密会
コンランスがリアと再開した頃、アンジェルスは王都に潜伏していた。
人界の王がすまう城。
その城壁のそばで、暗がりの人目がつきにくいところにアンジェルスは立っていた。
「あなたが魔界にいたなんてね。聞いていませんでしたよ」
「私も、あなたが人界で大臣をやってるなんて聞いてませんよ」
アンジェルスに声をかけてきたのは人界の大臣、エルギオスだった。
短く整えられた灰色の髪。
顔には皺があるが、なぜか若々しく見えた。
目つきは鋭く、獲物は逃さないと言わんばかりだ。
背は高く、腰は曲がっていない。
彼に高齢であるはずだが、どこにも歳を感じさせる要素がなかった。
「大臣なんて立派な職業。手に入れるのがさぞ大変だったでしょう」
「そうだ。あの王から信用を得るのにはかなりの手間が必要だった。
面倒すぎてもう一度やれと言われたら間違いなく嫌だと答えるだろう」
「それほど大変でしたの?」
「ああ」
旧友のように、アンジェルスとエルギオスは話している。
初対面という感じではなかった。
「それで、オレをここに呼び出してなんの用だ?」
「実は……」
アンジェルスは人界に来るまでの経緯を話し出した。
コンランスという魔界の王子に仕えたこと。
人界に潜伏し情報を手に入れることになったこと。
今、コンランスは白の勇者に恋をしていること。
「なかなかおもしろい状況になってるな」
「でしょう?」
「それで、オレに人界の情報をよこせと」
「話が早くて助かります」
エルギオスはアンジェルスに持ちうる限りの情報を話した。
「助かります。ありがとうございました」
「そんなことぐらいどうってこともない。
もし何かあったらオレもお前を頼るからな」
「それでは、私はこの辺で」
「そう言えば、お前が仕えている魔物に王が追撃命令を出したらしい」
「そうなんですか?」
アンジェルスには初耳だった。
もしそれが本当なら、コンランスは王都に戻れないことになる。
「奴はおそらく北の港町、オーデンスから海に出て魔界に帰るだろう」
「それなら、私は一足先に南から魔界に帰らせてもらうとしましょう」
アンジェルスはエルギオスに背を向けて歩き出す。
「私たちの楽しみのため、お互い頑張りましょう」
「そうだな。オレたちは同じ種族同士。
助け合いが大切だ」
振り返らずにいうアンジェルスの背に、エルギオスは答える。
この二人の会合を見たものは誰一人いないのだった。
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