第31話 成長

 タチアナがクロウと名付けた神獣と暮らすようになって一週間が過ぎた。


 その間、セイラは一歩離れた位置からずっと付き従っていた。気になったタチアナが何度か気遣っても「気にするな。私は居ない者と思え」の一点張りであった。


 そしてなぜか常にクロスボウを携行しており、クロウを見る目は常に厳しいものがあった。そう、まるで監視しているかのように...まぁ実際に監視している訳なんだが、事情を知らないタチアナは首を捻るばかりだった。


 タチアナは朝の聖女としてのお務めと、午後の聖女としてのお勉強、聖女としての奉仕活動や各種イベントへ参加する時間以外、常にクロウと一緒に居り、タチアナが側に居られない時は、タチアナ付きのシスターが付き添っていた。もちろん、セイラもずっと監視していた。


 移動する際、最初はタチアナかシスターが抱き抱えて運んでいたが、その内に自分の魔力で空中にプカプカ浮いて付いて来るようになった。


 タチアナとシスターの周りを音もなく飛び回る姿は実に微笑ましく、神殿内で働く人々はすれ違う度に目を細めていた。


 最初の内はやはり近寄り難かったのか、遠巻きに眺めていただけだったが、今ではすっかり受け入れられたようである。


 その内、周りから神獣様ではなく聖獣様と呼ばれるようになったのは、やはり聖女に付き従うのは聖獣であるというイメージの為せる業だろう。


 初代聖女は常に白馬を伴っていたと言われている。そしてそれがいつしか聖獣と呼ばれて崇められるようになったと言う。


 セイラはそんな状況を憎々しげな目で見ていた。そんなある日、マジマジとクロウを見詰めながら、


「なぁ、タチアナ。こいつ大きくなってねぇか?」


「えっ!?」


 確か最初は猫くらいの大きさだったものが、今は大型犬くらいの大きさに成長していた。


「成長期なんですかね~」


「んな訳あるか!」


 セイラの突っ込みが炸裂した。タチアナはポヤンと呑気な事を言ってるが、そんな訳ないだろう。


 たった一週間程でこんなに大きくなるとすれば、半年や一年後にはどれだけ大きくなるのやら、末恐ろしくなる。


「食べる量を減らした方がいいかしら~?」


「クゥッ!?」 


 そうなのだ、毎日アホみたいな量の野菜や果物を食べている。クロウがこの世の終わりみたいな悲しげな顔を浮かべているが、このまま大きくなって神殿に入りきらなくなったら、外で飼うしかなくなるし、食費だってバカにならない。そうならない為にも心を鬼にして食事量を減らそうとタチアナは決意した。


「クゥ~...」






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