第28話 それは古びた宝箱
体勢を崩した俺にも容赦しない、そいつは何本もの
反撃の体勢を整える間もなく、体力を削り取られて行く俺。
見える範囲では、古びた宝箱から昆虫の節足が幾つも生えているような敵である。本体はどうやら、あの宝箱の中に隠れているっぽい……ズルいな、それじゃ手出しが出来ない。
魔法でもあれば、直接箱の中へと撃ち込めるかもだけど。それ以外だと、攻撃の手段が極端に狭まってしまうような……多様に伸びる節足を攻撃すべき?
それ位しか、反撃の方法が思い付かない。
盾を取り出して片膝立ちになるまで、2割のHPを持って行かれた。《Dタッチ》をお返しに飛ばしたが、効き目はイマイチ。暗闇状態にもならないようで、元気そのものな箱型モンスター。
腹が立って仕方が無いが、ここは慎重に考えを巡らせて。コイツ相手に短槍で突き合戦を挑むのは少々分が悪い。箱の部分を突いても、恐らくダメージにはならない筈。
だとしたら、やはり蟹のような節足を
それも良いが、こいつの怖い所は長く伸びる節足の連続突き攻撃だ。これを前にして盾を仕舞うのはとても勇気がいる……などと思ってたら、酷い多段攻撃がやって来た。
その名も《四段突き》と言って、盾越しにも凄い衝撃が!
いやいや、無理ムリ……盾を外して両手武器なんて自殺行為ですよ、ハイ。既に体力半減てナニ!? こっちはまだ、ろくに攻撃を仕掛けてないってのに。
取り敢えずは短槍に《風属性付与》を掛けて、焦らずじっくり殴り合いだ。いやいや、敵の攻撃は丁寧にブロックして、こっちの攻撃は箱以外の場所に命中させて。
ところがコイツ、こちらの攻撃に興が乗り始めると箱を閉じてしまう!
物凄く腹が立つ! 何とか《落とし突き》で節足を掻い潜って、本体に攻撃を命中させられないモノか。もう少しリーチが欲しいな、でも持ってるのは短槍だしなぁ。
それでも付与魔法の恩恵は素晴らしい、敵のHPは段々と減って行っている。無理して、難しい位置の本体を責める必要も無いかなと考えていたら、敵にも回復技があった様子で。
しかも《体力吸収》って……ヤバい、さっきからこっちは回復してないのに!
焦って周囲を確認したら、ファーがブンブンと小さな手を振って、ここにポーション
つまり何度かの試行錯誤の末、俺達は素晴らしい発見に至ったのだ。つまりはファーの鞄にも、ポーション瓶が丸ごと入るのが分かったので。
戦闘でヤバくなったら、目立つ場所に置いてくれと。
瓶の蓋も彼女はちゃんと開けられる、少々時間はかかるけどね。ペットボトルのような捻り型の蓋でなくコルク式なのが、微妙に有り難い仕様だったりして。
とにかくナイスタイミング、俺はそこまでダッシュして一気にそれを飲み干す。
ってか、妖精が陣取っていたのはもう1つの宝箱の上だった。うん、これ以上目立つ場所は無いな、お手柄だぞとファーをひとしきり褒めそやして。
体力も安全圏まで回復して、さて反撃だと相手に身体ごと向き直る。その視界の先で、ミミックNMもヤル気満々のファイティングポーズ。
こちらの《捻り突き》に合わせて、向こうも新技を披露。派手に泡が立ち上って視界を奪われる、《バブルシャワー》と言う特殊技で反撃された模様。
うわっ、視界が遮られる上に何か滑る……
でもまぁ、あの極悪な多段スキル技でなくて良かったと言う思いも胸中に。盾の防御に失敗したら、マジで一撃死の可能性すらある怖い技なのだ。
下手に長引かせたくない戦闘には違いなく、やっぱりチマチマ削るのは愚策かな。しかし一気に削るにしても、コイツは形勢が悪くなると、宝箱と言う殻に閉じこもる技も持ってるし。
……そうだ、それならばそれを逆に利用出来ないかな?
咄嗟に思い付いた仕掛けだが、上手く行くかは全くの不明。ギャンブル的な勝負に出るのは、ハッキリ言って不安である。だけど胸中の心配をよそに、身体は動き出していた。
回復し切れなかった分を《Dタッチ》でちょこっと拝借、敵は僅かに身じろぎしただけで嫌がる素振りも見せず。逆に大技のモーションに入った模様、こちらも盾を前に突進して行き。
《四段突き》と《落とし突き》の、派手な突き技が空間を支配する。
圧倒的に分が悪いのは分かっていた、って言うかちょっとでも回復を上乗せしてて良かった! 体力は残り1割まで激減、だけど突進の勢いで完全に奴の上部を取れた。
ちょっとした走り高跳びの要領だ、今は槍を手放して両手でミミックの箱の蓋に貼り付いている所。相手はこちらを視認出来ないのか、変な節足の動きの末に再び蓋を閉じようとしているけど。
手放した短槍は、箱がきっちり閉じるのを防いでくれている。今がチャンス、ここぞとばかりにベルトのポーチからありったけの水晶玉を取り出して。
僅かに開いている隙間へと、一気に贅沢に投げ込んでやる!
ついでに大猪の牙の短槍を引き抜くと、ミミックは律儀に箱を完全に閉じてしまった。そして真下から突き上げる衝撃と、くぐもった間抜けな爆発音。
哀れなミミックNMは、そのまま
ドロップとスキルPの入手の告知が、それを知らせてくれて。やったね、割と格上っぽかったけど、何とか倒せてよかったよ。スキル4Pと、しかもレベルアップのオマケ付き。
今夜もレベルアップ2つか、調子は良いって事で……またスキルP余って来たな、何に使うか考えなきゃ。そしてドロップ結果を知って、暫くの間悶絶する破目に。
《四段突き》のスキル技が出たよ! だけど長槍スキルなんだよ!!
くっ、悔し過ぎる……どこかで短槍の四段突きと交換出来ないかな? 無理かぁ、くそ~~っ! 仕方ない、他の報酬を眺めて心を
ミミックは流石に宝箱NMだっただけはあった、他にも冒険スキル《隠密》に金のメダル×3枚、更にはガチャ券×2枚に水の水晶玉×4個、魔石(小)にポーション(中)×4本。
後は宝石各種に、現金が8500モネーほど。
NMにしては豪華なドロップ、更には隣に本物の宝箱もあると言う。この中身は、普通に開けてゲット出来た。装備では護りの腕輪《硬化》と庭師のエプロン。
武器では枝切り
どうやらこの遺跡は、そっち関連の研究所だったらしい。
当たりの報酬は、『皆伝の書:補正』と『魔法の銀葉』の2つだろうか。皆伝の書は、前に武器スキルのスロットが増える奴を貰ったけど。こちらは補正スキルのスロット増らしい。
普通に嬉しいけど、初見の魔法の銀葉もなかなかの優れもの。こちらはMPの上限アップアイテムらしい、魔法の所有数も増えたし丁度良い感じかも。
これで俺のアバターも、増々隙が無くなって来たな。
名前:ヤスケ 初心者Lv12 種族:ミックスB
筋力 24 体力 29 HP 108(+11)
器用 26 敏捷 24(+2) MP 87
知力 20 精神 19(-4) SP 75
幸運 16(+10)魅力 7(+1) スタミナ**
職業(1):『新米冒険者』Lv12
武器(4):《ブン回し》《落とし突き》《撃ち上げ花火》《捻り突き》
補正(4):《投擲威力20%up》《》《》《》
武器:弓矢1P
:短剣1P
:短槍8P《落とし突き》
:片手棍1P
:両手棍8P《ブン回し》《撃ち上げ花火》
:盾1P
:投擲4P《投擲威力20%up》
魔法:『闇』5P《Dタッチ》
:『風』8P《風の茨》《風属性付与》
:『光』4P《フラッシュ》
種族:『ミックスB』(幸運+2、魅力-1)
称号:『蝶舞』『猪突』
モネー:36、400
スキルP:19
***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***
武器 :大猪の牙の木槍(4) 攻+5
武器2:粗末な木の棍棒(4) 攻+4(両手時+6)
予備 :研ぎ直した粗末な石斧 耐久3、攻+4(投擲可)
盾 :護衛の盾(5) 防+5
頭 :犬獣人の兜(4) 防+3
上着 :質素な狼皮ベスト(5) 防+5
下着 :クールな下着(5) 防+1、耐寒+20%up
アクセ:幸運の御守り(2) 防+1、幸運+2
指輪1:耐魔の指輪(2) 耐魔20%
指輪2:契約の指輪(-) 従者+3
腕 :護りの腕輪(-) 防+0、《硬化》
ベルト:革の幅広ベルト(7) 防+5、ポーチ×4
下肢 :疾風のズボン(8) 防+7、敏捷+2
靴 :旅人の靴(12) 防+5、スタミナ減‐20%up
背中 :海賊のマント(8) 防+7、敵対+2、魅力-2
従者:妖精Lv1 幸運+6、魅力+4、精神-4
鞄:魔法の鞄(初心者用)+商人の鞄
アイテム:ポーション(大)×2、ポーション(中)×6、ポーション(小)×16
:マナポ(中)、マナポ×6、毒消し×4、マナP×3、Sポ×7
:雷、水、土、炎×2の術書、潤いの蜂蜜×7、闇の秘酒×3
:虹色の果実×4、魔石(小)×8、魔石(中)、海賊のサーベル《隠密》
:料理キット、冒険者セット《地図形成》《水中呼吸》蟷螂の大鎌
:
:魔除けの香炉、金のメダル×6『初級海賊』薬品箱、松脂1瓶
:剣術指南書、巨大な大腿骨《キャノンB》幽霊の呼び水、
:闇の契約書、探索のコンパス、飛竜の血、闇蝙蝠の牙、闇蝙蝠の皮膜
:旅人のマント、護衛の刀、庭師のエプロン《四段突き》《秋波斬り》
:錆びれた胸当て、護衛の弓、骨の鋭利なナイフ×2、経験の飴玉×2
:初心冒険者の服・帽子・杖セット、魔法の腐葉土、銀葉樹の苗木
:壊れやすい鉢、魔水連の球根×8、淡い水瓶、大猪の毛皮、枝切り鋏
ステアップ消費アイテムは早速使って、鞄の中身も整理して、と。今回半壊馬車でゲットしたアイテム達は、鞄の中身とは別に割愛させて貰うとして。
新しく得た大きい容量の鞄が、早くも大活躍してくれて嬉しい限り。それでも既に中身はパンパン、収集作業でアイテム拾い過ぎ&遺跡での宝箱発見とかね。
嬉しい悲鳴だ、それだけに中身の整理も大変だったけど。
ステの上昇も順調で、スキルPも貯まる一方だ。また明日にでも何か上げるかなと、ステ欄を眺めていると。何か様子が……おや、片手棍が生えてらっしゃる!
これは意外な成長、いやいや棍棒は割と片手でも扱ってたしね。むしろ遅い成長に思えてしまう、生えてもちっとも嬉しくないけど。
他は特にないかな、うん大丈夫。
装備に関しては、欲しい武器以外が集まるのはもう慣れた……両手棍とか短槍って、ひょっとして素晴らしくマイナーなのかなぁと改めて気付いてしまった次第である。
防具に関しては、新しい良品がたった一晩で増えてしまった。特に盾と靴とマント、靴とマントは予備もあるので非常に嬉しい限り。
盾も今まで使ってた、ヘロいのとは性能が大違い。
もっとも、安全地帯の手作りの手甲も使ってみたい気も。両手武器を使うなら、あっちの方が使い勝手は良い筈である。明日以降で検証かな、護衛の盾は予備でも良いし。
それから、幸運の御守りと護りの腕輪《硬化》の2つだけど。これは正直どうでも良い、空いた装備欄を埋めているだけ。護りの腕輪は魔法装備だけど、その肝心の魔法を発動させる土魔法を俺は覚えていないと言う。
幸運の御守りも、今更幸運値を上げてもねぇ? って感じ。
魅力値なら、また話は別だけど……段々と不安になって来た、俺のアバターの魅力の低さ。今の所NPCとの交流が無いから良いけど、街に出たら困らないだろうか?
ベテラン勢に話を聞いて、そんな不安が胸中に漂う今日この頃である。
そんな感じでドロップ報酬とレベルアップの結果を眺めながら、ちょっとの時間思考に
そう我に返って、大急ぎで遺跡の脱出を計ってみたり。
体力も回復してるし、帰りは罠も作動しなかったしで、万全の態勢で夜の森へと辿り着けた。後は森を一直線に進むだけ、ホクホクしながら夜の森を歩いていると。
森の闇夜にこだまする、再度の狼の遠吠え。
正直、遺跡の出口からは空ばかり気にして緊張のし通し、森に入って一安心だったりして。そこからの道のりも、骸骨やゾンビを避けながらの夜のお散歩。って言うか、今夜は既にお腹いっぱいで、雑魚の経験値なんて欲しくないのが主な理由。
時間も余り無いし……って、遠吠えが段々と近付いて来たなぁ。
逃げられないなら戦うけれど、もう5分程度で安全地帯だ。ダッシュして戻ろうかなどと考えていると、チラホラと藪の間から狼たちの姿が見え始めて。
囲まれてますね、間違いなく……そしてその群れを率いてるのが、一際大きな体躯のボスNM狼と言う。うわぁ、マジですか今夜何匹目になるのっ!?
青灰色の毛並みと金色の瞳、狩る気に満ちたハンターの顔立ち。
――初の夜中のインは、こうしてテンション高く幕を閉じるのだった。
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