第16話 護衛騎士と中途参加者
アレクサンドルとユーヴェルフィオ、(勝手に)随行のマリアンナを王都から来た騎士団小隊が迎える。
マリアンナのために編隊を変えねばならず、騎士団小隊長とアレクサンドルが頭を突き合わせるように相談していると、隊の中から、男性が二人出て来る。
「シス!」
10年ほど前は『太陽の』と称されていたアレクサンドルの笑顔よりも温かく爽やかに笑みを浮かべ、エルネストが駆け寄ってきた。
「え? エル
「驚いただろう? 王都はすっかり、王子王女は空っぽだよ。まあ、父上がいれば大丈夫だろうけどね」
王宮で見るよりもカッチリとした正装をしたフレックが、同じくドレスアップしたアナファリテを伴って近寄って来た。
「内政関係は僕の担当だからね、運輸・通信関係なら出番でしょう」
大型船の造船業界。客船でも多少の荷物を運ぶ事もあるし、通信──手紙や小包などの郵便物も預けられる。
そういった日常生活に必要な事柄の整備や改革なども、フレックは担当している。
「この目で最新の造船技術を見てみようかな、とね。僕の私設秘書官でもあり選任護衛騎士の
職務の内だよ、遊びじゃないからね。
ウインクを寄越しながら、デュバルディオの肩を拳ではたくフレック。
「進水式の後、こちらへは私とフレックが同乗してくるのよ。お船に乗るのは初めてよ」
年の差はひとつ年上なだけとは思えない大人びたアナファリテも、初めての客船に緊張と期待と興奮を隠せないでいる。
「フレック。騎士の人数が予定より多いようだが?」
「兄上だけならともかく、マリアンナ王女も居るからね。増員したんだ。って言うか、連れて来るんなら先に言ってくれなきゃ困るよ」
「わたしが連れ出したわけじゃないよ」
「兄上を追って出て来たんだから同じ事だよ」
「不可抗力だよ。わたしは前日に先行して王都を発ってるんだ、追いかけて来てるかなんて、昨日会うまで知らなかったよ」
自分のせいじゃないと言いたいアレクサンドルと、ここぞとばかりに兄を詰めるフレック。
「そうは言っても、マリアンナ王女の、兄上をいたくお気に召した様子から、ある程度の予測はついていたでしょう? 前準備なく放置していくなんて兄上らしくない」
「外交担当はデュバルディオだろう、なんとか宥めて置いてくるかと思って期待したんだけどね?
「おっと、こっちに飛び火した。
フレックに詰られたアレクサンドルがディオに回すが、再びディオから帰ってくる。
「まあ、王女のこともそうだけど。兄上やディオはシスの傍にいて、カルルですら同行してる。なんと言っても非日常の観光地。それじゃ王都でお留守番のエルネストが不利だろう? フェアじゃなくちゃね」
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