第61話 それぞれの相手
「リビウス様!」
「本物だ……!」
「何と神々しい……」
メイリン達はリビウスの登場に膝をつき頭を下げているが、ウィルフとイリスは剣を構え臨戦態勢に入っている。
「何度来たところで結果は変わらんというのに……いいだろう、お前達が二度と逆えんよう完全に消滅してやろう! 来い!!」
リビウスの声に従者や魔物達が大量に現れ戦闘態勢に入った。
「数が多いな……その上リビウスの相手まで……だがやるしかない」
「ウィルフ、私達の目的はトクメが戻ってくるまでの時間稼ぎよ、倒す事じゃない。なるべく戦わずに逃げる事に専念すれば……っ!!」
何かに気づいたイリスが咄嗟に後ろに下がった直後、地面に剣が勢いよく刺さった。
「よくもやってくれたわね、イリス……!」
「カイネ! このややこしい時に!」
イリスが見上げた先には月に繋がれていた筈のカイネがいた。
恐らく神界へ向かったトクメがカイネに魔力を割くほどの余裕がなくなったのだろう。
「義姉上か、助太刀なら無用だ」
「私はイリスに用があるだけよ。今までずっと見逃してあげていたけど私の夫に、カイウスにまで害を及ぼすのならもう許さない! イリス! 今日が貴女の命日よ!」
月に繋いだのはトクメなのだがカイネの怒りはイリスに向いており、上空からそのまま滑空すると先程投げた剣を引き抜きその勢いのままイリスへと斬りかかった。
「それはこちらのセリフよ! これ以上貴女の好きにさせてたまるものですか!」
イリスはレイピアで剣撃を受けるがカイネはすかさず追撃をかけ、それを避ける為空へと向かった。
「逃すものか! 空中戦は私も得意なのよ!」
カイネもイリスを追い、遠くから激しい剣撃の音が響く。
その音を聞きながらウィルフもリビウスと向かい覚悟を決めた。
その瞬間黒い霧が現れ辺りが薄暗くなった。
「っ、次は何だ」
「この霧は……」
霧は段々と濃くなりバチバチッと音が響いている。
「もしかして……」
前にも似た事があったとウィルフが霧の特に濃い部分を見つめていると中からゼビウスが現れた。
「よーお、何か修羅場ってるねえムメイちゃん。トクメは?」
「神界に、カイウスの所に行った」
「なるほどなるほど。急に水が下から上へ流れるからおかしいと思ったんだけど、大体の事情は分かった」
ゼビウスは空に上がった水とリビウス、そして大量の魔物達を確認すると納得したかのようにうんうんと頷いた。
「カイウスと合流されると流石に分が悪いもんな、あいつ戦闘向きじゃないし。海の水で注意引きつけるのはいい策だと思うよ。まさか海の支配者が海の異常ほっぽって神界に行くわけにはいかないし、下手しなくとも兄に泣きついたって取られるもんなあ……ケルベロス!」
楽しそうにカラカラ笑っていたゼビウスは表情を一変して真顔になるとケルベロスを呼んだ。
ケルベロスはすぐに現れたが、ゼビウスが地面に足をつけているのにすぐに気づき見た目は分からないが顔色を変えた。
「ゼビウス様!! 地上に出られては危険です!! 今すぐお戻りをっ、なっリビウス!?」
「丁度いい機会だ、リビウスは俺が相手する。ケルベロス、周りの雑魚共は任せるぞ」
ゼビウスは持っていた杖をリビウスに向ける。
ケルベロスは不安そうにゼビウスを眺めていたが軽く顔を振ると表情を引き締めた。
「ゼビウス様……お任せください」
「ゼ、ゼビウス。俺も助太刀する」
「いらねえよ」
ウィルフの方を見向きもせずにゼビウスはスパッと言い切った。
「お前じゃ力不足だし足手まといになるだけだ。それに、兄弟水入らずの邪魔すんな、どうしても戦いたいならケルベロスと雑魚を殲滅していろ。ムメイちゃん、ちょっと移動出来るか」
「ごめんなさい、支えるのに精一杯で、一歩も動けない」
「そっか、じゃあ俺達が移動するか」
「フンッ、何故俺が移動しなければいけない。そこの精霊さえ殺せば海が元に戻ると分かればそれで十分だ!」
「え、弟に負けるのが怖いから嫌だって?」
簡単な挑発にリビウスがゼビウスを思いきり睨みつける。
「そっかぁ、折角仕返し出来ると思ったんだけど怖いんじゃ仕方ないよな」
「誰が、誰を恐れていると?」
「お前が、俺を。負けるのが嫌だから、いつも首輪の力を使って確実に勝てるようにしているんだろう。首輪の力に頼らないと自分の力だけじゃ勝てないもんな」
怒りからかリビウスの身体はブルブルと震えている。
「どうやら暫く相手をしなかったから自分が強くなったと勘違いしているようだな……いいだろう! 二度とそんな勘違いができんようきつく躾直してやる! お前達! 俺はすぐ戻るがそれまでにそこの精霊もケルベロスも! 全てを殺しておけ!!」
話終えるとゼビウスとリビウスは姿を消し、それと同時に魔物達が雄叫びを上げウィルフ達に襲いかかってきた。
「貴方達、リビウス様の御言葉を聞きましたね! そこの黒髪の精霊を倒せば海は元に戻ります! お父様の、カイウス様の名にかけてあの者を討伐するのです!!」
幸いケルベロスとウィルフが魔物を引きつけ距離を取ってくれたが、メイリン達がムメイへと襲いかかる。
「させるか!!」
そこへルシアが強い風を吹かせ動きを遮った。
「ルシア」
「私はあの魔物達と戦える程強くないし、お姉様の足元にも及ばない程なのも分かっている。けれど! 人間相手に遅れをとったりしない!」
「おのれ神にあだなす者め、お前から倒してやる!!」
「やってみなさいよ! 動けない相手を複数で襲うような卑怯者に負けるつもりはないっ!!」
神族への戦いの火蓋が切って落とされた。
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