第24話 番外編その1 フレデリックの末路

※ホラーチック注意。ヤンデレ系が苦手な方はご注意下さい。




 優美で完璧だった王子から平民へと落とされたあの運命の日から数年。俺は毎夜まくらを涙で濡らして過ごしていた。


『僕は、結婚します』


 そう言って俺の前から去っていったジークハルトの事が忘れられないでいたのだ。


 あれから俺は王宮を追い出され、街の端っこに建てられた小さな家へと押し込められた。まるで犬小屋のようなボロ屋と猫の額ほどの小さな畑を与えられ、ここでひとりで生きていけと渡されたのはわずかばかりの金だった。


 こんなのでどうやって暮らせと言うのか?!ふざけるな!と俺をここへ連れてきた兵士に喚いたが「平民にとしてはかなり贅沢な暮らしができるだけの設備と金額だ」と冷たく言い捨てられた。


 なにが贅沢な暮らしだ。

 雨風がしのげるだけの屋根と壁。トマトとキャベツが実っているだけの小さな畑。そして普段から俺が着ていたような衣服と宝石を買ったらすぐ無くなってしまうくらいしかないわずかな金のどこが贅沢なのだ。きっと俺がなにも知らないと思って騙されたのだろうなと思うと、悔しくて再び涙がでた。


 はぁ……ジークハルトはどうしているのだろうか。あのときは結婚すると言われて動揺してしまったが、この静かな小屋でひとりで考えていたらやっと冷静にジークハルトの言葉を理解できたのだ。


 きっと、ジークハルトは母上に脅されていたのだ。と。

 だからあの場では俺を見捨てるような発言をしたのだ。そうしなければ俺を酷い目に合わすとか言われたに違いない。どこかで母上が見張っていたのだろう。


 だから、事が落ち着けばきっとジークハルトは俺を迎えに来てくれるはずだ。平民にはなってしまったが、ある意味それは俺とジークハルトの間にある障害が無くなったということなのだから。


 だから、俺はここでジークハルトを待つよ。いつか白いタキシードに身を飾ったジークハルトが薔薇の花束を持って俺の前に現れるまで……。












 しばらくして、養子になった新しい王子が国王になったと噂で聞いた。なんでも新たな法律を作り、同性同士の結婚が可能になったとか。


 俺は久々に心を踊らせた。ジークハルトはきっとこれを待っていたのだと。


 だから俺はジークハルトがいつ迎えに来てくれてもいいように、一歩も家から出ずひたすら扉の前に佇んでいた。


















数十年後。




「ねぇ、あの廃墟みたいな家って誰か住んでいたっけ?」


「さぁ?あんな街の端っこにある家なんて興味もないし知らないな」


「屋根が今にも崩れ落ちそうだし、せっかくの庭も荒れ放題だね。もったいない」


「そんなことより、早くお祭りに行こう」













俺は、ずっと、ここで待っている。愛しい人を。



(フレデリックEND)

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