3秒で考えた話

夜橋拳

このマラカスで殴り殺すぞ

 「おい」

 「なんよ」

 「俺ら軽音部よな」

 「おん」

 「部費貰ったよな。結構一杯」

 「おん」

 「お前ギター二本買ったな」

 「おん」

 ギターボーカルだからな、とこいつは言う。

 「なんでドラムがねえんだよ」

 「金がねえんだよ」

 「てめえがアコースティックとエレキ買い揃えちゃったからな」

 「おん」

 「お前もだ。何知らんぷりしてんだよ。なんでベース三本も買ってんだよ殺すぞ」

 ベーシストのこいつは得意げに言う。

 「二本は元々俺のだ」

 「新しいの買ってんじゃねえよ」

 「めんご」

 「ったく、どうすんだよドラム。俺だけ学園祭手拍子かよ」

 「それでな、これドンキに売ってたから」

 ギターボーカルから二本のマラカスを差し出された。

 「これでリズムとれってか」

 「おん」

 「しばくぞ」


 その日、軽音部は滅んだ。

 2人とも、まさかマラカスが鈍器になるとは思っていなかったようだ。

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