詫び石8つ目【不具合補填の地図をBOXに送りました】

「な、なんだってー!?」

「わざとらしいなクソ……ッ!」



 俺の称号が『魔王』……? どうしてそんなことに……?


 そう問えば、強おじは眉間のシワを濃くして「俺にもわからねぇ」と首を振った。



「俺の仕事は文字通り、ただ神に託された称号を与えるだけだ」

「強面の顔なのに神様を信じてるってギャップがいいですね!」

「さすがご主人様! どんな相手でも長所を見つけられるなんて素敵です……っ!!」

「うるせぇ!!」



 強おじは顔を赤くしたまま、俺がぐっと立てた親指を握ってくる。



「どうすれば『勇者』の称号を貰えますか?」

「そうだな……」



 目線を逸らし何か考える素振りをしていた強おじは、俺から手を離すと人差し指を立てて空中に緩やかな円を描いた。


 すると、何も無かったはずの場所に地図のようなものが現れる。

 おそらく、投影魔法の類だろう。



「ここから南へ10m向かった先に、二階建ての建物がある。そこがギルドだ。まずはここに行ってみるといい」

「出た! ギルド! ルロちゃん、ギルドに入れるぞ!」

「さすがご主人様!」

「黙って聞け!! 入れるかどうかは“お前たち”次第だ!! いや、話はそこじゃねぇ!!」



 俺だけ頭を強めに小突かれたので、ルロちゃんと一緒に大人しくその場に正座し、たんこぶを撫でながら強おじの話に耳を傾ける。



「ギルドの依頼をこなせ。魔獣討伐でも、人助けでも何でもいい。ただし、Aランク以上の依頼だ」

「Aランク以上……?」

「えーらんく……?」

「そうだ。『冒険者』の称号ならBランクで事足りるが、『勇者』を目指すならそうはいかねぇ」

「冒険者……」

「ぼーけんしゃ……」



 また俺だけ小突かれてたんこぶが2段になった。



「Aランク以上の依頼をこなし、大勢の役に立てば、神にも『勇者』として認められるかもしれねぇ」

「なるほど……」

「本当はSランクに挑めと言いたいところだが……まあ、それはギルドの先住者が許さないだろうな。万が一にでも新参者にクリアされたとあれば、先輩方の面目丸潰れだ……どうしても挑むというなら、それをどう説き伏せるかはお前次第だ」

「わかりました!!」



 一時はどうすればいいのだろうかと思ったが、これからの目的や成すべき事がはっきりとした今、落ち込んでいる場合じゃない。


 ルロちゃんと手を繋いで勢い良く立ち上がり、強おじに頭を下げる。



「色々教えてくれてありがとうございます! まずはギルドに向かってみます!!」

「おう、頑張れよ。地図はさっき見せた通りだ」

「……ところで……南ってここからどっち向きですか? 右? 左?」

「左右がわかるなんてさすがご主人様!!」

「大丈夫かコイツら……」

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