第24話 カルルデュワは候補に入るか?


「参考までに訊いておくが、もし、タルカストヴィア伯爵家の方から、婚姻を結びたいと言われたら、システィアーナは、お受けしたいかね?」


 ──カルルデュワ様と、婚姻を結ぶ?


「ですが、あの方は、外交のお役目を降りる訳にはいかないのではありませんか?」

「だから、もし、だよ。それに、私だって王宮で宰相を引き継いでからは、殆どの業務を執事や親族に任せて、裁決しかしていないだろう? シスだって、同じように信頼できる部下を育てれば、今まで通り王女の公務を手伝いながら、領地管理も出来るようになるだろう。カルルデュワも同じだよ」


 大切なのは、システィアーナと後継を産み育てること。領地管理は、執事達や親族に任せて、最終的な裁決と、管理人達を統括するだけでもいいと言う。

 だから、カルルデュワも、システィアーナの夫となるのに、無理に外交官を辞める必要はなく、定期的に邸に戻り、彼女を支えるのが役目になる。


 ──それなら他の、騎士団に所属して王宮に詰めている上位貴族の三男、四男でもいいのだろうか?


「そうだね。ある程度の家格と、貴族男子としての常識や礼儀を備えていて、子供達を導けるようなら、多少は目を瞑ってもいい」


 ただし、婿養子の分は弁えてもらうけどね?


 ロイエルドは兄と言っても通りそうな若々しい整った顔を笑みに変えて、それだけ伝えると、サンルームを立ち去った。


 婿養子の分を弁える、とは、必要以上に領地のことに口を出して損害を出したり我が物顔で自由にしようとしたり、王族や当主でもないのに愛人を囲ったり、といった、世にあふれる醜聞のことを言っているのだろう。


 ──それは当然でしょう


 システィアーナだとて、領地の管理を手伝ってくれたり、より良く改革してくれるのは歓迎だが、自分の持ち物のように好きにされたり、当主でもないのに愛人を作られたりする気はない。


 父ロイエルドが宰相である以上、派閥勢力を鑑みた選定は必要となるが、公爵家や侯爵家などの三男四男も視野に入れてもいいかと、すでに頭にきっちり収めている貴族年鑑を広げていった。


 ロイエルドはカルルデュワも視野に入れてもいいような言い方ではあったが、それでも、なぜか候補の一番手には挙げられなかった。


 あの、洗練されたスマートな身のこなしや、外交で培われた、ものを見る目や知識、そつなく何でもこなせそうな気の回し方。

 侯爵家の女主人の隣に置くに、恥ずかしくない礼儀作法も身につけているし、茶会や夜会に伴っても、話題に困ることはないだろう。


 それでも、女性の扱いにも慣れてそうなところが、どうしても引いてしまうシスティアーナであった。




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