TURN4:主人公(ヒーロー)見参
Dシティ第七中学校。少年少女達がデュエルや学問に勤しむこの場所で、今日もデュエルが繰り広げられていた。
「エレメンタル・マジシャンの攻撃!エレメンタル・バーニング!!」
HP:1000→0
「サンキュー!楽しいデュエルだったぜ!」
ヒトデとウニとカニを足して三で割ったような奇抜な髪型が特徴のこの少年、
「いやー!今日も絶好調っすねー先輩!」
「ん?甲斐か!俺になんか用か?」
デュエルを終えた遊太に話しかけてきたのは短く切った緑色の髪の毛と眼鏡がトレードマークの小柄な少年、
「ひょっひょっひょ!先輩、こんな噂は知ってますか?」
「アンタ…また遊太に変な話吹き込んでスクープにするつもりでしょ?」
そう語るのは黒髪ロングヘアと釣り目が特徴的な少女。
「ギクッ!!」
「遊太…アンタもこいつに利用されてるって事いい加減に自覚しなさいよ」
「俺は別に利用されても構わないぜ。甲斐が色んな噂を教えてくれるおかげで、俺は強いデュエリストといっぱいデュエルできて毎日が退屈しないからな!!」
「そうそう!ウィンウィンだから何の問題もないはずっすよ!ひょーひょっひょっひょ!」
「はあ…全くアンタたちは…」
「…愛良、もしかして俺の事心配してくれてんのか?」
「は、はーあああ!?ただアンタはこのアタシのライバル!不甲斐ない真似はして欲しくないだけ!べ、別に心配とか、そ、そんな訳じゃないんだから!!」
「で、その噂ってなんなんだ?」
「無視かよ…」
「ひょひょ。攻撃力の低いモンスターばかり使い、次々と敵を倒しているデュエリストがいる。そんな噂が流れてるんすよ」
「攻撃力の低いモンスターで勝つか…勝つためには攻撃力の高いモンスターを使うのが普通だもんな。すげー面白いやつってことじゃん!」
「ふん、どうせガセネタでしょ…証拠なんてないんでしょ?」
「ひょっひょっひょ…実はおいら、その噂のデュエリストっぽい奴を見つけちゃったんですよ!!」
「本当か!?」
「ホントのホント!攻撃力0のモンスターを何体も並べてデュエルしてる奴をこの目で見ましたもん!きっとまだこの街にいるはずっす!」
「そいつと戦ってみたいな!甲斐!放課後捜しに行こうぜ!!愛良も来るか?」
「くっだらない。そんな話ウソに決まってるでしょ…」
そして放課後…
「と言いつつ一緒に来てくれるんだな!」
「べ、別に…たまたま帰り道が一緒だっただけよ!!」
「ひょっひょ、その言い訳が無理があると思うっす」
「うっさいわね!」
「でもこの街には何百万人ものデュエリストがいる。噂のデュエリストがそう簡単に見つかるわけが…」
「あ!いたっす!あいつっす!」
「見つかったな」
「ウソでしょ…」
「沼地の支配者ゲロゲロックで攻撃」
「うわあああああ!!」
HP:1500→0
「………」
「よ、あんたが噂のデュエリストか?」
デュエルを終えた少年に遊太は話しかけた。
「………」
(!?!?!?主人公…だと!?!?!?)
この少年、タカシは人と話すのが苦手であるが、内心では物凄くパニックになっていた!
(いやいやいや、この街の人口は数百万人だぞ!?だのに主人公とエンカウントするだと!?確率から考えてあり得ないだろ!?ついでに愉快な仲間たちまでいるし!)
「俺は切藤遊太!」
(はい、知ってます…とは言わない方がいいよな。うん。何で知ってるんだって怪しまれそうな気がするし)
「お前の名前は?」
「…タカシ」
「タカシか!よーし!タカシ!!俺とデュエルしようぜ!!」
(主人公とデュエルだと!?!?…いや、落ち着け俺。今までだって前世と同じプレイングで勝ててきたんだ。遊太が相手でも同じようにプレイすれば勝てるはずだ)
タカシはうなずき、デュエルの申し出を受けた。二人はデュエルガジェットを構える。
「行くぜ!!」
「「デュエル!!」」
「俺の先行だ!ドロー!!」
遊太
HP:4000 AC:3 手札:5枚
タカシ
HP:4000 AC:0 手札:4枚
(本当は初手制圧から入りたかったが、まあ先行取られちゃったからしゃあない。まずは主人公様のお手並み拝見としよう)
「早速全力で行くぜ!まずはマジシャン・ジュニアを召喚!!」
黒いローブに身を包んだ幼い子供の魔術師が遊太の前に現れた。
AC:3→2
『マジシャン・ジュニア』
下級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:1500 防御力:1200
「さらにマジシャン・ジュニアをハイ・マジシャンへと進化召喚!!」
幼い子供の魔術師は成長し、少年の姿へと変える。
AC:2→1
『ハイ・マジシャン』
中級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:1800 防御力:1600
「そして上級進化!!あらゆるエレメントを操る最強の魔術師!エレメンタル・マジシャン!!」
少年魔術師は更に成長し、青年の姿に。その手には虹色に輝く杖が握られている。
「ハーア!!」
AC:1→0
『エレメンタル・マジシャン』
上級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:2500 防御力:2100
「よーし!1ターン目からエースを召喚できたぜ!これでターンエンド!!」
そんなデュエルの様子を見守る甲斐と愛良。
「先輩、1ターン目から切り札召喚とか絶好調っすね!!」
「………」
「どうしたんすか?そんな深刻な顔して?」
「1ターン目から上級モンスターを出されたのにあの男は動揺する気配が一切ない。噂になるだけあってただ者ではなさそうね…それに…」
「それに?」
「…アイツ、何か臭わない?」
「あー確かに臭いっすね。それはおいらも気になったっす。風呂入ってないんすかね?」
「…じゃあ番もらいます。ドロー」
遊太
HP:4000 AC:0 手札:2枚
フィールド:エレメンタル・マジシャン
タカシ
HP:4000 AC:3 手札:5枚
「…ヨブゲロゲを召喚。効果発動。カベゲロゲをデッキから召喚」
AC:3→2
『ヨブゲロゲ』
下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100
『カベゲロゲ』
下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:1500
「うわあ!早速モンスターを2体も出してきたっす!しかもどっちも攻撃力0…」
「ヨブゲロゲは召喚した時にゲロゲモンスター1体をデッキから呼び出す効果を持つモンスター。これで水タイプの下級モンスターが2体…」
「ヨブゲロゲとカベゲロゲを素材にエクストラ召喚」
「なんだって!?」
「ウォーターサーファーで」
ヨブゲロゲとカベゲロゲがディスクの中に吸い込まれ、大波に乗って人型液状の身体を持ったモンスターが出現した。
『ウォーターサーファー』
エクストラ タイプ:水 分類:アクア 攻撃力:100 防御力:1000
召喚条件:水タイプ下級モンスター×2
「1ターン目からエクストラ召喚!?…ってエクストラ召喚のわりには攻撃力低いっすね。これならエレメンタル・マジシャンで簡単に倒せそうっすね」
「いえ、ウォーターサーファーを出されたのはまずいわ」
「へ?」
「ウォーターサーファーの効果発動。エレメンタル・マジシャンバウンスで」
「ああ!エレメンタル・マジシャンが!!」
大波に飲み込まれ、エレメンタル・マジシャンは手札へと戻されてしまう。
「ウォーターサーファーの効果。それは場に出た時に自身以外のフィールドのモンスター1体を選び、付いているカードごと手札に戻す…!上級モンスターでもお構いなしにね」
「そんな!これで先輩の場はがら空き…!」
「カードを2枚裏側で出します」
AC:2→0
「そしてバトル。ウォーターサーファーで攻撃」
波を操るウォーターサーファーの攻撃が遊太に襲いかかる。
「っちい!」
遊太 HP:4000→3900
「ターンエンドで」
「俺のターンだ!ドロー!!」
遊太
HP:3900 AC:3 手札:6枚
タカシ
HP:4000 AC:0 手札:2枚
フィールド:ウォーターサーファー
裏側カード:2枚
「エレメント・マジシャンは諦めない!行くぞ!マジシャン・ジュニア召喚!さらにハイ・マジシャンに進化召喚!!そしてエレメント・マジシャンへと進化召喚!!」
AC:3→2→1→0
『マジシャン・ジュニア』
下級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:1500 防御力:1200
『ハイ・マジシャン』
中級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:1900 防御力:1500
『エレメンタル・マジシャン』
上級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:2500 防御力:2100
「そっか!手札に戻されただけならもう一度出せば…」
「バカ!?そんな事したら…」
「あ、『落とし沼』発動します」
「何!?」
進化召喚されたエレメント・マジシャンであったが、足元に現れた底なし沼に飲み込まれ、消えてしまう。
「な、なんですとお!?」
「あんなのどう見ても罠に決まってるでしょ…落とし沼は攻撃力2000以上のモンスターが召喚された時に破壊するカウンターカード、あれでエレメント・マジシャンを破壊するのが狙いだったのよ…!」
「く…俺のACは既にゼロ…ターンエンドだ!」
「ターンもらいます。ドロー」
遊太
HP:3900 AC:0 手札:3枚
タカシ
HP:4000 AC:3 手札:3枚
フィールド:ウォーターサーファー
裏側カード:1枚
「愚かなコンプレッサー使います。デッキのヨブゲロゲ墓地で」
「…!」
AC:3→2
「『愚かなコンプレッサー』はデッキのモンスターを墓地へ送るマジックカードね」
「何でわざわざ自分のカードを墓地へ?損じゃないっすか」
「墓地はただカードを捨てる場所じゃないってことよ。見てなさい」
「リボンゲロゲを召喚。効果発動。墓地からヨブゲロゲを召喚。さらにヨブゲロゲの効果でドロゲロゲを召喚。その効果で1ドロー」
AC:2→1
『リボンゲロゲ』
下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100
『ヨブゲロゲ』
下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100
『ドロゲロゲ』
下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100
「ひょー!?次から次へとモンスターが!?」
「これが奴の狙いよ。リボンゲロゲは場に出た時に墓地のゲロゲモンスターを復活させる。さっき墓地に送ったヨブゲロゲを復活させることでその効果を発動させ、さらにゲロゲモンスターを呼び出す…そのために愚かなコンプレッサーを使ったってことね」
「しかもこれであいつの場には水タイプの下級モンスターが3体…来る!」
「3体のモンスターでエクストラ」
カエルのモンスターたちがデュエルガジェットに飲み込まれ…
(…召喚の演出迫力あるけど長くて間が持たんな。アニメに登場するキャラがみんな召喚口上を唱えてたのはこのためだったのか。俺もこいつの口上を考えておくべきか…?まあ今はいいや)
「沼地の支配者ゲロゲロックをエクストラ召喚」
濁流と共にギターを持った巨大なカエルが姿を現した!
『沼地の支配者ゲロゲロック』
エクストラ タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:1500 防御力:1800
召喚条件:水タイプ爬虫類下級モンスター×3
「ゲロゲロックの効果使います。マジックで」
「ゲロオオオオオ!!!」
ゲロゲロックによる騒音がフィールド中に鳴り響いた。
「ひょぎゃあああああ!!耳があああああ!!あのモンスターの効果何なんっすか!?」
「ゲロゲロックの効果は…素材にしたモンスターを墓地に送って発動、マジックまたはカウンターのどちらかを選んで次のターンの終わりまで互いに使えなくする…!」
「1枚裏側で出します」
AC:1→0
「バトル。ウォーターサーファーで攻撃」
再び波を操る攻撃が遊太に襲いかかる。
「っ!」
遊太 HP:3900→3800
「ゲロゲロックで攻撃」
ギターを振り回して放たれる物理攻撃が遊太に命中する。
「うあああ!!」
遊太 HP:3800→2300
「ターン終了で」
「俺のターン!」
「………」
「どうしたんっすかね先輩、黙り込んで」
「そりゃこんな状況なら誰だって悩むでしょ。マジックカードは使えない。しかも相手の場には2枚の裏側カード」
「あー…また落とし沼みたいなカード使われるかもしれないって事っすか…でも先輩なら何とかするっす!ファイトー!」
(俺の手札は3枚。そのうち2枚はマジックカード、今はゲロゲロックの効果で封じられて使うことができない。ここを切り抜けられるかは…次のドローにかかってる!!)
「ドロオオオオオオオオ!!!」
(…来た!!)
遊太
HP:2300 AC:3 手札:4枚
タカシ
HP:4000 AC:0 手札:1枚
フィールド:ウォーターサーファー 沼地の支配者ゲロゲロック
裏側カード:2枚
「ヘッドドラゴンを召喚!」
翼の生えた子供のドラゴンが姿を現した。
AC:3→2
『ヘッドドラゴン』
下級 タイプ:風 分類:ドラゴン 攻撃力:1400 防御力:1200
「そして進化召喚だ!双頭の竜!ダブルヘッドドラゴン!!」
ヘッドドラゴンは成長し、二つの首を持った竜へと変貌する。
AC:2→1
『ダブルヘッドドラゴン』
中級 タイプ:風 分類:ドラゴン 攻撃力:1900 防御力:1500
「なるほど…落とし沼で破壊できるのは攻撃力2000以上のモンスター。攻撃力1900のダブルヘッドドラゴンなら破壊されない!」
「しかもゲロゲロックの防御力は1800、ダブルヘッドドラゴンの攻撃力がギリギリ上回るっすね!」
「そしてダブルヘッドドラゴンは1ターンに2回攻撃できる!バトルだ!いっけー!ダブルヘッドドラゴン!!まずはゲロゲロックを攻撃だ!!」
「あ、ミラバリ発動で」
「何!?」
ゲロゲロックに襲い掛かろうとしたダブルヘッドドラゴン。しかしゲロゲロックの周囲にバリアが現れ、攻撃が反射されてしまう!
「ひょっひょおおおお!?落とし沼じゃないですとお!?」
「聖なる結界ミラーバリアは攻撃してきたモンスターを破壊するカウンターカード…!あいつ、落とし沼で破壊できないモンスターを破壊するさらなる手まで用意してるとはね…」
「くっ…ターンエンドだ…」
「じゃあ番もらいます。ドロー。」
遊太
HP:2300 AC:1 手札:2枚
タカシ
HP:4000 AC:3 手札:2枚
フィールド:ウォーターサーファー 沼地の支配者ゲロゲロック
裏側カード:1枚
「これで遊太の場はがら空き…かなりまずい状況ね」
「でも相手の手札も残り2枚で先輩のHPはまだ2300も残ってるっす。このターンは何とか耐えられるんじゃないっすか?」
「裏側カード出します。天使の豊札使います」
「く!ここで手札補充カードか…!」
AC:3→2→1
「『天使の豊札』は自分の手札が4枚になるまでドローするマジックカード…!」
「手札が0なら一気に4枚もドローするってことっすか!?」
(お、来た来た。これなら行けるな)
「ウォーターガードナー召喚」
AC:1→0
『ウォーターガードナー』
下級 タイプ:水 分類:アクア 攻撃力:1000 防御力:1600
(まあここまでやれば大丈夫だと思うけど一応効果は使っておくか)
「ゲロゲロックの効果発動。マジックで」
「ゲロオオオオオオオオ!!」
再びゲロゲロックの轟音がフィールド中に鳴り響く。
「じゃあバトル入ります。ウォーターガードナーで攻撃」
水の盾で押しつぶすウォーターガートナーの攻撃が遊太にヒットする。
「うわっ!!」
遊太 HP:2300→1300
「沼地の支配者ゲロゲロックでとどめで」
爆音と共に濁流が発生し、遊太に襲いかかる!!
「うわあああああああ!!!!」
遊太 HP:1300→0
「そんな…先輩が…負けた!?」
「遊太…」
「………」
To be continued…
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