第21話 夜道の散歩

 ふと、仕事をした充実感から我を忘れ、服薬を忘れた夜。

 防災無線で老婆の行方不明を知らされ、胸騒ぎがして家を出る。

 夜九時に、隣の兄ちゃんと介護施設の兄ちゃんとの話で出てきたサーチライトの正体を掴む。

 タクシーで送迎された高台のアパートの迎えの時刻に、サーチライトはアパートから介護施設へと当てられていた。

 右へ周り、スナック街道へ、気仙沼駅を通り、ひまわりやってない。ムーランやってない。ショットバーNaoまで行ってみたが、やってない。くるくる➰➰でタバコを吸い、夜道で歌った曲は南気仙沼小学校の校歌、Qururiのロック&ロール、エレファントカシマシの月夜の散歩、全部鼻歌だけど、近所迷惑な程声は通る。一曲ちゃんと歌えたのはロック&ロールだけさ。


 三日町のセブンイレブンであみぃの社員と遭遇、Naoさんはワクチン打って副作用で寝込んでると言う事だった。再開は明後日と言う事だ。


 化粧坂を通って交番へ、当たり前だが老女の救出に出払ってる。こっち方面には居ませんでしたって報告でもしようと思ったのに...


 見えない影が彷徨(うろつ)く帰り道、朝から側溝の掃除をしてるお爺さんに遭遇。このみちは犬猫総合病院の藤村さんが市に売って、歩道だったのに車道になった事、大川沿いの土手は県に売って畑になった事、夏でも冬でもこの側溝が詰まると山一帯水が詰まると言う事を教わった。


 この人のおかげで綺麗な水が飲めてたんだ。やっぱり藤の字が付く苗字の人って名家なんだな、水に関係する名前を持つ人も出世すると聞く。


 生まれた時から生きる道って違うんだと、改めて思った帰り道。駐車場の車を確認したが、いつまで経っても覚えられない車が停まってる。


 里山を見上げた、ライトの灯りが揺れた気がした。

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