第215話 旅の醍醐味

 旅の途中、俺たちは事前にキャンプ地とする予定だった泉へと到着。

 飲み水を確保しつつ、周りも見渡せるこの場所が適任だとグレゴリーさんが選んだ場所だった。


 そこで、マルティナがうちの野菜とライマル商会が持っていた肉を使った料理をササッと仕上げると、周りの商人たちへと配って回った。


 気になるその評価は――


「「「「「うまい!!」」」」」


 思っていた通りの反応が返ってきた。


「や、野菜と肉を炒めただけのはずが、どうしてこんなにうまいんだ?」

「俺たちの持ってきたのは普通の肉……となると、やはり野菜がいいのか?」

「いや、それだけじゃない。味付けも絶妙なんだ」

「うおぉ! 食べる手が止まらないぜぇ!」

 

 商人たちは料理に大興奮。

 作ったマルティナ本人も商人たちに喜んでもらえて嬉しかったようだ。

 もちろん、その料理は俺たちもいただいた。商人たちとは違い、普段から手料理を口にしているため、彼らほどのリアクションは――


「「「「「おいしい!」」」」」


 ……ほとんど同じだったな。

 ま、まあ、それだけマルティナの料理がうまいということだ。

 食事を終えた後は、すぐに眠りへつく。

 ――が、もちろん全員が揃って寝るわけじゃない。

 キアラとシャーロットが結界魔法を張っているものの、不測の事態に備えて商人たち数人が交代しながら辺りを見回っていく。


 俺たちもそれに協力をしようと名乗りを上げたのだが、グレゴリーさんから「君たちは今回の主役なんだからしっかり休んでおけ」と言われ、そのままテントで過ごすことになった。


「それにしても……本当に長い旅になったな」


 寝るまでの間、俺のテントにみんなを集めて今後の件を話し合うことに。

 ……といっても、これまでとやること自体はそれほど変わらないので、ローダン王国がどんな場所であるのか、お土産に何を買おうかなど、他愛もない話で盛り上がっていた。


「砂漠の次は雪と氷かぁ……まだ早いけど、次はどこになると思う?」

「そうですねぇ……」

「少なくとも、国内はもうほとんど見て回ったのではないかのぅ」

「でしたら、今後は国外への遠征も増えていきそうですわね」

 

 話題はダンジョン農場の今後についてに及んでいた。

 まあ、俺としてはこれからもやること自体は変わらないんだよな。今回みたいな例はそんなにあるわけじゃないと思うけど、少なくともクレンツ王国絡みの案件については全力で挑もうと思っている。


「ベイルはどう? 何か、これからに関して希望はある」


 いきなりキアラから話を振られて驚いたが、すぐに自分の素直な気持ちを口にする。


「俺は……今みたいに、みんなと一緒に過ごしながら農場を運営できていけたらいいなって思っているよ」


 嘘偽りのない言葉だ。

 それを受けたみんなは顔を見合わせた後、静かに頷いた。

 結局、この日の夜は農場のこれからというより、俺たち自身のこれからについて話す機会になったのであった。


 これもまた、旅の醍醐味――っていうのかな。

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