異世界♮宮本武蔵協同組合

判家悠久

理り

第1話 審議官

 剣豪宮本武蔵の蛮勇は知れ渡っている。ただその修羅場に立ち会った者は残らず滅せられている事から、その強靭たる武辺が宮本武蔵であったか今際の際迄知る事は無い。


 宮本武蔵は、戦国時代より治安を維持する為に有志でなされて来た協同組合だ。しかし関ヶ原以降で、敗れた西軍は元より勝利した東軍も、居住まいの収まらなくなった武士が野に放たれて狼藉を働く。そして対峙。辛々逃げ失せた輩が、あれは誰ぞ、宮本武蔵。との名が実しやかに流れ、席巻して行く。


 その宮本武蔵は、12年に1度代替わりを行う。それは表向き労いの勇退ではあるが、実際は想像を遥かに超える。その揺るぎない強さへの探究心を得る為の、半永久的な生命を得ようの対戦だ。

 宮本武蔵の名を継ぐには、まず四組の方位の位が、総当たりで勝ち上がり、最終対峙の現役宮本武蔵に挑み勝ち得ないといけない。

 勝ち上がった凌ぎの強さは元よりだが、宮本武蔵の称号とことわりの黄金神倫を得る事で、剣豪は比類無き超人に至る。


 ことわりの黄金神倫とは祝詞の形式を取っているものの、この日本国と表裏となる異世界アズーラ国と往来出来る、肉体の強靭さを担保するものだ。

 比類無き無敵、それは剣豪が欲して止まない宿縁だ。血肉を払いに払って行くと、対戦者はどうしても多くなり、肉体の衰えに購えなくなる。剣を極める道と獣ならではの道、その二つとも超えなくていけない道のりだ。


 ただ、その宮本武蔵に誰それと決してなれるものでは無い。宮本武蔵協同組合の審議官、永遠を彷徨する私果心居士が候補者を見初め、琥珀寂寥指輪を授けてこその一員だ。

 そして西暦1610年。或る第一次伊達揺れで図らずも選出者一同が介してしまい、選出時期としては2年繰り上がってしまった。いや問題は無い。逞しくさで言えば、500年に一度の血戦となる。

 そして、私は時の両国の為政者に一言納め、異世界、彼の地、アズーラ国に旅立つ時に来た。この光の輪道を進んで行く。

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