第28話 リアのお願い聞いてくれるよね?

 「まぁそれなりに気を付けるようにするがあいつもそろそろ思春期に入るだろうし、そしたら臣の方から俺を避けるだろうさ」


 三人が納得したのかしないのか沈黙していると。


 「お待たせ」


 後ろから臣が声をかけてきた。


 「何話していたの?」


 場の雰囲気を感じてか聞いてくる。


 「今後の活動についてだよ」


 軽く流す。


 「よし、それでは帰るぞ」


 全員車に乗るのを確認し出発する、その際臣が昨日の夜直ぐ寝てしまい、あまり話せなかったので帰りは助手席に座ると言って運転している俺の隣りに来る。


 直ぐ後ろに心、彗夏、伊莉愛が並んで座っているのだが、気のせいだろうか後頭部や背中がチクチクと視線を感じる、屈託のない臣の話を聞きながら轟和荘へと車を走らせた。



 キャンプ場を出て途中、道の駅で食事を済ませ昼過ぎの1時前に轟和荘に到着した。


 社長とリルが出迎えてくれる、事務所内、キャンプ場での話で盛り上がる。

 

 「合宿お疲れ様、ケーキ作ったんだ、食べて食べて」


 リルが手作りのケーキを4人に振る舞う。


 皆美味しそうに食べている、伊莉愛に至っては泣きながら、


 「リルさんの手から生み出されたケーキを食べることが出来るなんてありがたや~ありがたや~」


 という始末、一時間程お茶を楽しんだ後、社長が真面目な顔をして。


 「再来月にレコーディング、8月にサードシングルを発売となるのでそれまで気を引き締めて行動するように」


 4人に声をかける、皆頷き自身のある表情をしている。



 「近々新曲の音源を各自に渡すよ、では今日はこれで解散、次は日曜に集合だな」


 俺がそう言うと皆それぞれ家に帰る支度をする、用を足しに事務所を出たところ一人近づいてきて後で相談したいことがあるので時間を作って欲しいと言ってきた、これから社長とミーティングやスケジュール管理などもあるから夕方になるが良いのかと聞くとそれでも構わないとの事なので承諾した。



 俺とリルは玄関先で4人を見送り再び事務所に戻る。


 「合宿の成果は出たようだな」


 「4人の表情が自信に満ち溢れていたね」


 社長とリルが4人の変化に気付いたようだ。


 「そうですね、元々個々の力はあるやつらですから、合同レッスンや一緒に行動、寝食共に過ごしたことでグループとして力が付いたと思いますよ」


 「私の方も良い曲が書けた、今回は上手くいくと思うぞ」


 前も同じようなこと言っていた気がするがそこはスルーして。


 「はい、成功しましょう」


 その後合宿での報告書や4人に書かせたノートを社長、リルに渡し俺も解放された、轟和荘二階の五号室、部屋に戻り一息つく、今朝早かったせいか少し眠い、うとうとしてきたので布団を敷き軽く仮眠を取ることにした。


 コンコン、コンコン。


 ドアをノックする音が聞こえる、どの位寝ただろう、気付いたら時計の針が夕方の5時を指していた。


 コンコン、コンコン、と再度ドアをノックする音が鳴る、ハイと返事する。


 「お兄ちゃん、入るよ」


 俺は立ち上がりノブに手をかけドアを開ける、目の前にはすらっとした足の長さが際立つ身長170㎝ちょいのポニーテール頭、解くと腰までありそうな長い髪の美少女が立っていた。


 「まぁ入れよ」

 

 「失礼しま~す」


 美少女は布団が敷いてあるのに気付く。


 「さっきまで寝ていたの?」


 「昨日あまり寝ていなくてな、二時間以上運転していたこともあって疲れてさ」


 「お兄ちゃんも今回の合宿大変だったよね、お疲れ様でした~」


 「お前達ほどではないさ、リアもお疲れ様」


 そう言って美少女の頭を撫でてやる、えへへへへと照れて喜んでいる。


 「ところで話があるんだよな? 何なの?」


 「あっそうだった! キャンプ場を出る時お兄ちゃん言っていたよね? 臣ちゃんは妹の様な存在だって、どういう事? 妹は私だけって言ってくれたよね? すごくショックだった」


 「あの場はああでも言わないと心も彗夏も納得しなかったからだよ、本心じゃないって」


 「妹は私だけって信じて良いんだよね、お兄ちゃん」


 「ああ、妹はリア、お前だけだ」


 「良かった~、じゃあ一緒に寝てくれる?」


 「はぁ? 何故そうなる」


 「せっかく布団が敷いているんだし良いじゃないの~」


 「全然良くないよ」


 「臣ちゃんは良くて何で私は駄目なの~?」


 「だから臣は妹の様な存在って・・」


 やばっ、つい口走ってしまった。


 美少女は俺を睨み


 「やっぱりお兄ちゃんは私の事妹と思っていないんだ、だから一緒に寝てくれないんでしょ? あの時言ってくれたことは嘘だったんだ」


 「そうじゃないって、嘘じゃない、リアの事大切に思っているのは間違いないんだ・・ふがいない・・・・兄でごめんな」


 下を向きうつむくと美少女は自分も言い過ぎたと謝ってくる。


 「私はお兄ちゃんの妹として添い寝して欲しいだけ、臣ちゃんにしたように私にもして欲しいな~」


 美少女・・・・、もうお分かりだろうが出雲伊莉愛いずもいりあが顔を近づけてくる、何故伊莉愛が俺をお兄ちゃんと呼ぶようになったのか、そのいきさつを話そう、言っておくが俺が呼ばせているんじゃないからな! そこは先に伝えておく。

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