第248話 新居で迎える朝

「ふわぁ、朝か」

「zzz……」


 俺がふと目を覚ますと、カーテンの隙間から外からの陽射しが少し漏れていた。リンネは疲れ果てて横で静かな寝息を立てて深い眠りに落ちている。


 昨日は一階から全フロアを見学させたため精神的に疲れてしまった。


 終始バレッタのカンペを見ながらの説明をしていたが、リンネの純粋な曇りなき眼で次の説明を期待されると、最後まで断ることが出来なかった。


 そしてご飯を食べて、お酒を飲んで気分がさらに良くなったリンネは、俺をベッドに引き込むと、いつも初心な様子とは打って変わって獰猛な肉食獣の如き妖艶な表情で俺を押し倒し、舌なめずりをして襲い掛かってきた。


 その日の盛りはいつまでも衰えることを知らず、英霊の園の修行で使った部屋の時の流れを非常にゆっくりにする機能を作動させ、リンネが満足して落ちるまで相手をさせられることになった。


 正直十五回から先は数えていない。


 俺の体は常に最高の状態を保たれているので、常にマックスの量が射出される。そのせいでリンネの中はたぷんたぷんになっていたのだが、彼女が止まる気配はなかった。


 リンネは色々混じっていると言っていたので、もしかしたら発情期のある獣人の系列のどこかの種族の人間が混じっているのかもしれない。あれは人間の性欲を明らかに逸脱していた。サキュバスが混じっていると言われても驚かないぞ。


 いつもと違ったリンネも新鮮で俺も楽しんだことだし、セックスで精神的ストレスを感じることはなかったのでまぁいいとしよう。


「さて、SSSランクにはなった。土地を購入して家も建てた。お次は商売かな」


 俺は次に実現したいことを考える。


 やはり有り余る金銭が現在の時点であるとは言え、継続的にお金が入ってくる仕組み作りは大切だと思う。


「今日はチョンマルの所に行って今度は店舗を紹介してもらおう。それが無理ならまた自分で造ればいいしな」


 独り言ちながら天井を眺めていると、


「ケンゴおはよう、ちゅ」


 眠気眼でぼんやりこちらを見ながら話しかけてきて、俺に抱きついて寝起きのキスを押し付ける。


「なんだなんだ?今日はどうしたんだ?」

「べ、別になんでもないわよ、ただ、ちょっとしたくなっただけ」


 ひとしきり満足するまで続けた後、お互いの顔を離し、しばらくリンネの顔を見ていると、恥ずかしがったかのか彼女はそっぽを向いてしまう。


 普段あまり自分からしてこないので、ちょっと雰囲気が違うリンネに尋ねるが、俺の腕の中で明後日方向をむいて中身のない言い訳をする彼女。


 昨日の余韻が残っていたのかもしれないな……。

 ホント今まで一番すごかったからな。

 その影響が一度眠って起きた後まで続いていてもおかしくはないくらいに。


 無理して何が起こったのか無理に聞き出すつもりはない。


「ふーん、それは分かった。俺は今日はまた商業ギルドまで行くつもりだけど、リンネはどうする?」

「私はSSランクの依頼をクリアしたし、しばらくはこの家でのんびりするわ。もっとこの家の中を見て回りたいし」

「そ、そうか分かった」


 リンネに予定を尋ねると、今日も家の中を探検する腹積もりらしく、その表情は恍惚を表していて、俺は若干引きながら返事をして出かける準備を始めた。


 準備を終えて玄関に降りると、そこにはリンネが待っていた。


 もはやビルみたいな家なのに物凄い広い一階の玄関で靴を脱ぐ日本スタイルは変わらずに、俺は靴を履いてリンネの方に向き直る。


「最近色々やってるみたいだけど、無理はしないでよね」

「無理なんかしてないさ。やりたいことをやってるだけだ」

「なら、いいんだけどね」

「はははは、俺は本当に元気だから心配するな」


 なんだか俺が最近色々考やってることで心配させてしまったみたいだ。


 俺は出来る限りの笑顔で笑い飛ばす。


「わかったわ。いってらっしゃい!!あなたに限って何もないとは思うけど、気を付けてね」

「あぁ、行ってきます。リンネもはしゃぎ過ぎないようにな!!」

「そんなことしない……わよ、多分。それよりも……ん」


 自信なさそうに言いながらそっぽを向いたリンネだが、すぐに思い直して俺に向かって手を広げて迎え入れる準備万端の姿勢をとった。


 つまりはそういうことだ。


「分かったよ」


 俺たちは家が出来る前とは逆の立場でなって、少しリンネを見上げるのに新鮮味を感じつつ、抱き合っていってらっしゃいのキスを交わした。


 ああ、なんだろう、心が今幸せだと叫んでいる。これが俺が求めていた生活なんだろうな。


 これからもこんな生活を続けるために頑張ろう。


 俺はそんな気持ちを抱えて商業ギルドへと向かった。

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