第45話賢者サイド クレア視点 謁見
クレアサイド
私達は謁見の間で王様と対面しています。
王様はまだ若く活力に満ちていますね。
アティシア王女はもう立派なレディーになっていると思いますのに、そんな風には全然見えません。
勇者様、アトスさんは堂々としていますが、ステラさんの顔は青いです。
いつも飄々としてらっしゃるのでちょっと面白いです。
いえいえ、さっき、からかわれたからではありませんよ。
「面を上げろ勇者アトス。その仲間達よ」
「はい」
王様に言われ、私達はゆっくりと顔を上げます。
あれ?
いつもは親し気な感じの王様ですが、ちょっと今日は様子が違います。
怒ってる?
いえ、もどかしいと言った雰囲気です。
「久しいなアトスよ。約一年ぶりといったところか」
「王様もご壮健のようで」
国王様は抑揚なく頷き、じっと私達を見つめます。
なんでしょうか?
あの方は何か言いたいことがあるように見受けられます。
「最近はどうだ? 魔王を倒す旅は順調か?」
「・・・それは」
アトスさんは言葉を濁します。
私達の近況はとても良いとは言えません。
ですが、問われた以上は答えないわけにはいきませんよね。
「ダンジョン攻略に苦戦をしています」
「ふむ」
ぐるりと私達を眺め、ステラさんに目が留まります。
「そなたは? 以前はいなかったな」
「は、はい! 王様。あ、あたしはステラって言います。えと、武闘家やってます」
ステラさん。
酷くおどおどしています。
ふふ、王様は余程のことがないと怒らない寛大なお人ですので大丈夫ですよ。
「なるほど。お前がレオダスの代わりか」
「「「え!?」」」
「我が友レオダスを追放し加えたのだ。さぞ強いのだろうな?」
国王様が珍しく嫌味を言ってくる。
いえ、今はそのことではなく!
「レオダスにあったのですか!?」
「追放って、それはどういうことですか王様!?」
私とアトスさんが一緒になって捲し立て、国王様は虚を突かれたように目を丸くします。
「・・・何? お前達の総意でレオダスを追放したんじゃないのか?」
訳が分かりません。
ですが、ですが、これだけは確認しなくては。
「レオダスは、レオダスは生きているんですね!?」
「ああ、生きている。この間会ったばかりだ」
私達三人は顔を見合わせました。
生きている。
レオダスが。
「「「生きている!!!!」」」
国王様は目元を抑え、ため息をつきます。
「なんとなく話が見えて来たな。レオダスのことを話せ。俺も知っていることを話そう」
私達はレオダスの事の顛末を話しました。
セリシオさんから伝えられたレオダスの死。
それから挑んだダンジョンでの失敗。
ステラさんの加入。
それでも上手くいかないダンジョン攻略。
気づかされたレオダスの凄さ。
戦闘力だけでなく、優れた観察眼を兼ね揃えたステラさんの追放。
告げられたレオダスの死の疑い。
セリシオさんとアルトスさんを置いて、ここ王都に探しに来てしまったことを。
国王様は失望を露にし、「なんということだ・・・」と呟きました。
「もう一度言うが、レオダスは生きているぞ。お前達から追放されたと失意のままに王都まで来たところをアティが見つけた」
「アティシア王女が」
アティシア王女。
確かレオダスととても仲が良かったような。
な、なんでしょう。
なんだか胸がチクチクします!
「なるほどな。全ては賢者セリシオの独断ということか。ただ追放するのではなく、死んだことにするとはな」
やっぱり。
セリシオさんは虚偽の報告をしていた。
それ程までにレオダスが疎ましかったのでしょうか?
「ふっ、しかしそうか。少なくともお前達二人は、レオダスを大切に思っていたのだな」
国王様は嬉しそうに言いました。
ああ、そうか。
王様は本当にレオダスを大切な友人と思っているのですね。
でも、戦力外となれば追放も仕方のないこと。
そのせめぎ合いで、ぎこちない対応になってしまったのでしょう。
だからこそ、追放した私達を素直に歓迎出来なかった。
「だがそうなると、賢者セリシオ。奴の行動は目に余るな。もし奴にまた会うなら連れてこい」
ここでステラさんが口を開きました。
「それならばそう遠くない内に会うでしょうね。あいつは私らを血眼になって探すでしょうから」
「ふむ。ステラよ」
「は、はい!」
国王様に呼ばれ、ステラさんは飛び上がりました。
「お前がいなければ、我々はずっとボタンの掛け違いを続けていただろう。礼を言う」
「い、いえいえ。大したことはしていませんので」
手をパタパタさせながらステラさんは挙動不審になっています。
ちょっとおかしい。
「あの、国王様。レオダスが何処にいるか、ご存じでしょうか?」
私の問いに国王様は気軽に答えました。
「冒険者になると言っていたからギルドに行っただろうな。アティと一緒に」
「えっ、アティシア王女と一緒に!?」
び、びっくりしました。
なんで王女がレオダスと一緒にいるんでしょうか?
「王様。僕らは」
「ああ、いいぞ。行け行け」
しっしっ、と。
適当に手を振りながら、国王様は私達の退室を許しました。
こ、こんな適当に謁見を終えていいのでしょうか?
ですが、レオダスが気になります。
ア、アティシア王女と二人というのが何故かとっても気になります!
「ああ、アトスよ」
「は、はい」
国王様がアトスさんを引き留めました。
「今度はレオダスを連れて来い。その時は晩餐の用意をしておく」
「は、はい!」
アトス達三人が行ってしまった後、国王はニヤリと笑った。
「ふっ、レオダスの奴。中々モテるじゃないか。流石に権力を振りかざすなんて無粋な真似はできんしな。がんばれよアティ」
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