【15時間目】魔王様、起死回生のお時間です‼︎


さて、前回のあらすじを一言で表そう。

生徒会長が能力持ちだった!以上!それではまた次回お会いしましょう!!


───と、こんなすんなり終わって良い訳はなく。

現状、僕らはこのだだっぴろい無駄に金がかかってそうなこの会議室でただひたすらに、その能力持ちの生徒会長様の演説をきながら悶々もんもんとしているのであるが。



「どうしましょうか、逢魔様」



聖良が苦慮くりょしているような表情の僕を見かねて声をかけてきた。

同じく僕の反対側に座る水原さんも緊張の面持おももちを崩さない。



「どうするもクソも……とりあえずこの会議が終わるまで待つ以外手は無さそうだけど……」



至極しごく当たり前な提案をする僕に今度は水原さんが苦慮したような表情で反論してきた。



「そうもいかないわ……。相手は私立黒瀬川学園の生徒会……しかもその生徒会長ときたわ。この機会チャンスを逃せば次会える事なんて金輪際こんりんざい無いかもしれないのよ」



「どういう事ですか?」とたずねる聖良に水原さんが「まあ聞いてちょうだい」と掣肘せいちゅうを加えると、話を続けた。



「実はまだ言ってなかったけど…あの生徒会長。今しゃべってる彼女ね───名前は黒瀬川くろせがわ 咲葉さくはって言うらしいのだけども……」



黒瀬川?おいおい黒瀬川ってこの学園の名前じゃあ………。

え、つまり。とどのつまりは。あの生徒会長は……否、生徒会長様は……!?



「そうよ。あの人はこの学園の───学園長の一人娘らしいのよ」




(能力返還の条件がですね……その、つまりは……相手を好きにさせ、恋仲になる事なんですよ……)


かつて2話目に僕が聖良に言われた一言がふと脳裏をよぎった。


え、つまりは僕──躑躅森 逢魔はこの学校のボスの(それはそれは大事に育てられてそうな)一人娘とアバンチュールしなければならない──という訳なんですか!?



「聖良」



僕はさっきの苦慮した表情とは打って変わって清涼せいりょうなにっこり笑顔を聖良に見せるとただ一言、言った。



「メイベルに帰ろっか」



「え」とまるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする聖良と水原さんをよそに僕は早速スマホ(言ってなかったけど僕はiPh◯neユーザーです。アイ・ラブ・ジ◯ブズ)を取り出すと実家に帰省のLI◯Eを入れた。


……なぜ、僕がこんな急に弱気になってすんなりとあきらめたか不思議と思う方も居るだろうがその理由は単純明快たんじゅんめいかい



「ぜってぇ付き合うとか付き合わないとかの話になったら僕、黒瀬川家の屈強な黒服のSPかなんかに消されるよねこれ?漫画でよく見る大富豪の娘とか、社長令嬢れいじょうとかと恋人同士になった男の人って毎回命の危険にってんじゃん?お前に娘はやらん!的な感じでさ。僕、嫌だよ。まだ種田さんとか水原さんとか奈賀井さんとかと恋仲になるのはまだいけそう、あ、いやすごい失礼だけどさ、いけそうじゃん?でもさ、こんな鬼でかい学校建てて世界中から生徒をスカウトして───そんな国家権力と癒着ゆちゃくしてそうな学園の、学園長の、それこそ一人娘よ?そんな女性と恋愛関係まで持ってくなんてこれバッドエンドの未来しかないよね?能力持ち取り戻すとか取り戻さないかとかの問題じゃないよね、もはや。死よ、死。僕まだこの歳で死にたくはないよ。てかあれじゃん?僕魔王じゃん?現魔王様じゃん?じゃあ尚更なおさら死ぬわけにはいかないよね?と、言うわけでもう実家に帰らせていただきますっ!」



後半はほぼ早口になって弁明べんめいしていた僕だが、聖良が「やれやれ」と言った感じでそんな僕をなだめると静かに──こう言い放った。



「ダメです」



「ダメかぁ〜〜ならしゃあないよな……よっしゃ!どうやってこっから巻き返して行くか思案しますかぁ!」



僕は腕をまくるとただ真っ直ぐに、演壇に立つ生徒会長を見つめながらこれからの作戦をろうと────



「いやちょっと待ちなさいわよ!!何勝手に話進めてんのよ!!てかさっきの躑躅森の早口の下りはフリだったの!?ツッコミ役のあんたが変な小ボケしたら収集付かないじゃない!!ていうか恋愛関係とかなんとか言ってるけどどういう事!?躑躅森が私と恋愛関係とかどういう事!?え、もしかしてあんた私のこと好きなの!?もう訳わかんな───」



さわぎ立てる水原さんを聖良が「しぃーっ」と口に指を当てて制止する。



『水原 さくら子、貴方あなたは何も聞かなかった。良いですね?』



「はい…………」



素直に静かになった水原さんを尻目しりめに僕は──否、僕たちはやっと今いる、この場の異常性に気づいた。

恐らくここが戦地であれば僕たちは死んでいただろう──と、錯覚さっかくするほどの周囲の目、目、目。この場にいる100人強の人間ほぼ全員が僕らを奇怪きっかいな目で見ていたのだった。


………やってしまった。

ついついいつものノリでコントをやってしまっていた。まあ最近ちょっとほのぼの日常回?が多かったからちょっとははちゃめちゃな事しないといけなかったからね、しょうがないよね。


───まあ何が起きたかって言うと、こんだけ静かに生徒会長のスピーチを聴いてる中で騒いでたら人の目を集めるよねって事……。


思考停止&フリーズした僕の制服のそでを聖良が引っ張り、あやうく三途さんずの川を渡りかけそうになっている僕を引き留め、ある提言をしてきた。



「逢魔様。この状況はある意味千載一遇せんざいいちぐうの大チャンスかもしれませんよ………」



え?

この今にも穴があったら入りたい状況が千載一遇の大チャンス?一体どういう──────



「この大衆の目がきつけられてる今、私たちで、私たちをアピールするのです」



あぁ、なるほど。

つまりは────とどのつまりはこういう事か──────



「ショートコント『コロナ』」



☆次回、逢魔と聖良(with水原さん?)のショートコントが炸裂!?───────



───────────────────────


【登場人物紹介】


●躑躅森 逢魔


魔王の息子で主人公。

回を重ねるごとにカオスになってくる話に一生懸命頑張ってついていっている猛者。

いよいよ次回はコントをし始めるという暴挙に戸惑い気味。



●躑躅森 聖良


逢魔の幼馴染でお付きのメイドさん。

回を重ねるごとにカオスになってくる話にワクワクが止まらない(ある意味で)猛者。

いよいよ次回はコントをし始めるので楽しみで眠れない。



●水原 さくら子


2人目の能力持ちツンデレ貧相クラス委員少女。

もはやここ最近の話の流れはただ巻き込まれているだけのかわいそうな苦労人。

次回に至ってはもはや他所でやってくれと思っている。



●生徒会長with生徒会メンバー2人


設定も名前もプロローグを書く前から決まっていたのに未だ名前すら名乗らせてもらえないかわいそうなお人。

とりあえず今はすんげえ美少女で声が良いと言われてるだけの概念体である。

まあホオズキ組にアンドロイドいるから違和感はないでしょ(適当)。



●ジ◯ブズ


かの有名なAp◯le社元CEOの故人。

彼の類稀なるカリスマ性とプレゼン能力でAp◯le製品は世界を席巻する事になったが夢半ばで56歳、膵臓癌でこの世を去った。最期の言葉は「oh, wow」だったそう。

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