24.優しい待ち合わせ


 今日はとうとうお祭りwith春野先輩である。


 緊張で夜は眠れず、朝方眠りについてしまい、起きたのは待ち合わせ時間の二時間前である。悩みに悩んだ末、決まらなかった洋服。今から考えなくてはならない。


 さて、さやかちゃんには浴衣だワンピースだと言われたけれど、それはちょっと回避して、ただし女の子っぽい可愛らしさも入れて……。


 丈の長いスカートはどうだろう。それだと歩くから邪魔? でも短いのはちょっと。間をとって、膝丈だ。濃い青色から薄い青色にグラデーションになっている物をチョイスし、上は無難に白? でいいでしょう。気温が分からないし、カーディガンでも羽織ってと。


 もう家を出れるぞと意気込んで、これじゃ駄目だと気付く。


 顔、何もしてない。

 

 ちゃんとメイクなんてのは出来ないから、日焼け止めと色の付いた粉を適当に付ける。少しはカバーされたはず。これでよし。


 ここまでの経過時間、一時間とちょっと。急がなきゃ、間に合わない。


 駅まで自転車を全力で漕ぎ、ちょうど来ていた電車に乗り込む。運よく乗り換えをしなくてもいい電車だった。


 と思いきや、中心の駅で数十分止まり、すぐ発車しないとのアナウンス。急いで乗り換えて、これで時間前には着くとほっと一安心した。


「場所は……」


 目的地に着いた私は、待ち合わせ場所を探していた。改札から遠い柱とのことだったが、先輩ちょっと抽象的じゃないかなと思いながら見回していると、大勢の中から柱と同じく真っ直ぐに立っている先輩を見つけた。


 もう来ていたかと、急いで駆け寄った。


「あ、猫宮さん。こんにちは。良かった、来てくれた」


 私に気付いた先輩が先に声をかけてくれた。


「こ、こんにちは。すみません、お待たせしてしまって」

「大丈夫だよ、謝らないで。来てくれただけで嬉しいよ」


 春野先輩は気遣ってこう言ってくれる。


「さあ行こうか」


 ここから、私の本当のデート? が始まる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る