第15話
目的の場所には5分もあれば間に合う。
移動手段はもちろん全力で走る、だ。
もう余は人間ではないから人間離れしているという言葉は正しく余に相応しい。なぜなら余は人間ではないからだ。
まぁこれを人間がやったとしたら人間離れという言葉では収まらないだろう。
もちろん軽くだがストレッチはする。
全力を使うのだから余だって疲れたり、怪我をしたりすることだってある。
軽く屈伸を五回して、アキレス腱を伸ばし、軽くジャンプをした。
軽くジャンプして分かったが、今日の余は絶好調だ。もしかしたら3分で着くかもしれないな。
歩道に従って走っていくとかなりのロスが生じてしまうから、家の屋根に乗って、家の屋根と家の屋根を乗り移りながら直線で目的の場所へと向かう。
早速ジャンプして屋根の上へと乗る。当たり前だが地上よりかは走りにくいからバランス力と体幹が求められる。
だが、余にとってはこんなことは朝飯前だ。余はな水の上だって走れるのだぞ。
いや、まだ試した事はないが。だが余にできない事はない。
そんなことはどうだって良い、今にも魔法少女どもが戦っているかもしれないのだから。
よし、それじゃあ行くとするかな。
余は脚に力を込めて大きな一歩を踏み出す。
しまった。余はもう一歩を踏み出そうとしたが途中で踏ん張ってなんとか止まった。
場所ってどこだ?
いや、今桜井莉緒の父親の怪人化が街で暴れている場所は分かるのだが、ここから向かった場合が分からない。
目的の場所が分かっても行くまでの道のりが分からないから車にナビが付いているのだなぁ、と思ってしまう。
余は真っ直ぐに向かうのだから、適当な方角だと過ぎ去って行ってしまう可能性もある。
なんだか面倒くさくなってきたな。
向かうまでに色々ありすぎだろ。
教師に止められて散歩はダメだ、保健室は別に良いだ、色々言われ。
デスゴーンに視覚が使えないように目を塞がれ、しかも脅迫され。
そして、今、目的の場所は分かったが、行くまでのルートが分からない。
もうちょっとスマートに行けたらなぁ。
いや、こんなところで諦めるな余よ、余が目指すところは楽な道ではない。
どんなことでも楽な道などないのだから。
名言っぽくなってしまったがただ余が諦めっぽい性格なだけである。
まぁ余が発すればどんな言葉だって名言になってしまうがな。
またどうでも良いことを考えてしまっていた。
さてと、どうすれば良いのだろうか、嫌だが人間に聞くしかないな。
あ!携帯があるではないか。
この地球で生きる為には携帯が必要だと聞いたことがあったから買ってみたが、まだ時間の確認と目覚まししか使っていない。
だから今のところ小さい目覚まし時計を持ち歩いているのと同じだ。
だが、今日使う日が来るとはな、持っていて良かったと思う。
で、これってどうやって使うのだ?
何かあぷり?いうやつを使えば良いのだろうか?
ど、ど、どのあぷりを押せば正解なのだ?
使わないのにいらないあぷりが多すぎるからどれ押せば良いのか分からない。
この携帯は便利なものなのだろう?聞いていた話とは違うではないか。
もうすでに心は折れかけてはいるが、今日はそうは言ってはいられない。
はぁ〜、もう黙って人間に聞くことにするか。
周りに人間がいるか見渡すと年寄りが一人で歩いていた。
あいつでいいか。
「おい、そこのお前」
「ん?どうしたの?」
「余はあのすごいでかい看板のある所に行きたいのだが、どこにある」
「今そこはなんか大騒ぎになっているから行かない方がいいよ」
「大丈夫だ、知っていて行きたいだ」
「やめておいた方がいいよ、危ないよ」
む、中々しつこいな。
「心配するな、余は強いから」
「わざわざ若い子を危ないところへ行かすわけには行かないよ」
「急いでいるんだ、どこだ」
お前が行くわけではないのだぞ、なぜそんな頑なに教えない。
「分かったよ、あそこだよ」
そして、年寄りは目的の場所であろうところへ指を指した。
「悪いな」
場所が分かればあとは真っ直ぐ進むだけだ。
「ちょっと待ちな」
家の屋根に飛び乗ろうとしたが年寄りに止められてしまった。
「なんだ、余は急いでいるのだ」
「これ持っていきな」
そう言って年寄りはお守りを余に渡してきた。
「年寄りだからこれしかできないけど」
なぜ他人の余に気をかける?
しかも今日会っただけなのに。
「分かった、持っていく。じゃあな」
余は急いで目的の場所へ移動し始める。
今度こそ待っていろ魔法少女。
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