✣ 13万PV突破記念(番外編)✣

愛をこめて手料理を【前編】


皆様、𝑀𝑒𝑟𝑟𝑦 𝐶ℎ𝑟𝑖𝑠𝑡𝑚𝑎𝑠!

そして、いつもありがとうございます。


先日、12万PV越えて番外編を書いたばかりなのに、早々と13万PV超えてしまい、焦った作者です(笑)


ちょうど体調不良と重なり、今はもう5000PVくらいオーバーしてるんですが、無事に神木さんちのお兄ちゃん!が完結し、私生活が落ち着ききたので、お礼の番外編を書いてきました。


改めて、13万PV突破、ありがとうございます。


番外編の内容は、駆け落ち後の話で、結月がレオに初めて料理を作る話です。


缶切りを知らず『猫缶を開ける呪文を教えて』と言っていたポンコツお嬢様が、料理や家事を頑張る姿を、どうぞ温かく見守ってください。




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 番外編  愛をこめて手料理を



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「ほら、やっぱり熱があるわ」


 駆け落ちをして、一ヶ月ほどたったある日、突然、レオが発熱した。


 怒涛の駆け落ちを成功させたレオは、それから生活の基盤を整えるため、真冬にも関わらず大規模なリフォームに着手していた。


 元・お嬢様である結月が快適に暮らせるよう、古びた日本家屋を、まるで高級旅館のように、一人で改装したレオ。


 だが、やっとリフォームが終わったかという1月末、レオは熱を出してしまった。


「寒いのに無理するからよ」


「無理なんてしてない。というか、好きにリフォームできるのが思ったより楽しくて……それに、37.2℃は、たいした熱じゃないよ」


「なに言ってるの。私なら寝込んでるわよ?」


 結月なら37℃台になれば、すぐ伏せってしまう。だがレオは、たいした熱じゃないと言い張る。


 だがこれは、執事時代に無理をしたせいだろう。ちょっと感覚がバグっているような気がした。


「とにかく、レオはゆっくり休んで。家のことは私がやるわ」


「私がやるって……何をする気だ?」


「何って、洗濯に掃除に料理。あとレオの看病、よ!」


「……………」


 張り切る結月を見つめながら、レオは眉をひそめた。


 気持ちは嬉しい。


 だが、結月はこれまで家事をしたことが、一度もなかった。


 というか、レオがさせなかった。


「いいよ。結月は何もせず、俺の傍で笑っていてくれたら、それだけで」


「もう! 私は、レオのお人形じゃないのよ」


「そ、それは、そうだけど……でも、水仕事をして、この綺麗な手になんてできたらと思うと」


「アカギレってなに?」


 ほら見ろ。あかぎれすらすらない無垢なお嬢様、いや、恋人なのだ。


 やはり、結月に家事はさせたくない。


「とにかく、俺なら大丈夫だよ」


「だめよ。ちゃんと休んで!」


「……わ、わかったよ。でも、洗濯や掃除は、一日くらいサボっても問題はないし、食事は出前をとれば」


「レオは、私のこと信じてないの?」


「……っ」


 その瞬間、結月が潤んだ瞳でみつめてきて、レオは黙り込んだ。


 そしとレオは、結月のその目に、すこぶる弱かった。


「べ、別に、信じてないわけじゃ……っ」


「じゃぁ、私にまかせて! 大丈夫よ。日頃レオが家事をする姿を見てるし、自信はあるの! だから、すぐに終わらせちゃうわ」


「…………」


「じゃぁ、私はもう行くわね。ルナちゃんは、レオが、ちゃんと寝てるよう見張っててね?」


 すると結月は、有無を言わさずレオをベッドに戻すと、ルナの頭を撫で、意気揚々と部屋から出ていった。


 夫婦の寝室には、あれから新しく設置された高級ベッドが置かれている。


 大人二人が、余裕で眠れるキングサイズのベッドだ。


 そして、その広いベッドの中に戻され、寝るよう指示されたレオは


「嫌な予感しかしない……っ」


 と、不安いっぱいの表情を浮かべたとか。




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「全く。レオはいつまでたっても、私をお嬢様扱いだわ!」


 その後、高級旅館のように、美しく磨きあげられた廊下を、結月はスタスタと歩いていく。


 駆け落ちをして、もう一ヶ月も経つのに、レオは未だに、結月をお嬢様扱いしてばかりだった。


 手伝いたいと言ったら、笑ってはぐらかされ。


 無理やり手を出そうものなら、キスをして黙らされ。


 それでも、諦めず悔い下がれば、押し倒されて、足腰立たなくなるまで愛される。


 そして、そんなレオに屈してしまう結月も結月なのだが、今日ばかりはそうはいかなかった。


「ちゃんと、できるって所を見せて、レオにわかってもらわなきゃ!」


 毎度毎度、レオの手練手管てれんてくだに屈している訳にはいかない!


「えーと、まずは何からしようかしら? やっぱり、お洗濯かな?」


 すると結月は、まずは洗濯から始めようと、洗濯室に向かう。


 少しひんやりした洗濯室の中には、洗濯機があり、カゴの中には衣類が入っていた。


「確か、白モノと色柄物に分けて、洗濯するんじゃなかったかしら?」


 そして、結月は、本で覚えた記憶を思い出しながら、衣類を手にとった。


 なにより、家事のノウハウは、屋敷にいた時に恵美にも教わったため、頭に入っていた。


 そんなわけで、結月はカゴの中に放置された洗濯物を、一つ一つ仕分けしていく。


 レオのワイシャツに結月のスカート。

 そして、シーツやタオル。


 冬物は厚手のものが多いため、量が多く見えるが、それでも、淡々と仕分けていく。


 だが、次の瞬間──


「きゃッ」


 あるものを手にした直後、結月が、悲鳴を上げた。


 結月が手にしたのは、レオの下着だった。


 そして、男性物の下着を手にするのは、結月にとっては、生まれて初めてのことだった。


(ちょ、ちょっとびっくりしちゃった)


 人様のパンツを手にするなんて。


 いや、でもこれは恋人のものだし、びっくりするのも、恥ずかしがるのもおかしいだろう。


 だって、もう男女の一線を超えた仲なのだ。


 パンツどころか、裸だって見せあった仲。


 それに──


「し、下着は毎日取り替えるものだし、あるのは当然よね? というか、私の下着も毎日レオが、洗濯していたということよね?」


 当然だ。

 ここにメイドはいないのだ。


 だけど、私の下着を、毎日?!


 そう思うと、羞恥心が怒涛のごとく押し寄せてきて、結月は顔を真っ赤にする。


(これって、私が、どんな下着をつけてるか、レオは毎日把握してたってことよね?)


 いや、それだけではない!


 色もサイズも、全て熟知されていたということだ!!


 そう考えたら、なんて恥ずかしいことか…っ


 だが、パンツごときに足止めを食らっている場合でない!


(ダ、ダメよ結月、落ち着いて……こんなことで恥ずかしかっていたら、家事が進まないわ!)


 そうよ。きっとレオのことだから、私の下着を手にしても恥ずかしがらず、淡々と洗濯機に入れていたはずだわ!


 いや、そうに違いない!

 なら、自分もそれを見習えばいいのだ!


 すると結月は、恥じらいつつも仕分けを再開し、白物と色柄物に分け、まずは白物から洗濯機にかけた。


 洗剤を入れるのに、ちょっと手間どったが、その後スイッチを押すと、すんなり洗濯が始まった。


「よかった。あとは、終わるのを待つだけね」


 やっとのこと、一つの仕事を終え、結月はふぅと息をつく。


 そして、結月が、次に取り掛かったのは、朝食だった。


 レオが作ってくれる料理は、いつも完璧だが、今日は初心者である結月が作る。


 キッチンに行くと、結月は、まずは冷蔵庫の中を確認する。


 中には、食材がたくさん入っていた。


 肉や魚、ヨーグルトにバター、そして牛乳などよく知るものの他に、よくわからない野菜や調味料もたくさんあった。


「調味料……いつの間に、こんなに揃えたのかしら?」


 この家にきた頃は、基本の『さしすせそ』くらいしかなかった気がするのに、今では見知らぬ調味料が、わんさかある。


「た、たくさんありすぎて、どれを使えばいいか分からないわ……っ」


 だが、その瞬間、どころからか、アラームの音が聞こえてきた。


 どうやら、ご飯が炊き上がった音らしい。


 すると、その瞬間、結月の頭に、ある料理が浮かんだ。


 屋敷にいた時に、コックの愛理と恵美から教わったのだ。


 病気の時には、を作ってあげるといい──と。


「そうだわ。お粥なら、私にも作れるんじゃないかしら?」


 結月の表情が、明るくなる。


 屋敷で、作り方を教わった。

 もちろん、シェフの愛理直伝だ。


 そして、お粥を作ると決めたあとは、結月はエプロンをし、すぐに調理に取りかかった。


 前に、阿須加家の屋敷の中でレオが寝込んだ時には、何もしてあげられなかった。


 あの日、どれだけ悔しい思いをしただろう。


 だから、できることを少しでも増やそうと、あの日から、ずっと努力してきたのだ。


 私だって、レオを守りたい。

 いつまでも頼ってばかりではいたくない。


 だから、今日こそは──…


「待っててね、レオ。愛情こめて美味しいご飯を作るからね」


 キッチンに一人立つ結月は、寝込んだレオのため、腕によりをかけてお粥を作りはじめたのだった。



【後編に続く】

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