ボールペン覚え書き カクヨム出張版

涼格朱銀

ボールペン創世記

 初めに、ゼブラ神はボールペンを製造された。軸は不透明であって、闇が深淵の面にあり、神のインクがリフィルの中を動いていた。


 神は言われた。


「みえる・みえる」


 こうして、透明な軸が製造された。神はそれを見て、良しとされた。神は不透明軸と透明軸を分け、透明軸をクリスタルと呼ばれた。第一の日である。


 神は言われた。


「ラバーあれ」


 そのようになった。不透明軸はラバーで包まれた。神はそれを見て、良しとされた。神はラバー軸をラバー80と呼ばれた。第二の日である。


 神は言われた。


「透明軸にもラバーあれ。透明軸は万年筆の形となれ。事務にイイペンとなれ」


 そのようになった。神はそれを見て、良しとされた。神はそれをジムニーと呼ばれた。スズキ神の創造された鉄の馬と同じ名前で紛らわしかった。第三の日である。


 神は言われた。


「ジムニーのリフィルになめらかインクを満たせ。ラバーはより強く丈夫になれ」


 そのようになった。神はそれを見て、良しとされた。神はそれをジムニーライトと呼ばれた。第四の日である。


 神は言われた。


「もっとなめらかなインクをリフィルに満たせ。ヌルヌルな書き心地のボールペンであれ」


 そのようになった。神はそれを見て、良しとされた。神はそれをジムニースティックと呼ばれた。しかし、ジムニースティックのインクはなめらかすぎて、ペン先からインクが滴り落ち、筆跡は紙を抜けた。神はそれを見て、失敗作かもと思われた。第五の日である。


 神は言われた。


「水性インクをゲル状にせよ。サラサラ書けて、かつ、ボタ落ちダマ地獄にならぬインクであれ。紙を抜けない顔料であれ」


 そのようになった。神はそれを見て、良しとされた。神はそれをサラサと呼ばれた。

 神はサラサにバインダー式のクリップをお与えになった。神はそれをサラサクリップと呼ばれた。


 神は彼らを祝福して言われた。


「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。三菱、パイロット、トンボ、セーラー、ぺんてる、あらゆる筆記具業界をすべて支配せよ」


 神は言われた。


「見よ、全ての地にある余白を持つ紙と罫線を持つ紙を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの働く場となり、糧となる」


 そのようになった。神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。気に入らないものもあったが。第六の日である。


 ボールペンは完成された。第七の日に、ゼブラ神はご自分の仕事を離れ、安息なさった。

 その間に三菱鉛筆はジェットストリームを創り、シグノを創った。七人の天使がラッパを吹く用意をした。

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