【25時間目】魔王様、人間大掃除のお時間です‼


突然だが、みなさんに問いたい事がある。

どんな用でもいいのだが貴方あなたが街中を歩いている時、タバコのポイ捨てをするやからが居たとする。


その時、貴方だったらどうするだろう。

注意するだろうか。はたまたそんなやつには関わりたくないと、無視を決め込むだろうか。あるいは、ただ単に無言でその吸いがらを拾って捨てるだろうか。


個人的にはそういったはみ出し者には吸い殻とともにゴミ箱に入って欲しいのだが、だが!


少なくともそういった過激アグレッシブな事は心中思うだけで行動には移さないで欲しいのだが─────



「水原さん?そのうごめ人大ひとだいのデカいポリ袋はいったい……」



「あら躑躅森じゃないの。これはね、"社会のゴミ"よ」



残念ながら「今は休憩中なの?」とにこやかに僕の進捗しんちょくをたずねてくる水原さんはどうやらそういった過激派であるらしい。

まあ水原さんっぽいと言えばそうなるのか…。


僕は「それ重いでしょ?僕が持つよ」と声をかけると中身のあわれな廃棄物に逃走をうながした。

さすがにこの年で"二つ"の意味の不法投棄で水原さんをブタ箱に押し込みたくはないからね………。



「それはそうと水原さん。水原さん含めクラス委員の人たちは学校内のみならず学外ですら掃除しなきゃならないの?」



皆さんも冒頭ぼうとう、「え?なんでこいつナチュラルに学校の外出てるの?」と問いたくなったかもしれないが、その実僕は学校にこれ以上(いろんな意味で)居たくなくなった為にこうして外出(というよりも出奔しゅっぽん)を決意したのであった。

そして学校を出るために校門の警備員さんに外出許可を取ろうとしたのだったが望外、面倒な手続き無しで出れたため不思議に思ったが真実はこういう事らしい。



「えぇそうよ。私たち──と言うよりも生徒会の仕事ね。やっぱりこれだけ大きくて名門だと言われてるから"外"へのビジュアルも大事になってくるらしいわ。だから生徒会長じきじきに、そしてそれぞれのクラス代表としてクラス委員がこうやって学園外の外でもゴミ拾いといった奉仕ほうし活動をしなきゃならないらしいわ」



はぁとため息をくと「私も少し疲れたからちょっと休むわ。あそこのベンチに座りましょう」と水原さんは素敵な提案(僕もかねてから望んでいたからね)をした。

僕は即座にイエスと答え、「ところで私の拾ったゴミはどこにやったのかしら?」という質問を華麗かれいに受け流すとそのまま缶コーヒー(さすがにミルクティーの気分ではないよ)でも買おうと近くの自販へと寄った。


数分後戻ると水原さんの座るベンチにもう1人、うちの制服をきた生徒が座っていた。


あの人は……見たことある。

と、いうよりも記憶に新しすぎる。

そうその人は────



「せ、生徒会長さん!?」



あの日(*【5時間目】魔王様、入学式のお時間です‼︎参照)にあんまおもんないスピーチをした生徒会長(まあその後僕と聖良も委員会会合でおもんないコントをしてしまったからイーブンか……)だ。


そして僕らが追い求める"能力持ち"の人間である。


僕が存外な人物の登場に呆気あっけに取られていると見かねた水原さんがその場を取り持ってくれた。



「紹介するわ躑躅森。こちらの方は私たちの先輩で黒瀬川学園生徒会の生徒会長、黒瀬川くろせがわ 咲葉さくは会長よ」



水原さんが丁寧ていねいに紹介をするとその生徒会長──黒瀬川 咲葉会長は綺麗な黒髪をなびかせると(何故か見事な)ドヤ顔を見せつけながら水原さんのした紹介に便乗し、自己紹介を始めた。



「そう。私の名は黒瀬川 咲葉。咲く葉と書いて咲葉だ。さくら子クラス委員の言う通り君の通う学園の生徒会長を務めている。これからよろしく頼むよ、躑躅森 逢魔」



あれ?なんでこの人僕の名前知ってんだろ。

僕がそんな些細ささいな疑問を反芻はんすうし、『水原さんが教えたのかな』と答えを出すまでに黒瀬川会長は話を続けた。



「見ての通り、私たちの学校は名高い──ゆえに学園外の住人にアピールも必然と必要になってくるのは分かるかな?だから恐らく君たち一般生徒には親睦しんぼく会……と、聞かされているとは思うがその実、こうやって外へのアピールをするための活動を行う為に使う君たちへの建前なのだよ。その点では君たちの清掃への意気込みと善意を利用して申し訳ない」



「え、え……そうだったんですか?」



僕がしょうもない疑念を払拭ふっしょくする間にまさか生徒会長から別段気にしていない事に対しての謝罪を受けるとは思ってもなかったので、突如飛んできた謝罪の言葉にどう応対していいか分からずあわあわしていると水原さんがまたも助け舟を出してくれた。



「黒瀬川会長、大丈夫ですよ。別に私たちは気にしてませんから。それに学園のイメージが良くなって困ることでもありませんし、いや、むしろ学園のイメージが良くなることによって自然に私たち生徒のイメージも上がるのであればそれは良いことですから」



「そ、そうですよ!別に会長さんが気にすることじゃないですよ」



水原さんの言葉に便乗するしか他手立てがない僕はひたすら必死になって水原さんの言葉を反復する形で会話を続けた。

普段僕たちがする会話とはうってかわって「あ、この学校てやっぱり名門進学校なんだし、そこに通う生徒は無論頭良いんだなぁ」と改めて認識せざる得ない小難しいワードがぽんぽんと飛んでくるので僕はそのギャップに目眩めまいを覚える。


「あぁ僕らって普段めちゃくちゃiQ低い会話してんだな」と謎の答えを出したあたりでついに僕はその高度な会話に処理能力が追いつかなくなり、焦ったのか、生徒会長に対し禁断とも言える質問をしてしまった。



「あ!そ、その。生徒会長は魔法とか、信じます?」



水原さんの顔が青ざめたところで僕は「あ、やってしまった」と理解した。

だって仕方ないじゃん。そんな国際情勢とか、経済うんぬんとか僕この世界の人間じゃないから分からないもん。



「魔法?魔法とは手から炎を出したり、水を一瞬で凍らしたりする──その魔法かい?」



水原さんが鋭い目つきで僕をにらんでくる。

僕はまたもや必死に言い訳を考えていると、まさかのまさか、またもや存外な言葉が生徒会長の口から飛び出してきた。



「信じるよ。魔法は───」



☆生徒会長の思惑に影アリ!?────



───────────────────────


【登場人物紹介】


●躑躅森 逢魔


魔王の息子で主人公。

今回めちゃくちゃ真面目でまともな回な上に難解な会話でもう死ぬほどストレスが溜まっているらしい。

誰か助けてやってくれ。



●水原 さくら子


2人目の能力持ちツンデレ貧相クラス委員少女。

普段めちゃくちゃツッコミしてるけど本当は頭いいんだよ。みんな知ってた?



●黒瀬川 咲葉


5人目の能力持ちだと噂の生徒会長さん。

その美しい顔から放たれる声は美しいが喋る言葉は難しい。

多分IQ5000。


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