アーサーオブナイト 学園都市に眠る生命の泉
サファイア
chapter1 聖石(ルリック)によって繁栄した世界
Arthur1 学園都市アーサー
南西にある
「諦めるな。僕も、一流の
実は学園にはカースト制が存在している。全世界のアーサーにて採用されており、階級によって区別して社会と治安の安定を図るという目的で作られた。
上から順に
が、実際は、財産や親の権力、血筋でランクが決まる。つまり、生まれた時から決まっているのだ。
「しかし、勉学に励んでも」
と、中山は立ち上がると、テレビの近くにある等身大の鏡で自分の容姿を見た。
「これでは女子にもモテないな」
ボサボサとした茶色の髪に黒い瞳。豚のような腕と脚。特に大きく出っ張ったお腹が目に入った。女性が見向きもしない品の無い体。モテるとすれば、美人局の女性だ。
「と、とりあえず、外の空気を吸いに行くか」
一呼吸をしたあと、気分転換のために外へ出た。
「では、
体の脂肪を揺らしながら歩きだす中山。塀に囲まれた古びた二階建てのアパートが立ち並んでいた。ところどころ、茶色の錆が入った古びた扉や窓ガラス、整備されていない道路など、どんよりした空気が漂っている。外には、同じ階級の生徒らが雑談したり、共有のスペースで洗濯物を干していた。そんな光景を見ながら、ゴミ捨て場に着いた。
「どうして、やってくれないの」
全ランクにはゴミ箱が設置されており、業者が決まった曜日に回収してくれる。だが、
「大丈夫ですか?」
「ん? お前、『はい』と言えるか? いい加減、ゴミを回収してほしいぜ。ジェイの野郎、舐めやがって」
中山に尋ねられた上級生は、目の光景を見ながら、ため息を吐いた。
彼が言った、ジェイというのは、アーサー東京本校トップである学園長のジェイ・マーカスである。カースト制には大賛成。財閥と上流は生徒として接するが、それ以外は生ごみのような扱いする。お世辞にも教育者とはいえない。
「手伝いましょうか?」
「あぁ、助かる。俺達が生ごみを片付けている間に、貴族様はのんびりしているけどな。それでも、この世で最も尊敬される職業である騎士になれるなら、嫌がらせなんて大したことないさ」
「僕らにも同じ思いをさせてほしいです」
と、言った中山の視線の先には、目もあやな外観を誇る
「しっかりと好成績を残せば、学園長は認めてくれるはずです。あの人によれば、卒業後には幹部クラス
「鼻で笑いながら、上から目線で喋る奴の言葉でもか?」
「そ、それは」
「貴族連中は神様のような扱いを受けて、満足のいく学園生活を送っているでしょうね。それに、……ん?」
突然、何かを燃やす臭いが鼻を突く。中山は一瞬で正体が分かり、後ろを振り向き走り出した。
「ちょっと、なにをしているの!?」
たどり着いたのは、行く予定だった円形の広場が特徴の【平民の憩い場】であった。右手を突き出した十人の生徒が火の魔術で、広場の中央に集められた生ごみを燃やしており、黒煙が塀を越えている。
中山は右手をかざして魔術によって現出した水で消火していく。
「てめぇ! 邪魔するな!」
近くにいた生徒に体を押さえられるが、なんとか振り払い消火活動を行っていく。
黒煙に気づいた別の生徒らが応援に駆け付けたおかげで、十分で消火できた。お腹の脂肪を揺らしながら、自分の体を押さえた生徒に近づいた。
「どうして、物騒なことを!?」
「当たり前だろう! クソ教師共がいっこうに改善してくれないから、燃やしているんだ!」
「だ、だからといって燃やすのはいけないよ!
優等生ぶっていると思ったのか、彼は中山を睨んだ。聖石選別の儀とは、水属性のサフィール、火属性のリュビ、風属性のエムロード、地属性のトパーズのうち、どの
「あぁ、知っているよ。『正当防衛、授業、訓練以外では使用してはいけない』というルールくらい。けどな、こんな人間以下の扱いを受ける俺達に守っていけるか、分かるだろう」
「そんなことはいいから、早く消して――」
「おやおや、なにが『早く消して』かね?」
声のしたほうを見ると、茶色いスーツを着た学園長のジェイ・マーカスがいた。背後では数人の教師が彼らを睨みつけている。中山と周辺の生徒の間に緊張が走る。
「……学園長」
「詳しく、話を聞かせてくれ。オーク君」
「え、えーと、じ――」
言っている途中で教師の一人が中山に火の玉を撃ち込んできた。
「あっつ!」
中山は直撃した腕に溶岩をかけられたのような熱さが走った。
「嘘はいけないぞ、人間に化けたオーク君。学園長はな、将来有望の
学園長と教師達は嘲笑した。中山は、涙を頬に流しながら、頭を下げる。
「学園長、お願いしたいことがあります。財閥と上流と同じように、決まった曜日にゴミを回収するようにしていただけませんか? お願いします」
「分かった。今日は、君の顔に免じてしてやる。感謝したまえ」
「はい。ありがとうございます」
中山は、学園長と教師の満足気な顔を見て、血が出るぐらい手を強く握った。
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