ある弁護士の日記

みお

第1話

 辺りが薄暗くなり、周りの景色が見えにくくなり始めた。黄昏時の空から赤みが消えかかる神秘的な時間だ。そう。逢魔が時だ。

 逢魔が時は、魔物や妖怪などに遭遇する怪しい時刻のこと。

 逢魔が時は、不吉な時間とよく言われている。

 でも、私はこの時間が好きだ。

 行きたくない仕事が終わり、地獄から解放される。あとは家に帰るだけ。家に帰ったら好きなことをすればいい。

 そんな仕事帰りの時間だから好きだ。

 でも、今日は真っ直ぐ家に帰らずにこんなとこにいる。

 この屋上から見える景色は綺麗だ。

 日中はあんなに大きく怖く見えた人間もここに立つと凄く小さく見える。

 手で掴んで潰せそうだ。本当に潰せたらいいのに。

 

 私の職場の人たちは、毎日輝いている。いつもキラキラしていて、眩しい。

 私は、そんなに輝けない。自信もないし、能力もない。

 キラキラしている同僚を見て、なんで私はこんなにダメダメなんだろうって思う。

 そんな人たちに囲まれて働く職場は、私にとって勿体無い場所だ。

 尊敬してるし、そうなりたいとも思う。

 私にはなれないことは分かってる。

 だから、凄く苦しくて、仕事に行くのが嫌になる。


 輝いている人と私を比べてしまって、自己嫌悪に陥る。


 こっから、飛び降りれば一瞬で死ねるな。

 

 そしたら、考えることがなくなって、楽になる。


 もう疲れた。



 



「素晴らしい世界に乾杯」





 目から涙が溢れた。

 

 

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