第3話 諦観

恋焦がれて、辛くても何もできないでいる、散々である。


思わせ振りな行動に振り回されて、独りで勝手に怒って、顔を真っ赤にしながら泣きそうに迷っている。


本職はどうしたらいい。


こんなにも答えが出ずにいて、どうしようもなくもどかしい気持ちは初めてである。


せめて、本職が女性ならば周囲に相談するなり、思いきって近づくなりできたはずで・・・

性別のせいにしてしまうのが情けない。


好きだよ。


言いたくて、しかし冗談でも言えないのである。


伝えて成功することはなく、かつ現在の関係が崩れてしまうのが怖い。


以前好きな人のために犯罪を犯す者等の心情は理解できないでいたが、今ならば痛いほどに解ってしまう。


それほど好きで、泣くほど好きで、悔しいほど好きでいる。


本職は彼の前では良い先輩でなければならない、自身の心を欺いてこれから先60年近く生きていける気がしないのである。


本職はトイレの個室に籠り右腰に吊ったものを握っては離し、力無く壁にもたれ掛かった。


次は女性で生まれてくるように。


本職はその場に崩れて、止め処なく溢れる涙を一切堪えることなく睫毛まつげを濡らした。


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