第67話異世界からの来訪者7
「アークデーモンにレッサーデーモンねぇ」
ひとしきり俺の話を聞いた後に、スティーグは納得したと頷く。
「一応聞いておくが、そいつらに理性はあるのか?」
「いや、どうだろう。判らない。だが、種族同士では争わないようだ。村にいる悪魔同士で戦っていないようだからな」
「コミニュケーションは取れそうか?」
「無理に決まってるでしょ! 相手は悪魔なのよ!!」
アティがそう噛みつくと、スティーグは肩をすくめる。
「異種族間でも対話が出来るならそれで解決することもあるだろう?」
俺は意外に思った。
なんでも力でねじ伏せるタイプの人間かと思ったが、そうではないらしい。
それとも、こいつの世界では悪魔とも仲良くやれているのか?
そもそも悪魔と呼ばれる存在がいるかは分からないが。
俺は質問に答える。
「アティの言う通り、言葉は通じない。人間を見れば、多分問答無用で襲ってくる。悪魔とはそういう存在だ」
「そうか。それじゃあぶっ殺すか」
やっぱり物騒じゃないか。
「それで、今すぐ行動するか?」
スティーグの質問に、俺は顎に手を当てた。
「ここは慎重に行動するべきかと思うんだが、どう思うアトス?」
俺がアトスに尋ねると、アトスも「そうだね」と俺に賛成した。
「なんだ。やっぱり勇者がリーダーなんだな」
スティーグは俺とアトスのやり取りを見て、アトスがリーダーと認識したようだ。
まあ、俺が主導で喋っていたから、俺がリーダーと思っていたんだろう。
「ああ、そうだよ」
アトスが頷くと、スティーグは面白そうに見た。
「勇者だからか?」
「・・・何が言いたい?」
「いや、なんでも」
スティーグはそう言って腕を首の後ろに回し、どうでもよさそうな態度を取る。
含みがあるな。
面白くない。
「慎重にってことだな。具体的には?」
スティーグに尋ねられて、俺は空を見上げた。
「もうすぐ日が沈む。悪魔は夜になると活性化するんだ。早朝に行動を起こしたほうがいいと思う」
「そうか。それじゃあここで野宿なのか?」
悪魔がうろつく村以外には人の密集地は周りにない。
セリシオは大の野宿嫌いだったが、この場合はやむを得ないだろう。
「そのつもりだ」
そう答えると、スティーグは難しい顔をした。
なんだ、こいつも野宿を嫌がる口か?
「問題がないか?」
「何が?」
「食事だ。俺の分の食事はあるのか?」
ああ、そういうことか。
確かに予定外に一人増えたからな。
「あ、それは大丈夫です。多めに持ってきていますから」
クレアがそういうと、スティーグは大いに喜んだ。
「おお、それは何より。さ、食べようぜ!」
今日一番の笑顔だな。
こいつ食べるの好きなのか?
「言っておくがそれでもそんなに量はないぞ?」
「別に大食漢てわけじゃない。こっちの世界の料理がどんなのか知りたいだけだ」
「料理好きなんですか?」
「ああ」
クレアが尋ねると、スティーグはそう答えた。
*********
「・・・なんだこの食材は?」
スティーグは茫然自失といった顔を作り、用意していた食材を前にそう言った。
「何か不満でもありますか?」
「干し肉に固そうなパンをメインにした物が見えるんだが?」
「ええ、旅の保存食ですから」
俺はクレアとスティーグのやり取りを見ていて、ちょっとイラっとした。
「おい。贅沢言うなよ。あんたはいきなり入ってきたんだからな」
「それは分かっているが、お前らそのまま食おうとしているのか?」
「そのつもりですけど」
「アホかーーーー!!」
これまでふざけた態度をとることがほとんだだったスティーグがいきなりキレた。
「てめら、食材を何だと思っていやがる。貸せ、俺が作る!」
「あ、ちょっと」
スティーグは食材と、持ってきた調理器具を勝手に取り出すと、食事の準備を進め始めた。
「お、おい。大丈夫なのか? クレアに任せた方が・・・」
「そのまま食おうとしていただろうが、任せるもなにもあるか!」
「ちょっと大丈夫なんでしょうね! あたし、食べられなくなるのは嫌なんだけど!?」
アティが噛みつくが、スティーグはすべて無視し、調理を始めてしまった。
だ、大丈夫なのかこれ?
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