【リメイクします】いずれ結婚する幼馴染との同棲生活。
藍坂イツキ
プロローグ
「馴れ合い」
「ねぇ、ご飯にする? お風呂にする? それとも……私?」
「はぁ……ご飯だよっ」
仕事から帰ってきて、家の扉を開ける。
すると出てきたのは、クマさんの刺繍入りエプロンを前に掛けて、疲れた俺に色目をつかう妻だった。足元に視線を向けるとエプロンからはみ出た白い脚が電球の光を反射させて視界を奪っていく。
ただ、そんな美しい脚とは裏腹に表情はどこか幼げでアラサーには全く見えなかった。
若さの秘訣は何だろうかと、パートナーである俺でも感じるくらいだ。
「——わ、た、し、にしないのぉ⁇」
いや、しかし。
数年前にあげたエプロンをこうも長い間、使ってくれるのは俺の古びた涙腺になかなかに響く。
ただ、そんな感動も一瞬で、妻のあまり考えてなさそうな表情に溜息を漏らした。
「断じて。俺はご飯が食べたいんだよ……」
「えぇ~~、私でもいいんだよぉ?」
「いいって……俺も疲れたんだよ」
「うわぁ、そう言って——顔、赤いよ?」
「え、まじ?」
「——っくく」
「え?」
「——っくく、くははははっ‼‼ あはははっ‼‼」
腰まで伸びた銀髪が揺れて、そして浮き出るえくぼが目立っていた。少しだけ桃色に染まった頬に目が向かったところで彼女は大きく笑いだした。
「もぅ……隼人ってば……わかりやすっ‼‼ ぷぷっ——も、おも、おもしろっ‼‼」
「……おい」
玄関先で爆笑する妻を前に、俺は苦笑いを漏らした。
まったく、仕事終わりにこれはひどい。
それに、この高笑い。もう少しだけ抑えることはできないかと、今更にだが思うのだ。
ただ、慣れとは怖い。
最近はこの笑い方も悪くはないとも思ってきた。それに案外可愛いし。
しかし、未だお腹を抱えながら笑う妻を見て、さすがに男の俺の面子が立たん。ここは少し、男と言うのを見せてやろうか。
そして、俺は玄関をしっかりと閉めて、靴を脱ぐ。やや怒り気味な顔をしていたことが功を為したか、「え?」と本気で戸惑っていた。
「な、なにっ——」
頬がさらに赤くなり、あっけらかんと目を見開く。
だが、俺は止まらず、スーツの袖を捲って妻の肩を掴んだ。
「なに?」
「じゃあ——」
っひゃ。
そんな声が聞こえても俺は止まらずに、掴んだ肩を離さずに廊下へ押し続けた。
「っ——!」
気づいたときにはもう遅く、俺は妻に乗っかるような形で地面に転んでいた。しかし、上手く避けれたおかげで、すでに紅潮しきった妻の可愛い顔の横に俺の体を支える両腕が立っている。
「——
スラリと腰辺りまで伸びたサラサラな銀髪。まるで宝石のように光を反射させる碧眼。モデルも顔負けの細い体型に、今にも折れてしまいそうな細くてもろそうな白い腕と脚。
驚きのあまり絶句して口を頬けている姿もこれまた可愛くて、誰にも見せたくない独占欲を発生させる。
まあ、誰にも見せるつもりなんてさらさらないし、まず俺の妻というか奥さんだし、俺に夢中なこの人の事を考えれば大丈夫だろう。
「……んっ‼‼」
「っ——」
ただ、そんなことでは引けを取らないのが俺の妻だ。
ふわりと撫でた唇の感触に、刹那に気を失った俺だった。
そう、これから始まるのは甘くてほろ苦かった俺たちの記憶と始まり。
小学一年生から始まった二人の最終通過点、大学生の未練たらたらで、已むに已まれない恋愛話。
学年一の美少女にフラれて泣きじゃくっていた
甘くてほろ苦い、その一瞬を疲れ切ったあなたに。
この次の章は先に読まないことをお勧めします。
作り直した、「リメイク版第一章(https://kakuyomu.jp/works/16816452219377238914/episodes/16816452219387532685)」から、お読みいただけると幸いです。古いバージョンも読んでもいいよって言っていただける方は是非、お暇なときにでも読んでいただければ嬉しいです!
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