2年生編 第49話
「頼む。もう一度言ってくれ」
余はこいつの言っていることが理解できなかった。
「高橋くんが骨折した?」
「そこではない」
高橋の奴骨を折ってしまったのか。
なぜただのクラス劇の準備で骨を折ってしまうのだ。
「みんな忙しくて?」
「そこでもない」
「王子様役お願い?」
「それだ」
余が王子様役だと?
こんな恥ずかしいこと余がやるわけがない。
「余はやらないからな」
「やらないとかないから。もう決まったことだから」
いや、なぜ決まっているのだ。
「いや、余は絶対にやらないからな」
「もう決定事項なのよ。それにあんたに決定権はないからね」
「あるだろ!余はクラス委員だぞ!」
クラス委員がそんなにも立場が低いのは余は認めないぞ。
「私はこの劇においては一番偉いのよ」
「クラス委員の方が偉いだろ!」
「黙りなさい。あなたに残された選択はこのまま王子様役をやるか、凛さんの面倒を見るかのどっちかよ」
「どちらも地獄ではないか!」
なぜ余に残された選択がその二択なのだ、どちらを選んでも不幸な未来しか見えない。
「他の奴に任せれば良いではないか!なぜ余なのだ」
「みんなは忙しいのよ」
「余も忙しいのだ!あいつとポスターを貼る前はちゃんと仕事をしていたのだ!」
「あ、それならもうみんながフォローしながらちゃんと出来ているわ」
なにちゃんとしてんだよ。
「さぁ、どちらを選ぶの」
なぜこいつはこんなにも余に厳しいのだ。
「余がお前に何をやったと言うのだ!」
「ビンタしたでしょ」
余は思い当たることあるから少し黙ってしまう。
「だが、あれは皆がピリピリしていたからであってだな」
「私には7回やったでしょ」
そうこいつには普段のムカつきと顔がムカついたから思わず7回もビンタをしてしまったのだ。
「まぁ1回も7回も変わらないだろ」
流石に無理のあること言ってしまった。
「そんなこと言うんだね。もう私がどっちか決めるから」
それはマズイ。
「待て。せめて余に決めさせてほしい」
どちらを選んでも地獄なのならまだ地獄になるか分からない方を選ぶしかない。
「王子様役をやってやる」
まだこちらの方は地獄と確定したわけではない。
金髪の面倒を見るのは何も考えなくとも地獄なのは分かっているからな。
「はい。じゃあよろしくね」
くっ、こいつ良い顔しやがって…。
「おい、せめて他のクラスの奴らには余が王子様役をやっていることは絶対に言うなよ」
こんなことがバレたら他の奴らに何を言われるか。
「私は言わないわよ。他のみんなは知らないけど」
そうだ、こいつを口止めしてたところで他の奴らが言うに決まっている。
だが、もういずれかはバレることだから諦めるしかないな。
「もう良い。それよりシンデレラ役は誰なのだ?」
余が王子様役をやるのだから相手役のシンデレラ役が誰なのかが重要になってくる。
「柊野さんよ」
どっちも地獄なのかよ。
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