第341話 収穫
俺達の担当を決めて開拓すること一カ月。
それぞれの地域にアンドロイドメイドと超古代文明の技術を借りて四つの家を建て、植生を変え、季節にあった動物を連れてきて放ち、レジャー施設を整えたりしながら、俺はキースと冬の野菜や果物を育てていた。
野菜や果物は超古代文明の技術による品種改良によって収穫までの時間やサイクルが大幅に縮められている。
ただ、一日や二日で収穫できてしまっては、全く農業をしているという実感が湧かないし、毎日ポンポン収穫するとなると大変なので、一カ月周期程度で収穫できるようにしてもらった。
そして今日がその収穫の日だ。
「よーし、キース。収穫するぞ」
「おー!!」
俺とキースは早速育てた野菜の収穫を始めるために畑に移動する。
「お前たちはのんびり収穫を始めてくれ」
『承知しました』
ゴーレムたちに指示を出して俺達は早速収穫を始めた。
ゴーレムたちが普通に収穫すると、優秀過ぎてあっという間に終わってしまい、俺達が収穫の喜びを味わう前に終わってしまうのでゆっくりと作業をさせる。
「よーし、俺はこっちの畝をやるから、キースはそっちな」
「分かった!!」
俺達は早速かぶを植えた区域に行って一緒に並んでカブを引っこ抜く。
「ぬぐぐぐぐぐっ」
キースが隣で力いっぱい引っ張っているけど、中々抜けないらしい。
「むっ」
俺が軽く力を入れてもしぶとく抜けようとしないカブ。
かなりしぶといぞこのカブ。一体どうなってんだ!?
「ふんぬぅうううううううううう!!」
キースは本気で力を入れ、カブの茎と葉を両手で握り、足を起点として、仰け反るようにして力を入れた。
―ズボッ
「いて!?」
しぶとく土にしがみついていたカブが抜ける。しかし、あまりの勢いにキースは地面に頭を打ち付けてしまった。
「大丈夫か?」
「いてて……。でも、ちょっと頭を打っただけだから問題ないぞ」
俺はひっくり返ったキースの元に掛けて付けて抱き起すと、彼は頭を撫でながら痛みを堪えるような表情をしていた。
これは机の角に足の小指をぶつけた直後みたいな状態だな。
その推測が正しかったことを証明するようにキースの顔から痛みを堪えるような表情が消える。
「大丈夫そうだな」
「うん。それよりもカブは?」
俺の言葉に同意すると、キースは辺りを見回しカブを探す。しかし、カブとはあまりにかけ離れていたため、俺達はしばらく見逃していた。
「なんじゃこりゃぁああああああああああ」
暫くしてようやくその白い物体がカブであることに気付いた俺達。それはカブと言っていいのか分からない程に巨大で、抱えてようやく持てるような大きさだった。
確かイヴと品種改良したものはこれほど巨大になるようにはしなかったはずだ。それにもかかわらず、目の前にあるのは想定を超えて育った野菜。
一体どうしてこうなった!?
『通常の土で普通に育つように品種改良した種が、ちょう高純度の栄養を含んだ超上質な土で育った結果だと推測されます』
俺の疑問に答えるようにしれっとバレッタが俺の思考に割り込んできた。
なるほどそれでか。それでようやく理解できた。
品種改良と超上質な土を掛け合わせた結果、とんでもなく育ってしまったということらしい。
心配なのは大きく育ったせいで味が大味になってしまっていることだ。
―ガリッ
俺はすぐにカブを水洗いして、かじりついた。
「……」
「俺も!!」
無言で咀嚼する俺に待ちきれなくなったキースが、俺が抱えているカブに齧り付いた。
「なんだこれ!!肉には劣るけどウメー!!」
その途端、キースは目を見開いて喜んだ。しかし相変わらずの肉好きは変わらないようで安心した。
キースの言う通り、大きくなったというのに大味にならず、本来の大きさでの美味しさをキープしたまま巨大になった感じだった。その味がまたカブの持つ自然の甘みが口いっぱいに広がって、生だというのに口が止まらない程だ。
『ゲフッ』
俺達はあまりの美味さに二人で一抱えもあるカブを平らげてしまった。二人で腹をぽっこりとさせてげっぷをするのであった。
「しっかし、こんなに食べたら、肉が食べられないんじゃないか?キース」
「おっちゃん何言ってんだよ!!肉は別腹に決まってんだろ!!」
俺がお肉大好きなキースに意地悪するように尋ねたら、キースはさも当然と言った感じで答えた。
流石キース全くブレない。
俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「ふぅ。そろそろいい頃合いか……」
「おっちゃん。腹減ったから肉くれ~」
それから俺達はお昼まで収穫を行い、キースがさっき食べたカブなんて全部消化したと言わんばかりに俺に縋りつく。
カブを収穫した俺達は他の野菜を見に行くと、案の定そっちも巨大化していて、何度も驚く羽目になった。
フルーツはまだ収穫していないが、遠くから見る限り物凄く太い木が沢山そびえたっていたし、遠目で見えるくらいの大きさのフルーツがなっていたので、おそらくそういうことなのだろう。
「分かった分かった。皆と合流してからだ」
「早く合流しようぜ」
収穫を終え、後はゴーレムたちに任せて、俺達は皆と合流するために冬の家に向かった。俺達は建てた家をローテーションして使い、今日は冬の家の番だ。
俺はキースに引っ張られるようにして家に向かって歩き出した。
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