第60話

 ということで今回もいつも通り魔法少女に嵌められて捕らわれた奴を救い出した。


 そして今回も余が救い出した後に魔法少女どもが合体技を出してデカブツを倒す。




 は?


 

 また余は魔法少女どもに騙されてしまった。


 なぜ余は同じ手に引っかかってしまうのだ、自分が自分で情けない。


 もしかして余って騙されやすいのか?


 いや、そんなはずがない、余がそんな単純なはずがない。


 余は誰も信用しないし、信頼しないし、信じない余が騙されやすいわけがない。


 なぜなら余はいずれ王になるのだから。


「あ、宇野くん大丈夫だった?」


 変身を解いた桜井莉緒、高宮千沙、九重菫が余のところへと寄って来た。


「お前らやったな?またやったな」


「な、何のことかな?」


「私も何のことかさっぱり。ね、菫」


「はい。全く分かりません」


 こいつら。


「おーい、大丈夫か?」


 今度はクラスの奴らが余たちに駆け寄ってくる。


「心配したよー、三人が急にどこかに行っちゃうから」


 おい、余はスルーかよ。


「ごめんねー、でも怪人は魔法少女が倒してくれたから、心配はいらないよ」


 魔法少女はお前らなんだがな。


「もしかして魔法少女に会った?」


「いや、私たちは会ってないよ」


「なーんだ」


 いや、お前の目の前にいるんだがな。


 クラスの男の奴が前に出て来て、余に問いかけてくる。


「そんなことより宇野、お前あの怪人と戦ってたよな?」


 どうやら遠くから見られていたらしい。


 見られていたと言うより、あんなデカいやつと戦っていたからかなり目立っていて、見るなって言う方が無理がある。


「そうだが?」


 さも当然かのように答える。


 余がそう答えると周りの奴らがザワザワし始めた。


「え、ちょっと待て。まず、宇野は魔法少女とは知り合いなのか?」

 

 知り合いも何もこいつらだしなぁ。


 知り合いと答えた場合がめんどくさいことになりそうだから知らないていで通そう。


「知り合いではない」


「じゃあ何で戦ってたんだ?」


「あのデカブツとどっちが強いか知りたくなった」


「嘘だろ?」


「本当だ」


 結局余の方が強かったがな。


「宇野って何者なんだ?」


 こいつら余に恐れ慄いているな、普段は余をバカにしているからな、余がどれだけ怖い存在か思い知るがいい。


「うっ」


 そんなことをしていると担任の教師が目を覚ましたようだ。

 

「先生っ」


 何人かの奴らが担任の教師に駆け寄る。


「あれ?私…。そうだった、私怪人化してたんだよね」


 担任の教師は自分の状況を受け入れ、そしてゆっくりと立ち上がる。


「皆さん、すみませんでした」


 担任の教師は生徒の皆に深々と頭を下げる。


「みんながクラス劇のために一生懸命準備していたものをめちゃくちゃにしたのは私です」


「え?」


 クラスの奴らはそれを聞いて困惑している。


 特に九重菫が口に手を覆い隠し、ひどく動揺している。


 まぁ余は知っていたがな。


「本当にすみませんでした。私はもう教師をやる資格はありません。私は責任を取って教師を辞めます。今まですみませんでした」


 担任の教師はまたより深々と頭を下げた。


 辞めると聞いたクラスの奴らはまた困惑して沈黙の時が流れた。


 クラスの奴らは許す許さないで悩んでいるわけではなく、ただただ困っている。


 そんなことは放っておいて、責任を取って辞める?責任から逃げるためだろ。


 上に立つ者としての責任の取り方が全くなってないな。


 別にこいつは教師になりたくてなったわけではない、だから教師を辞めることはこいつにとってそこまでダメージは無い。


 それに迷惑をかけたクラスの奴らがこいつが辞めることでメリットあるのだろうか?いや、無い。


「おい、待て」


 深々と下げていた頭を上げて余を見る。


「お前がやっていることはただ責任から逃げているだけだ。ちゃんと責任を取るつもりならこいつらが立派になって卒業をさすことが本当に責任を取ることだ」


 こいつはなぜ辞めることが責任を取ることだと思っていたのだ。


「それにな」


 そう言って余はマックスのスピードで教室に向かった。


 そして、5秒ぐらいでいっぱい物を抱えて帰ってくる。


「ほら」


 余は抱えていた物を担任の教師の目の前に降ろした。


「あ、俺のラーメン屋のポイントカード」


「私が最近買ったシャツ」


「私の栞もあります」


 の他にも色々な物を持ってきた。


 だが、全て適当に持ってきた物では無い。


「これって私が学級日誌で書いてたやつ」


 そう、余が持ってきたものはこいつが学級日誌で書いていたものをクラスの奴らが参考にした物を持ってきた。


「おい」


 担任の教師は余の方を見る。


「ちゃんと見てるぞ」


 こいつの過去の奴らはこいつの事を見ていなかったが今のクラスの奴らはしっかり見ている。


 まだまだクラスの奴らは子供だからな、大人を見てこいつらは成長をしていく。


「ごめんない……ありがとう」


 なぜ人間はすぐに泣くのだろうか。


「おい、お前ら。今回の件は余が預からせてもらう。文句があるなら余に言ってこい」


 クラス奴らに宣言しておく。


 余のせいで担任の教師は辞めないかもしれないからな、辞めなかった時にこいつらがギャーギャー言うかもしれない、そうなったら辞めさせなかった余に責任があるからな。


 これが余なりの責任の取り方とも言える。


「いつでも言いに……あれ?」


 バタッ


 余は地面に吸い付けられるかのように倒れてしまった。


 流石に二徹はキツかったようだな。


 というか余に過去を見せるなよ、あとは自分でどうにかしろよ、馬鹿野郎。




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 ちなみに栞は押し花のしおりです。


 あと、学級日誌(42話)に書いてあるいつも行っている服屋は、51話の絵の具がかかってしまって最近買ったシャツを持っていた女の子はその服屋で買っています。


 54話で九重が宇野に自慢げに台本に挟んである押し花のしおりの花は、きれいなお花が咲いている場所の花で押し花をしています。


 49話で言っているラーメンはラーメン屋のレビューを見て行っています。


 また気になったら見てみてください。





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 異世界に転生したからチートで無双してモテモテな異世界ライフ! ……って思ってた時もありました

という作品も書いているのでぜひ見てください。

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