揚がらない。 キリもみ急降下の要因にもなるので、なるべく軽量にしたいところだ。 竹籤のクロスする部分は、全て絹糸で縛って処理をし、針金や通し針など、重量がかさむものは使用しない。 …う~む… 幼い頃の記憶が甦るわ。


 骨組みに貼る習字紙には、娘が、前衛芸術のような絵柄を描いた。 アバンギャルド的な絵だが、本人に言わせると、『 日記 』の挿絵だそうである。 少々、揚げるには勇気が要るかも……(笑)


 上部の梁の部分にタコ糸を掛けて張り、湾曲させる。 これが無いと、凧は揚がらない。 そのカーブの張り具合は経験から算出されるのだが、まあ『 こんなモンだろう 』的なテキトー比率である。

 大型の凧になると風圧が多く掛かるので、下部にも糸を張って湾曲させるのだが、強風の時に揚げる場合も、風圧を低下させる為に糸を張る。

 今回、力加減の分からない娘が走り回り、無理やり引っ張る状況が予想されるので、下部も湾曲させておく事にした。

 上部の場合、調整の為に、張りを増したり解いたりする為、タコ糸を使用する。 だが、下部の部分は重量を減らす為にも、絹糸を使う。

 …結構にシビアな『 設計 』なのである。 やはり、空を飛行する物には、それなりの思考が存在するのだ。


 最後に、『 尻尾 』を付ける。

 4㎝くらいの幅に切った細長い紙を、凧の下部に貼り付けるのだ。

 中心から左右に2本を付けるのが主流だが、少し太めに切って、1本にしたり、3本にしたり… この辺りは、製作者の『 センス 』である。

 実際に揚げてみると、製作上の影響から、左右、どちらかに傾いて行ってしまう場合がある。 その際、傾く方向に対し、反対側の尻尾をテキトーに切る。 微妙な風圧の変化によって、傾きをセーブするのだ。 従って、尻尾は、2mくらいあった方が、微妙な調整が何度も出来て便利である。

 今回は、標準的な『 仕様 』に則り、2m×2本とした。



 45年前の記憶を頼りに、何とか完成☆

 娘は既に、超ワクワク状態で、玄関に行ってクツを履いている。

 …これで揚がらなければ、今後の娘の人生的記憶に、その失敗は、永遠に記憶される事となるだろう……!


 ……ううむ、ヤバイ。 親として、その責任は非常に重い……!


 ここで、想定外のプレッシャーが掛かった。

 だが、中止すれば、失敗と同等… いや、それ以上の教育的配慮の不備となろう。

 私は考え、娘に言った。


「 今日は、風が弱いから、揚がらないかもしれないからね? 」


 ……出た。

 最高の言い訳である。 大人の醜さすら、醸し出していると言えよう。

 果たして、娘は答えた。

「 走れば、イイよね? 」


 …ヤルな。

 見事だ。 とても、数日前まで4歳だった子供とは思えん。

 お父さんは、反論の余地も無いわ。 ぐうの音も、出んよ……



 結果…… 私の心配をよそに、凧は、揚がった…!

 しかも、意外に高く。

 これで親のメンツは、完全に保たれた。 内心、本当にホッとした…


 凧を揚げながら走り回る娘は、狂喜乱舞。 転んでも、いつものようには泣かず、はしゃいで笑っていた。

 青空に舞う、4角い和凧…… 美しき、日本の正月の風景である。


 私は、心の中で娘に言った。

( よ~く見ておくんだぞ? その凧の絵は、お前が描き、お前自身で揚げているんだぞ……! )



 *このエッセイを創作した、かなり後ですが、2023年4月26日の近況ノート

  に、揚がった凧の画像をUP致しました。

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