はーちゃんとあーちゃん(彩花side)
注)はーちゃん=晴海 あーちゃん=彩花
それは、偶然の重なりだった。
この中学は、中高一貫校。私は頭が良いからと推薦でここに入った。オリエンテーションのときに配られた名簿を見たとき、例えでなく本当に鼻血を出してしまった。
小村晴海。
この子は、私の永遠の天使だったから。
保育園生のとき。晴海ちゃんは私を覚えてないかもだけど、とてもとても仲良し2人組だった私たち。
「あーちゃんあそぼお?」
「いーよ、はーちゃんいこー!」
あのときはあんなに甘々だった晴海ちゃん。たぶん最初に声をかけてくれたのも晴海ちゃん。
いつのまにか、私の中では、友達という存在より大きなものになっていた気がする。
「はーちゃん、けっこんしよお?」
「いいよ、あーちゃん、はなよめさんだよー!」
「わあい!」
そんな若き日の約束もした。
でも、ある日、別れが訪れる。
「ほら、晴海ちゃんに言いな。」
お母さんに急かされ私が口にしたのは、
「はーちゃん、わたし、とおくにいくことになった。」
「……とおく?」
「うん、おひっこし。」
「ひっこし……」
晴海ちゃんは、その意味が分かったのか、わあぁぁぁあんと泣きわめいて飛び付いてきた。私はそれでも困惑することなく、晴海ちゃんの震える頭を優しく撫でたっけ。だって、愛着しか沸かないんだもん。
「……また、会おうね。」
「うん。」
私は、意外に寂しくなかった。また会えるって、信じてたから。
「じゃあね。」
「またね。」
そう残し、別れたのは、5歳のときだった。
そして、父親の転勤によって引っ越したところから帰ってこれたのは、5年後。でも、違う地域の小学校に転入したため、晴海ちゃんには会えなかった。
そして、中高一貫校のここに入り、今に至る。
私は面影の残る晴海ちゃんを入学式のときにすぐに見つけられたが、あちらは全然気づいていなかった。それに、
「あはは、そうだよね……。」
全く面白くなかった。
晴海ちゃんはあんなに素直な子だったのに、今は他の人の気を伺って、眉尻を下げて困った顔で笑って合わせている。
また、私は毎休み時間、晴海ちゃんのクラスに行っていたのに、2年間“あーちゃん”と声をかけてくれることはなかった。
「面白くないっ……!」
重い恋心を持って、隣のクラスに足を運ぶ日々。
そんな中、晴海ちゃんに近づいたのは、私のことが好きだという噂の、佐藤拓真くん。
……その人に近づけば、晴海ちゃんの目に私が入るのかな?
気づけば、拓真くんを私にコクらせるゲームになっていた。
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