12.世間話

 昼休みに図書室に寄り、本を物色。小説も良いけれど、たまには専門書なんてのもいいかもしれない。そういうのってあるのかな。


 別の列に移動しようとすると、棚の陰から急に出てきた何かとぶつかった。まぁ、人だよね。


「ごめん、大丈……」


 そう上から声がして見ると、その声の主は一条先輩だった。


「あぁ、猫宮だったか。悪いな」

「あ、いえ、こちらこそすみません」


 先輩はポリポリと頭を搔きながら言う。


「あー、なんか探し物か?」

「はい、専門書とかないかなって」

「なるほど、俺には全く分からないジャンルだ」


 そう言って笑った。


「スポーツ専門なら分かるんだけど、そういうんじゃないだろうしなぁ」


 そうだ、と何か閃いたようで。


「噂の眠り王子に聞いてみればいいよ」


 眠り王子って、春野先輩のことかな。二年生にも広まってるんだ。


「って、今日はいないみたいだな。悪い、力になれそうにない」

「気にしないでください」


 一瞬沈黙があって、先輩はこう続けた。


「あの二人、南とさやか部活頑張ってるよ。さやかに関しては初めてのことばかりで慣れるまで時間かかりそうだけど」

「そうなんですね、私も頑張らないと」

「部活に入ったのか?」

「委員会です、図書委員になったんですよ。まだ当番やったことないですけど」


 納得したようにうんうんと頷く先輩。


「そうか、図書か。じゃあ、光に絡まれそうだな。気を付けて」

「なるほど、もう朝風紀委員に絡んでる宇佐見先輩に絡まれているのできっと大丈夫ですよ」

「経験者だった。まぁ悪い奴ではないから大丈夫だ。おっと、もうこんな時間か、俺はもう戻るわ。またな」


 手を振る一条先輩に手を振り、私も図書室をあとにした。


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