第134話 船上パーリー
そろそろ昼時か。仕方ねぇなぁ。
せっかくクラーケンを倒したことだし、ここはパァっといきますか!!
「おいお前ら手伝え!!これから宴だ!!」
『は?』
俺の唐突な提案に護衛達は間抜けな顔を見せた。
「宴だよ。宴。戦いの後は宴って決まってるだろ?」
『うぉおおおおおおおおおおおお!!』
口の端を吊り上げて再度説明すると、ようやく理解が追い付いたのか護衛達が腕を突き上げて叫んだ。
クラーケンを倒したのでその祝勝会として宴を始めようというのだ。やっぱり戦いの後は宴だよな。
食材はもちろん今取ったばかりの新鮮なイカだ!!
「っと、勝手に決めてしまったがよかったか?」
俺はちょうど客室から戻ってきたガストンに振り返って確認をとる。
「まぁいいだろう。護衛に支障が出ないよう羽目を外し過ぎるなよ!!」
『了解!!』
ガストンが仕方ないなぁと呆れたように両手を上げて顔を振って許可を出すと、護衛達はとても爽やかな笑顔で返事をした。
こいつら絶対守る気ないだろ!!
全くしょうがないな。
「まぁこいつらがダメになったら責任をもって俺が護衛するから心配すんな」
「さっすが兄貴!!男の中の男!!」
「調子よすぎだろ」
最初に俺に突っかかってきた男が囃し立てるように騒いだ。処置無しとガストンと同じように首を振った。
「あ、食材なんだけど、クラーケンだからよろしく!!」
イカ尽くし楽しみだなぁ!!
『え?』
俺がイカ料理に思いを馳せると意味が分からないという顔をしてその場にいた俺たち以外の人間がとぼけた顔をした。
ん?一体どういう反応なんだ?
「あの……クラーケン食べるんすか?」
恐る恐ると言った感じで問いかけてくる舎弟その一。
「そういったが?」
「あのウネウネヌメヌメした奴を?」
「そう、あのウネウネヌメヌメした奴を」
「あのデカくて気持ち悪い奴を?」
「そう、あのデカくて気持ち悪い奴を」
何度かやり取りをした後、その場を沈黙を支配する。
「いやいやいや、あんなの食べれるわけないですって!!めっちゃ気持ち悪じゃないっすか!!」
舎弟その一は慌てたように体の前で両手を振ってクラーケンを拒否した。
なんだと!?
「ほほう!!俺に喧嘩を売るってか。買ってやろうじゃねぇか!!おめぇにはぜってぇ食わせてやんねぇからな!!」
「うっす!!それでいいっす!!」
俺が凄むと、護衛達は怯えるように直立して敬礼して答えた。
なぜに敬礼?
まぁそんなことはいいか。
「他に食べたくない奴はいるか?」
俺が問いかけると、俺達以外の全員が手を挙げた。
はぁ!?全員あのイカを食べないだとぉ!!
確かにイカ焼きとか町に売ってなかったけどよぉ!!
全くこいつら人生の半分を損してやがる!!
食べなかったことを後悔させてやる!!
「お前らには絶対分けてやんねぇからな!!」
「うっす!!」
安堵したような表情で返事をした舎弟護衛達。
「仕方ねぇから酒だけは出してやる。感謝しろよ!!」
「兄貴あざーっす!!」
俺は倉庫から樽の安酒を出してやると、舎弟たちが一斉に頭をさげた後、自分たちで酒を分け始めて勝手に酒盛りを始めた。
もうお前たちなんて知らん!!
「はぁ……んじゃ俺たちも飲むか」
「ええ」
一度ため息を吐いて、リンネと顔を見合わせた後、イナホとカエデや子供たちと合流して焼肉屋のように役部分が付いたテーブルと、椅子を取り出した。皆が椅子に腰かけると、俺が思い描いた通りにバレッタが捌いたり、調理してくれたイカをテーブルの上に乗せた。
イカの天ぷら、イカ飯、イカ入りカレー、イカ墨パスタ、イカ刺し、イカのピリ辛炒め、イカの握りずしなどなど様々な料理が並んでいる。それに加えて取れたてのイカを直接炙って食べられる。
うほぉ!!美味そう!!
辺りに料理のいい匂いが漂う。
―ゴクリッ
どこからか喉の鳴る音が聞こえた気がしたが、俺たちはインフィレーネの結界で俺達を覆って『いただきます!!』と宴を始めた。
控えめに言って美味かった!!
俺たちがイカ料理を食い終わった頃には結界の障壁に張り付いている多数の人間が目に入ったとか入らないとか。
俺たちが知るのはほんの少し先である。
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