2年生編 第84話

 もう、嫌!


 何でこんなことになってしまうのよ!


 誰か助けなさいよ、この状況から!


 何であの状況を無視しているのよ!


 あんなの無視するんじゃないわよ!


 誰もなるべくこの事には触れないようにしてるけど!


 もう帰りたいとすら思ってるわよ!


 でも、帰り方を知らないから帰ってないだけだから!


 帰り方知ってたらもうとっくに帰ってるからね!


 もういい加減修学旅行を満喫したいわよ!


 あと、宇野とか言う奴?あいつは一体どこで何をしているのよ!


 あいつのせいなんでしょ!この状況になったのは!


 なのにあいつはこの修学旅行を楽しでいるのでしょ?こんなの許されないわよ!


 しかもあいつ私の電話に出ないのよ?絶対に気づいているのに!


 2日目も1日目と同じ感じだったら私もう泣いてしまうわよ!

 

 あの常に沈黙の感じと最低限の会話の感じがまたあったら泣いてしまうわよ!


 


 …ダメよ、もう他人のせいにするのはもう辞めよう。


 私もここで成長しないと一生友達のいない人生になってしまうわ。


 せっかく喋れるチャンスがあるのにそれを捨てるのはバカバカしいわ。


 今日は私が会話を回していくから覚悟しておきなさい!






「「「「……………」」」」



「…………」



 はい、やっぱりダメでした。


 こんなの出来たら昨日からやってるわよ、って話。


 まだみんなが初対面同士とかだったら頑張れたけど、ただただ空気が悪いんだもん。


 もう無理。


 また来世の修学旅行に期待するしかないね。


「ねぇ、みんな」


 私が諦めていたら莉緒がみんなに声をかけた。


「一旦やめよう。この感じ」


 あ、一応空気が悪いのは感じてたんだ。


「せっかくの一生に一度の高校の修学旅行なんだから楽しまないと」


 久しぶりに莉緒の笑顔が見れた。


 やっぱり笑顔の方が可愛いんだから笑ってる方が良いに決まってる。


「私もそう思ってた」


 千沙は莉緒の意見に同意した。


 いや、思ってたなら言ってよ。


 と言うか、千沙は元々私サイドの人間だったのに2日目になったら急に機嫌が悪くなってるし。


「そうですね。私たちは敵ではなく仲間ですしね」


 菫も同じく同意した。


 いや、誰が言ってるのよ!あんたが1番ピリピリしていたからね。


 本当に私たちを殺しそうな目で見ていたからな!


「…はい」


 あんたは元々喋れないだけよね、ずっと気まずそうに下向いてただけよね。


 この魔法少女の中ではあんたが1番馴染んでいないからね。


 まだ私の方がちょっと上だからね。


「ごめんね。怖かったでしょ」


 莉緒が葵の頭を撫でる。


「ごめんなさい。もう少し周りを見れていなかったですね」


 菫も同じく葵の頭を撫でる。


 あれ?私より馴染んでない?


 いつの間に差が縮まるどころか逆転してるのよ!


「本当はみんなが幸せな道を進みたいけど、現実はそう甘くないから。辛いけど、今は待とう。どんな結果になっても恨みっこなしで!」


「うん」


「はい」


「…はい」


 良かった、良かった。


 丸く収まったみたいね。


「私も宇野と結婚させられそうになってるけど、あんまり恨まないでね」


 




「「「「は?」」」」

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