虎蝶記 戦国色恋絵巻 駒姫はまだ生娘である!

葉城野新八

登場人物紹介

◇駒姫

下川家の一人娘であったが上山家に滅ぼされてしまったため、15歳にして上山弾正の側室となる。

嫁入りの教育を十分に受けていなかったので姫としての嗜みがなく、男女の関係についての勘違いや思い込みが多い。

母方から甲斐武田の血を引くゆえか、時として天性の大局観を発揮する。子供のころから囲碁がめっぽう強い。

家を滅ぼした仇敵であり義理の息子ともいえる虎清に、直感的に惹かれてしまうのだが……


◆上山虎清

上山弾正の嫡子。子供のころから武者として英才教育を受け、下川家との決戦では騎馬武者軍団の清虎衆を率いて才能を開花させた。

家臣や妹の麗には優しく接しているが、戦場の敵に対しては容赦がない一面もある。

母方から織田庶流の血を引き、時代の寵児織田信長に憧れを抱いている。

股間に大業物を持つ。房曰く、「滝を遡上して青天を衝くしゃちほこ」。

戦場で見た駒姫の姿に母を重ね、ひそかに親愛の情を抱く……


◇房

萌賀流兵法四百年の歴史を受け継ぐ萌賀家の娘。駒姫が上山家へ入ってからは女中兼護衛役として身の周りの世話をしている。

父の萌賀歳三に似て下川家に忠義を示すが、ときとして冷酷非道にもなる。

最初は虎清を仇と認識していたが、真相を知ってから次第に態度がかわってゆく……


◇麗姫

虎清と同じ母から生まれた実妹。だが兄のことがとても大好きで時に暴走する。

京都へ花嫁修業のため留学していたが帰ってきたところ、駒姫がいたので敵愾心を燃やしはじめる。

裸にならないと眠れない性分であるが、それには深い理由と過去が……


◆芥溜孫六

通称「ジイ」。虎清の守役。

かつては「京堂の雷六」と渾名される無双の荒武者だったが、ある日を堺に楽隠居となって上山家に仕える。

日頃はとてもやさしい好々爺であるが、ひとたび事が起これば今もなお激しい内実を発揮する。

とりわけ房に対して、特別な思いを抱いているのだが……


◇多江

微付きの女中として織田家から来た。現在は麗に付き従っている。

いつも気配なく静かにしているが、麗の命を忠実に実行する。謎の多い女性。


◆鈴木重秀

通称鈴木孫市。

雑賀鉄砲衆を率いて信長と対立する一向衆の大坂本願寺城へ入城。

信長を討ち取るべく執念を燃やし、天王寺砦の戦において虎清と会戦する。


◆今井宗久

各方面に深い人脈をもつ茶人であり、武具や鉄砲まで扱う商人であり、さらに銀山まで所有する富豪でもある。

堺の顔役的な存在として信長の信頼も厚い。


◆上山弾正

上山家九代当主。「好色の麒麟児」の異名を近隣に馳せるほどの好色家。

武家当主として文武の才が皆無であるため、上山家中の家臣たちからはことごとく侮られている。

正室の微とはひどく不仲であったため、虎清への嫌悪を隠さない。

目下、駒姫との初夜を心から楽しみにしている。


◇微

虎清と麗の母であり、上山家の正室。

織田庶流家から上山家へ嫁いだが、虎清が六歳の頃に病で亡くなった。

いつも毅然とした女性で「頭領たる者、気高く戦い、慈悲深くあれ」と説き、怨念を暴走させた孫六をも導いた逸話がある。


◆織田信長

天下静謐を掲げて邁進する時代の寵児。

虎清が憧れを抱く人物であるが、余人は「第六天魔王」として畏怖する。

時代を見抜く先見性と、卓越した武勇を備えた武家中の武家ともいえる男。

信長と邂逅を果たした虎清は、新時代の強烈な風を浴び、武家男子が歩むべき道の啓示を受ける……

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