無能の烙印を押されましたが実は最強チートでした、な奴だらけの街 ~転生賢者・最強村人・外れスキル・常識知らず・パーティー追放・異世界召喚・中年おっさんたちが大暴れ~
第3話 転生賢者の失伝魔法 ~五百年後の魔法学園で、俺は伝説になっていました~ 3
第3話 転生賢者の失伝魔法 ~五百年後の魔法学園で、俺は伝説になっていました~ 3
「ご主人」
「へい、らっしゃい! あ~……」
先ほど訪れた屋台で、再度主人に声をかける。
食料屋の主人は私の顔を見ると、少し迷惑そうな表情をした。
「お客さん、また帰ってきたのかい? あれが何なのかはよく分からないけど、ちゃんとしたお金じゃないと使えないよ」
「大丈夫だ」
私はずだ袋に入った貨幣に手を伸ばした。掴んだのは、銅貨三枚。貨幣の価値は変わっているのかいないのか、実際に試してみる。
「ご主人、このリンゴが三つほど欲しいんだが」
「ん……」
私は主人に銅貨を手渡した。主人はまじまじと銅貨を見つめると、
「なんだお客さん、お金持ってきてなかっただけだったのかい。これは失礼なことを言いやした。これはちゃんとした貨幣じゃないですか」
そう言った。
「時にご主人、銅貨よりも価値のある貨幣をご存じか?」
「んん? まったくお客さん、本当におかしなことを言いますね」
主人は手に持った銅貨を眺め、言う。
「ニケ様の刻印がされてるこの銅貨、これが世間で最も流通している貨幣ですよ」
見たこともない女性の刻印がされている。
訊いてもいないのに、魔物と人々の友好の懸け橋となった聖女様、などと説明しだす。どうやらこのご主人、相当な歴史好きらしい。
「銅貨の上は銀貨、剣聖オルステッド様の刻印がされてるでしょう」
誰だよ、と突っ込みたくなる。
「まあオルステッド様は先日の邪竜討伐から行方知れずらしいですけどねえ」
ご主人はどうしたんだろうなあ、と視線を泳がせる。
「失敬、話が逸れたな。金貨は銀貨のさらに上、大賢者アルガロ様が刻印されてるでしょう。銅貨の上は銀貨、銀貨の上は金貨、常識でしょう」
「ふむ」
なるほど、やはり貨幣の価値は変わっていないようだ。だとすれば、転移の
「ん?」
金貨の刻印は大賢者アルガロ……?
「ご主人、金貨には何が刻印されていると言った?」
「金貨には大賢者アルガロ様が刻印されてることで有名でしょう。世界の魔法技術を大きく進展させたアルガロ様、本当に尊敬できる人だ」
「んんんん!?」
私はミーロを見た。ミーロもまた、口をぽかんと開けて、唖然とした顔で私を見た。
私はずだ袋の中の金貨を覗き込む。そう言われると、この金貨に描かれている人物は私の晩年の容姿に似ているような気もする。
「で、お客さん、他に何かお買い上げですか?」
「あ、ああ…………」
私は多少狼狽しながらも、数日の間食うに困らないだけの食料を購入した。
「またいらっしゃい!」
「ありがとう」
私は食料を受け取ると、ミーロと帰路に就いた。
「ミーロ」
「はい」
「どうやら五百年後の今、私は貨幣になっていたようだ」
「大変驚きました」
どうやら私は金貨に描かれるほどの大業を成し遂げたらしい。
「とにもかくにも、帰ろうか」
「これでアルトも顔を見せれば金貨で支払ったことと同じになりますね」
「なるわけあるか」
居城に帰り、ミーロから手料理を振る舞ってもらった。
× × ×
「ふわあ……」
朝。体の節々が痛まない朝なんていつぶりだろうか。一度も夜半に目を覚ますことなく起きれた朝なんていつぶりだろうか。
ああ、最高。やはり若さは何物にも代えがたい。
気持ちよく目を覚ますことが出来た私は、毎朝日課の自主鍛錬に臨む。
「五一、五二、五三……」
魔法を使うにはやはり体力が欠かせない。魔法を使うからと体を怠けさせていてはいけない。結局戦士であったとしても魔法使いであったとしても、体力と精神力を求められるのは同じなのだ。
とりわけ、高位の魔術を使う際には、消費される魔力も体力もすさまじい。
私は自主鍛錬を終え、リビングへと戻る。
「大賢者様、お早うございます」
「ああ、おはよう」
ミーロが朝食を作って待ってくれていた。
「お口に合うか分かりませんが」
「君の作った料理はずっと美味しかったよ」
「転生して口も軽くなったんですか?」
「あっはっは、よく言うねえ」
私はミーロとともに朝食をいただく。
美味い。やはり絶品だ。
「ところでアルト様、今日はどちらへ?」
「アルトでいいよ。今日は少し目当ての場所があってね」
「というと……?」
最低限生活出来るだけの金銭を手に入れた私には、目的があった。
そう、
「魔法学園だよ」
「魔法学園……?」
学校だ。
この五百年で魔法はいかに進歩したのか。一体どのような新しい魔法が生み出され、どのような応用方法が生み出されたのか。少し考えるだけでもわくわくが止まらない。
「俺は魔法学園に行く!」
「あはは、なんですかそのポーズ」
大仰なポーズに、ミーロはけたけたと笑う。
「何を笑っているんだ。君も一緒に行くんだ」
「え、私もですか?」
ミーロはきょとんとする。
「当たり前だ。この城で呑気に余生を過ごすったってそうはいかないよ。君もしっかり魔法を学んで私の手となり足となり、きびきび働いてくれたまえ」
「え~……やだ~……」
ミーロは不服そうに口をとがらせる。
「じゃあミーロ、食事は済んだかい?」
「え、え、え?」
私はミーロの下まで
「では早速出発だ!」
「いやああああぁぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げるミーロをよそに、私は居城のはるか真上の空まで
「怖い怖い怖い怖いこあうぃぇーーー!」
「え?」
風が強く、何を言っているか分からない。
私はミーロを抱えたまま、空中に静止した。
「浮いてるんだからそんなに怖がることはないだろ」
「私はアルトほど魔法使えないんです! 馬鹿!」
ミーロは私の首から手を離せない。
私はミーロを少しからかうことにした。
「わっ!」
私は一瞬ミーロを手離し、ミーロは自由落下する。
「いやあああああぁぁ!」
そしてすぐさま抱きかかえる。
「最低! クズ! クズ賢者! ゴミ!」
「あははははは」
「絶対ろくな死に方しない!」
「まあまあ、ちょっとしたジョークだよ」
空中に静止する高位魔法、
つまり、今浮いている最中も常に
魔法は奇跡だ。頭の使い方次第で幾重にも工夫することが出来る。
一見して関係のないような魔法と魔法でも、きちんとどこかで繋がっている。それが本当に面白い。
「さあ、ミーロ。魔法学園はどこかな?」
「知りませんよ! あっちあっち!」
ミーロは適当に指をさした。
「ふむ」
当たっている。
「どうしてあっちと?」
「魔力の流れがなんとなくあっちに向いてる気がしたからですよ! それだけ!」
「正解だ」
ミーロも魔法のことをそこまで詳しくはないものの、私の側仕えを出来るほどの魔力とセンスを持っている。
「ミーロ、やっぱり君はセンスがあるね」
「でもアルトみたいに浮いたり出来ないですよ」
「おいおい教えていくよ。じゃあ行こうか、ミーロ」
「やっぱりこの体勢はいやああああああぁぁぁぁ!」
私はミーロを抱きかかえたまま、高速で、魔力感知のある場所へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます