いざ、自宅へ……!!


 廃ビルから出た俺達は帰路に着くため歩いていた。

 フィオとエリクの二人は見逃してくれたものの、俺は少し考えて、警察にばれている廃ビルに置いておくのはまずいということで、今日のところは俺の家へ連れて行くことになった。

 廃ビルで明日待ち合わせるため、放課後になる時間には向かう形にすればいいだろう。

 

 「そろそろ分かれ道か……なあ、修」


 帰り道が分岐になりそうなその時、急に霧夜が俺に声をかけてきた。ちなみに八塚は迎えを呼んで先に帰宅している。


 「どうした? 暗くなりそうだから気をつけろよ」

 「ああ、サンキュー。にしても驚いた、魔法なんてゲームの世界だけだと思っていたからな……」

 「ん……ま、俺も驚いたよ。でも俺は勇者シュウじゃなくて神緒修でお前の親友だ」

 「……! もちろんだ! 俺にできることがあったら言ってくれよ? 助けになるぜ」

 「その時は頼むよ」


 俺がそういうと霧夜は片手を上げて駆け出し、夕暮れの中に消えていく。


 「なんか嬉しそうだったねー」

 「まあ、魔法にはロマンが詰まっているからな。……あいつもそうだったけど、気持ち悪いとか思わないのか?」

 「んー、ちょっとびっくりしたけど修ちゃんは修ちゃんだからね! わたしもお手伝いできることがあったら任せてね!」

 「ん。まあ、お前はおっちょこちょいだから言わないけどな」

 「なにそれ! ふんだ!」

 「おいおい、引っ張るな」


 むくれながらも俺の手を取り歩いていく真理愛にフィオが笑いながらついてくる。


 「シュウ兄ちゃん、マリアちゃんには頭が上がらないのね」

 「馬鹿な、立場は俺の方が上だ。中学のころ俺のベッドに――」

 「わあああああ!?」

 「うおおびっくりした!? ……エッチなことでもしたのか兄貴……?」

 「それはない」

 「ぶー。修ちゃんはこのナイスバデーを見てなんとも思わないの?」

 「思わない」


 まあ着やせするタイプだということは知っているけど、扱い的に結愛と同じなので性欲は――

 

 「ごくり……」

 「あ、今、えっちな目でわたしを見てた!!」

 「大丈夫だ」

 「大丈夫の意味が分からないよ兄貴!?」

 「あはは、相変わらずだよね兄ちゃん」


 とまあそんなアホな話をしながら歩く。

 ……霧夜もだけど、真理愛を戦わせたりするわけにはいかないから、なにかあっても言わないだろう。表面上は手伝ってもらう形だけかな。


 「それじゃご飯食べたらスリートに会いに行くからねー」

 「おう、適当に構ってやってくれ」


 真理愛が家に入っていくのを見届けてから俺も家へ入る。しかしこのまま上がるわけにはいかないので、玄関で声をかけた。


 「ただいまー。父ちゃんか母ちゃん、もしくは両方居るかー?」

 

 大声でリビングに向けて声をかけると、足音と共に二人が出て来てくれた。


 「どうしたのよ修、靴が脱げなくなったの?」

 「まだまだだなあ」

 「んなわけあるか!? まあいいや……で、相談なんだけど、今日一日だけこの二人を泊めたいんだけどいいかな? ちょっと訳ありで若杉さんに相談したら明日じゃないと対応が難しいって」

 「あ、こ、こんばんは……」

 「すみません……」


 俺が一歩横にずれると、フィオとエリクが軽く頭を下げながらおずおずと挨拶をする。


 「若杉さんにかい? まだ子供だしホームレスって訳じゃなさそうだね」

 「まあ外国人みたいなもので、行く宛がないんだ。八塚を助けた時に協力してくれたから助けたいなと思って」

 「ふうん、まあ一日くらいなら余裕よ! それじゃ、ついでにご飯も食べましょうか。上がって上がって♪」

 「あ、はい」

 「お、おじゃましまーす……」


 そのまま揃ってリビングまで行くと、相変わらずのダメな妹、すなわち駄妹が夕飯前にアイスを口にくわえながらソファに寝そべっていた。


 「ただーまーっと」

 「おかえりーっと。遅かったね兄ちゃん、真理愛ちゃんとデート?」

 「恋人同士ってわけでもないしデートはないな。霧夜と八塚も一緒にいたし」

 「ふうん、玲さんの登場でうかうかしてられないと思うんだけどなあ」

 「なんの話だ?」

 「んーん、こっちの話ー。で、お二人は?」

 「ああ、こっちは――」

 「修ー、フィオちゃんとエリク君を客室に案内してから手を洗ってきなさいよー」


 ……ん? 今何か違和感が――


 「聞こえてるの?」

 「ああ! 分かってるよ!」


 俺はフィオとエリクを連れて開いている部屋へ案内するのだった。

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