第63話
さて、弱点克服するための夏休みにするためにボランティアをすると決めたのだが、余が思うボランティアは報酬を目的としないものだ。
「おーい、声出してけよー」
ということで最初のボランティアはバレー部の臨時コーチだ。
「腕だけでいくなー。脚使えー」
「ありがとね、手伝ってもらって」
バレー部の顧問は余の運動神経を知っているから臨時コーチをするのを許してくれた。
「お、おう」
早速お礼を言われたが、なんとか冷静を保てたぞ。
まだまだ慣れていないからな、どんどんお礼されるよう頑張るか。
「宇野くーん。千沙のレシーブのフォーム見てあげて」
「え?」
「よし来い」
「ほら、行っておいで」
「ちょっ、待って」
「良いから早く来い」
余は高宮千沙の手首を掴んで無理やりこっちに来させる。
「分かったから、自分でそっちに行くから」
「そうか」
余は高宮千沙の手首から手を離す。
「ほら、レシーブのフォームをしてみろ」
「いや、私レシーブで困ってないから」
「口答えするな、さっさと構えろ」
本当はな、敵である魔法少女の手を貸すことなんかしたくはないが、今回は余の弱点克服のためだから仕方なくやっている。
「はいはい」
なんだその返事は、こいつは余を完全に舐めているな。
そして高宮千沙はレシーブの構えをとる。
「もう少し腰を低くした方が良いかもしれないな」
高宮千沙の腰を持ち、余の体重をかけて高宮千沙の腰を下げようとする。
「きゃっ」
高宮千沙は悲鳴をあげて余から離れる。
「おい、何をしているのだ」
「そっちこそ何触ってるのよ」
「触らないと教えれないだろ」
「私はもう良いから」
そう言って高宮千沙は練習に戻っていった。
せっかく教えてやろうと思っていたのに。
***
「はーい、10分休憩。ちゃんと水分補給してね」
夏の体育館は本当に暑い、陽は直接当たらないが、風の通りが悪い。
「宇野くん」
ん?見覚えはあるが、名前が分からない奴に話しかけられた。
「お前誰だ?」
「忘れないでよ、井上美咲だよ」
「あーいたな、そんな奴」
「ひどいなぁ」
「で、何の用だ」
「あの時はごめんね、嫌な役させちゃって」
「そんな昔のことは覚えてない」
「そんな経ってないよ」
余にとっては昨日も一年前も過去は過去だ。
「別にお前らのためにやったわけではない」
「それでもありがとう。おかげでちゃんと千沙ちゃんと話し合えたから」
「お、おう」
ふぅ〜もう2回目だ、本当に余は段々と慣れてくるのだろうか?
「それで宇野くんは千沙ちゃんのことどう思ってるの?」
「は?」
「宇野くんも男の子だから千沙ちゃんのことかわいいとか思うでしょ」
「全く思わないな、あんな生意気な奴」
「宇野くんにだけだよあんな態度取るの。千沙ちゃんって素直で良い子なんだよ」
どんだけ余のことが嫌いなのだ。
「私は宇野くんで良かったと思ってるよ」
何がだ?
「もう休憩終わりそうだから行くね」
「ああ」
余ももう一度気を引き締めて頑張るとしますか。
「宇野くーん、千沙のサーブも見てあげて」
「よし、教えてやるからこっち来い」
「もういいって」
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異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました
という作品も書いているのでぜひ見てください。
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